“S”を“S”らしくさせる、サス・メンテナンス

  オリジナルパーツ中、メカ性能を誇るパーツであり、”S”のサスをより”S”らしくさせるモノで”S”のサスセッティングには、欠かせないパーツと言える。アッパーアームブラケットに、トーションバーハイトアジャスターの組み合わせは、”S”のフロントサスをレーシングマシン並に、自在に、微妙にセッティング可能。またフロントサスを好みのセッティングにさせるだけでなく、ダメージをうけたシャシーに対しても、ワイドなセッティング代によりノーマルに比較して、かなりの幅で対応可能となる。
◎アッパーアームブラケット そもそもこのパーツは、当初S600のために制作したもので、賢明な”S”フリークの方々は、御存じだと思われるが、チェーンドライブの”S”はS600を含めてノーマルの基本ポジションが、かなりのテール下がりとなっている。前後のタイア重量 分布を考えたとき、水平にすることを誰でも考えるはず。
  御存じのとうり”S”はかなり野蛮な方法ではあるが、一応フロントサスについては、車高調整装正が備わっている。トーションパースプリングのなせる技なのだが、そいつを使って水平にはできるが、そうすれば、なんとフロントサスストロークが0になってしまうのだ。つまリダンバーが底をつきリジッドサスと化して、走行不可となる。このことは、”S”のフロントサス、ダンバーをほとんど縮めた状態で通 常使用していることに起因する。
  じゃ、RSCモデルは、どうなってるのかと、ガレージに眠る愛しのRSCオリジナル車のチェックと相成ったわけなのだが、やはリアッパアームブラケットはスペシャルパーツがセットされていた。それは、ブラケット上部、つまリダンバー上部取り付け部を上に伸ばしてあった。これを調べるうち、しだいに欠点もいろいろあることが分かってきた。
  まず一番のポイントであるストロ一クももっと欲しいし、このRSCブラケットでは、Mtypeには使用不可なのだ。Mtypeは、そのブラケットに左右があり、さらにはブラケットパックプレート自体が薄く設定されていてキャンバー効果 が期待できないうえに、アッバーアームシャフトが細いことで×。
このことから新たにベストなブラケットを求めて作りあげたのがオリジナル・アッバーアームブラケット。左のフォト(左がオリジナル、右が純正ドラムブレーキ用)をご覧いただければ、お分かり頂けるはず。タンバー上部取り付け位 置を可能な限界までアップさせ、アッバーアームシャフトホールをやはり限界まで奥へと追い込んである。
  このことから下のイラストで、サス・アライメントのキャンパー・キャスターの調整ストロークとダンパーストロ−クの飛躍的増大の実現とセッティンクのお話を少しだけさせて頂こうと思う。
 
