パワートレーンの話

今回はパワートレーンの中でS6トランス ミッションとクラッチについての話を少しお届けしたい。

S6ミッションS6トランスミッションは大きく分けて2タイプあることはわりと知られているが、これがどう違うかとなる とエンジンルームから見たそのケース外観に関しては結構知られていて、トランスミッションケース上部に角状の突起が2個ある(おそらくS500に見られるオイルバス式エアクリーナのセッティング用)ものが初期型、つまリ39年式のもので それがついてないものが後期型、40年式で、この辺りまでは良く知られているところである。これだけの差ならなんら間題はないが、基本的にはイジワルにも似た差があって、このことをよく理解していなければS6トランスミッション、特にそれまで載せられていなかったそれを交換ミッションとしてマウントさせる場合にとんでもないトラブルにまきこまれる可能性に満ちている。またこれは、S6だけの間題ならず後で記述する「工ス」用5速トランスミッションにもそのままあてはるごとになる し、またパーツに関してS8を含めた「エス」シリーズすべてのモデルにもいえるトラブルの種が存在している。まずイラストをご欄になって頂きたい。上がS6・ 40年式後期型トランスミッションで下が同39年式前期型で、良く御覧になって頂ければご理解いただけるはずで、寸法が微妙に異なっているのである。それぞれの全長つまりベルハウジングからシフトレバー中心まではA=aで同じなのだが、ミッションケースBとbの長さが約18mm(Z)、Bのほうが長くなっていて、これが諸トラブルの原因で、そのことからその全長Abを当然合わせるためにつじつま合わせとしてシフトエクステンションDdの長さ を変え、つまりDよりdの方を約18mm(X)長くすればつじつまが合うわけであ る。リアカバーCとcは同じ長さである。このように2者を並べれば良く分かるのだがそれぞれ別 々に見れば、まずこの知識なしにこの差を確認するのはまず無理といって良い。さらに、もっと問題なのは、これらがバラされた状態の時はひどい。各パーツで組みあげた場合、全長が長い組み合わせ、つまりB+C+dや、逆にb+C+Dの短い組み合わせになり、共にコクピット のシフトレバーホールに合わない事になる。更に、たちが悪い事にこういった事がミ ッション単体の組み立てでは起こらずに「エス」のエ ンジン積み込み作業の最中に発生し、それと分かるのにかなりの確認を経た後に分かる事がそれ。作業中の者にとってこの発見はかなりのショックではある。うまく出来ないのは、やり方がますいのではとばかりに様々なトライアンドエラーをやった挙げ句、その原因がこのよう なパーツの違いだった時には、その落胆は計りしれないものがある。特にエンジンマウントを伴う大振りで、力仕事の意味合いが濃い作業の時はなおさらである。


5速ミッションまた、S6前期型と後期型トランスミッションのドリブンギアはそれぞれまったく違っていてプ□ペラシャフトと共にはっきりと異なり組み間達いは起こりようもないモノなのだが、それが仇になって、つまらない手間がかかることもある。53号つまり例のS600Rのトランスミッションがそれで、前々からおかしいと思いつつ、こんなパーツもあったのかと使っていたのだが先日ナ力ヤマで、クラッチトラブルにあい、ガレージにてバラシた時、これはフライホイール及びクラッチカバーがバラバラで、なるほどフジで特にヘアピンやBコーナーで何度もギアがはいらなかったりした理由が氷解したのだが、それにしてもシフトがまずい部分はそれとしてもシフトアップ時に余りにも回転が落ちすぎるのも前々から気になっていて、それが今回のバラバラになったフライホイールとクラッチカバー取り付け部のものすごい軽量 化、おそらく輪出仕様のフライホイールと思われる、でそれが完全にとんでしまっていた。あまりにも軽量 化を計りすぎて強度とともにフライホイールマスもなくなってしまったのだと決めつけ、フライホイールをノーマルのものに替えついでにミッションもかえてしまおうとばかりに別 の40年式後期型トランスミッションを引っ張り出してきた。S600Rはドリブンギアがホールタイプ用ジョイントヨークのプロペラシャフトなので、それでなければならない。もちろん降ろしたそれまでのミッションもそのタイプだった。ただ例のミッションケースに角状の突起があるタイプだったのでおかしいと思いつつ使っていた。フライホイール、ミッションともにエンジンにトッキングさせシャーシにマウントさせる段になって、どう してもリアマウントが入らないというごとになった。元来この車、前々からかなりプロペラシャフトとミッションのドッキングが固くやりずらかったので初めはかなりの思いこみで挿入にのみ頭と力を使っていたのだが、ミッションリアマウントが合わないことがやっ と分かった次第である 。これはリアカパー内のドリブン、ドライブギアを後期型に替えられたもののようで(実際、それが可能なことなのかを後日チェック予定)、イラストを御覧いたたければよくご理解いただけるず。リア力バー後端が初期型は後期型より約18mmフロントよりにあり、シャシーマウントブラケットがあわないことがお分かり頂けると思う。これはブラケット自体に18mmずらした穴をあけて 解決したが予定が大幅に遅れてしまった。この場合ドリブンギアがホールタイプの ために後期型と思いこんだためのトラブルで少し特殊だが同じ原因であることには違いない。下のイラストは5速トランスミッションなのだが、よく御覧いただければお分かり頂けると思うが、「エス」の5速ミッションは2タイプあって、その基本べースは先程のS6トランスミッションをベースにしていて、先述とまったく同じことがこの「エス」用5速ミッションに当てはまることになる。イラストにあるスペーサとシフトエクステンションが5速ミッションのオリジナルパーツで他のケース類はS6のモノを流用している。したがって先程とまったくおなじ間題が5速ミッションにあることがご理解頂けると思う。これこそバラバラで集めたりすることもあり、その情報もかなり乏しいものなので特にショートシフトエクステンションの2タイプには注意されたし。


もう一つつけ加えると、イラストCのリアカバーについて。このパ一ツ、問題が、あるのは、さっきと逆ですべてにぴったり組めてしまうことにある。ポイントはブリザー(主にS8、オイルポンプのないトランスミッションについている)にあって、これのないミッションオイルポンプ付きのリア力バーをリジッド等のポンプレスのミッションに組むと、まずミッションオイルがやたら入れずらくなり、入れる事が出来たとしても、そのまま走ればレベルゲージが吹っ飛ぶか各部からオーバーフロー、漏れが起こるようになってしまうはず。くれぐれも、このパーツにはご注意のほどを。

<クラッチトラブルの誤解>
長穴になり易いペダルピン
前記のようにクラッチ本体のトラブルもあたりまえに存在するが、その発生頻度においては圧倒的に多いクラッチトラブプル、本体以外の理由でのそれ、いいかえれば、ぺダルからリリーズシリンダにいたる過程でおこるトラブルと言うことになる。これは、しばらく、それを点検をしてないと思われるオーナーは必ず見て頂きたい。必ずと言って言いほどその兆候はあるはず。この油圧回路のトラブルにもかかわらすクラッチ本体のバラシ、つまりエンシン脱着までしでかしてしまった例があるほどで、これは思いこみやすい。ギアがはいらない等がこれに入り、その油圧回路でのトラブルでは、下のフォ ト、クラッチのペダルピンなのだが、ごらんのようにクラッチマスターシリンダープッシュロッドピンホールのピンでクラッチペダルにあたる部分がやせてフォトのようになり、さらにイラストのようにまたそのクラッチペダル本体の先端も図のように長穴になり両方の症状からクラッチリリースアームストローク不足のためにクラッチがきれなくなるトラブルがそれ。これで工ンジン脱着までやったとは何とも言えないが、そこのチェックをされてない方はぜひ御覧になって見て頂きたい。おそらくそういう症状が発見できるはず。S6は特に後で記述する理由の為に必須点検項目といえる。まず、その傾向を発見したら、ペダルピンは当然モリブデングリース等を塗布して交換。ペダ ル本体は交換といきたいところだがわざわざ交換しなくても溶接しホールを開け直せばそれで良い。自身の使用頻度のインターバルにて繰り返せばベスト。ボンネ ットを開け、マスターシリンダーのブーツをめくりマイナスドライバー等でそのガタ をチェックするだけで済む実に簡単なものでぜひ点検して頂きたいと思う。

次はリリースシリンダ。これは基本的にS6はサイドにS8はチェーンドライブの後期から上面にセットされている。これは、おそらく次に記述する内容によって設計変更されたと思っている。前記ピンまわりでの注意でS6は特に、とした意味は、そのリリースシリンダ、上のフォトがそれで、ごらんのように 、余りにもエグゾーストマニフォールドに近すぎることにある。したがって負荷がかかり、なおかつクーリング、ラムエアーの条件が良くないとき、例えばワインディングロードの上りやタイトコナーの多いヒストリックレース等にてS 6をドライブ中にまったくクラッチが切れなくなってしまった軽験をお持ちの方々がいるはず。これはそのリリースシリンダの位置による熱害、リリーズシリンダー内でのエアロックによるもので、これは、かなりあるはず。また先述の5速トランスミッション2タイプとも、このS6と同じサイドタイプのために同じトラブルが発生するおそれがあるはず。それが先に記述したS6は特に注意しなければならない意味でただでさえ熱にさらされているうえに、ぺダルピンやペダルホールのガタが致命的なクラッチレバー作動不良をおこすことになる。

さらにそのリリースシリンダーの下に茶色の遮熟インシュレータがセットするようになっているが、このパーツ、その「エス」の正しいメンテナンス姿勢や、オリジナル度、のバロメータにしていい。なぜなら、メ力的には先述の熱害があり、オリジナル度では見えないボンネットのほんの隅にあるもので知っていなければつかないモノ。無神経にリリースシリンダの取りはずしをすればほとんどの場合「エス」の下に脱落してしまうもの。意識しなけれぱ、つけないまま、セットしてしまってもそのトラブルは先述のようにある条件下にて発生するものだから気がつかない。「エス」のメンテナンス正統派を示すインディケータとも言える小さなパーツではある。

またその油圧回路に置けるエア抜きの問題もある。 これもサイドタイプに多発し、我々はビール現象と呼んでいるが、まるまる1リットル、ブレーキ液を使っても通常の方法ではエアが抜けない。で、とりあえずは使えるのだが極限では、切れない要因の1つになる。これにはエア抜き時、ペダルを素早く踏み、できるだけゆっくり離す方法や、ある位置でレバー固定化をして抜く方法もある。このようにS6クラッチまわりは特に注意されたし。それでは、また、スズカにて。

(1993/09)


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