  まず矢印bはキャスターコントロールで、苦労した部分なのだが、その成果は、このブラケットがMtypeにも使用可となっただけでなく、他のtypeにも付属のカラー(3の替わりにステンレスワシャー等のモノでその左右の枚数コントロールによリキャスター調整が可能となった。
  ちなみにこのMtypeとドラムブレーキtypeの両用にできたシカケを説明させて頂くと、Mtypeのアッバーアームはブラケットに対して7mm後方にオフセットされているが、ドラムブレーキtypeでは、ブラケットのセンターにセットされている。したがって、これには左右がない。そこで(3のカラーを7mm厚にして、ブラケット本体の両側も7mm削って、Mtypeには後方に2個重ねてセット、ドラムプレーキtypeには左右に1個ずつセットさせることで両用に対応している。 またアッバーアームシャフト軸径の相違に対しては、2のブッシュで対応している。
  次に(aの矢印、キャンバーコントロールは、アッバーアームシャフトホールを極限までボディ別 によせたことによってドラムブレーキtypeでは、驚くほどのの調製代を獲得、またMtvpeではブラケットバックプレートが薄いため従来では、ネガティブキャンパーの実現が困難だったものが、十分な調整代を取れるようになった。
  こうして制作されたブラケットを使うことによって”S”のフロントホイ−ルアライメント調整の世界を我が手にする、すばらしいGARAGEの中ヘー歩、踏み入れることになり、ダブルウイッシュボーン、トーションバースプリングにラック&ピニオンによる”S”のハイポテンシャルフロントサスをリアルに味わえるはず。
◎無段階ハイトアジャスター ”S”のフロントサスは、前記のように、野蛮ではあるがハイトアジャスティンク機能(ハイトアジャストボルト+卜一ションバーセレーションチェンジ)が備わっているのだが、これには問題が3つある。
  まず、”S”の車高調整の方法として御存じのように偏心してロワーアームにセットされているハイトアジャストボルト(S600初期塾は7角/S600後期&S800は4角)を回転させ、トーションバーにセレーションで位 置ぎめされたアジャストアームを上げ下げすることによって、ハイトコントロールさせている。問題は、このアジャストボルト(右の断面 イラスト参照)の回転によるだけでは、ストローク値が少なすぎて左右揃わないこと。通 常”S”の場合、左右ともにアジャストボルトが同ポジションにあることが少ないので左右どちらかが、最低あるいは最高ポジションとなりセレーションチェンジによる方法しかなくなることにある。
  問題点2は、前記の内容と関係があるのだが、トーションバーセレーションチェンジに時間がかかりすぎることにある。マニュアルどうりにすれば、(フロントサスの全バラシに近い)丸一日かかってもでさない場合がある。ただし、私達の方法(すこぶる速くて、簡単。GARAGE本編で記載予定。ご期待されたし。)でやれば1〜2時間で可能だが、それでもやはりかかりすぎ。
  問題点3は、一番のポイントなのだが、ノーマルのアジャストボルトでは、左右のサスをピクリと揃えることは、至難の技といえる。前記で野蛮な調整方法と記述させて頂いたのはこのことを意味する。つまりノーマルでは微調整が不可能のシステムだからである。クルマ特にレース仕様の場合サスセッティングの基本である左右輪の重布均等化を図る上でノ一マルは不可能に近い。ドライパーが乗車した状態で左右を揃えることなどは更に困難さを増すことになる。
  この3つの問題をクリアーさせたいために、この無殺階ハイトアジャスターは誕生した。まず、その解説だが、下のイラストと左の図を参照して頂きたい。
 
  本体はクロームモリフデン綱削りだしにクロームメッキを施したモノで1はステンレスボルト、2はロックナット。この1のボルトを上下させることでアジャストアームの位 置ぎめを図る構造になっている。ノーマルが偏心させた7角/4角の差で調整することに対して、このアジャスターは、ボルトの上下でそれをすませている。
  したがって、卜一ションバー・セレーションにセットされたアジャストアームを上下させるストロークは実にノーマルアジャストボルト一回転どころか、前記の面 倒なト一ションバーセレーションチェンジ(2〜3歯分)させたものに匹徹し、前記の問題点1/2をクリアーさせることになる。つまり初めに2歯程度ノーマルポジションより低めにアジャストアームをセットしておけば、後は、そのワイドな調整ストロークから、ただボルトの上下のみで、レーシングスタンスからノーマルハイトまでが、簡単に調整可能になるのである。
  さらに問題点3は、ボルトのねじ込みによる無段階調整によって、ドライバーが乗車した状態で”S”を水平にセットアップ可能の夢の調整を実現させて、問題点をクリアー。
  また下の図でお分かり頂けるはずだが、左の無段階アジヤスターの方が純正アジャストボルト(4角)の最低位 置よりも、ボルトなしの状態で4mm(A面)低く制作してある。このことは、純正アジャストボルトが、4角の最低位 置にセットされている場合でも面倒なアジャストアームのセレーション歯を変更させることなく、さらに低くセットできることを意味している。純正アジャストボルトの4角は、1角あたリ1.5mmの差をつけてあるのだが、その最低位 置よリ4mmさらに低いことは、ノーマル3角弱分、低く無断階調整できることになる。
”S”のメカフリークを自認される方なら、その車高調整に苦労された経験が、おありのはず。このオリジナルパーツが、あの楽しいが、苦労の多いガレージライフを実りの多い、豊かですばらしいモノにするためのワンアイテムになれば幸いである。この2つのパーツは、すばらしいメカいじりを提供してくれるだけでなく、正しくセットアップす”S”本来のもつサス・ポテンシャルを引き出し、クルマを操る喜びを手に収められるモノでもある。
  古いクルマで何を、とおっしゃる方もおられるかもしれない、しかし、”S”は、違うのである。”S”を手に入れて間もない方は、初めは誰でもそうなのだが、古い=性能レベルが低い、の発想で、未整備やデタラメなメンテナンスを容認してしまう傾向がある。たしかに多くのヒストリックカーについて言わせていただければ、古い=性能レベルが低い、ことには、なると思う。
  けれどもこれはあたり前のことで、まして20年以上もまえのクルマであればなおさらだと思う。メカが進歩するは、当然であり、普通 はそう考えるのが自燃である。
  ところが、このあたりまえの理論が”S”に通用しないところに”S”の最大の他力が存在するのだ。”S”は、当時の量 産車の次元をはるかに超越したテクノロジーを、クルマ好さの燃えるロマンを、身につけて誕生した事実。これが20年以上たっても一向に古くならないアドバンテージを今も持ち続けられる理由に他ならない。
 

それは、マルチシリンダー・バイク(それは、”S”のあとに市販量産車として世にでたことをつけ加えておく。)のフィール、目の覚めるようなレスボンスやEXノートを持つパワーユニットであり、クイックレスボンスを生むサスを含めたボディコンストラクションである。さらには、ロマンに満ちた、そのメイキンク・コンセブションがその最大の証である。私たちは想う、そのレーシィなレスボンスゆえに、時代がマイルドヘと流れるかぎり、このアドバンテージ、胸のときめきを携えたドライハビリティは永遠の生命を保持するはず。”S”は、古くならないのだ。”S”が20年以上もたっているにもかかわらず、古い=低性能の図式が成立しないまれな例なのだ。それは、S600よリS800の方か、市場価格が高いことでお分かり頂けると思う。

  だからこそ、本題に話を戻せば、”S”のサスは宝物であり、正しいセッティングなしで乗ること程ばかげたことはない。「古いからこんなもの」の発想は、吹き飛ばしてサスセッティングに手を染めてみよう。
  ”S”のメカに入り込むことこそ、真の”S”フリークヘの第一歩となるはず。初めは誰でもそうなのだ。まず初めに、セッティングされた”S”に乗ってみることだ。すばらしいクイックレスボンスの世界を味わうことになる。とりあえず知ればいい、知ってしまえばしめたもの、あなたの、君の”S”はきっとそうなるモノなのだから。楽しい楽しいガレージワークのあとには、現代にはありえないクイックレスボンスの世界が待っている。それが”S”のクラシックでもヒストリックでも、ましてヴィンテージでもない、クルマとしてピュアな魅力にあふれた世界なのだ。
  ちなみに下のイラストは、私たちの工クスベリメンタル・モデル、つまり”S”のサス、それも評判の悪いチェーンドライブについてのサス再考察のためのマシン、現役のジムカーナDクラス・チャレンジマシンなのだ。しかもそれは、非力なS600である。ジムカーナに出場することで”S”のサスを、そのグレードをタイムで推し量 ってみようというもの。おまけに美しいマシンに仕上げることも目的になっていることもあってFRPカウル制作等のガレージワークも楽しんでしまおうと企んでいる。詳細は本編で
◎リジッド用HDリアスプリング ”S”のリジッドアクスルtype のリアスプリングはソフト過ぎるため、ちょっとしたコーナリングでも、すぐにパンプラバーに乗ってしまう。このことは、急にオーバーステアに急変することを意味し、せっかくのフロントサスをスポイルさせる もの。そこでこのリアスプリングを50%ハードにしたものが右のフォト。パンプラバーオンを穏やかにする動きを持つ
 

(1990/10)

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