新そばの季節                      03年9月記

 02年9月16日の朝刊に、奈良県桜井市笠村にソバ畑があってソバの花が満開だというこの地域では珍しい記事があってクルマを走らせた。一面に咲くソバの花を見るのは初めてで、夕立に追われながらデジカメで何枚かの写真を撮ることができた。

 翌17・18日はまったくの偶然で、以前から予約していた岐阜・高山から新穂高温泉・上高地のバスツアーにでかけた。
かなり走って目的地にも近づいた山間部の何ヶ所で花の咲くソバ畑を通りぬけた。一日の違いで前日に見たソバ畑の花の盛りとは違って、すでに花の時期も終盤で畑全体が色あせた感じであり、気候や地形による違いなのかソバの品種によるものかは分からないが、奈良と岐阜というわずかな地域差であっても収穫時期にかなりの違いがでることを実感した。

 オプションの昼食にそばも出てそれなりに堪能し、その後、高山に到着して市中散策となった。
何軒かのそば屋の近くを通ったが、どの店にも申し合わせたように「新そば」の貼り札があって、新そばの出回りの早さに驚いたのである。
もっとも収穫の早い北海道の場合には9月の新そばも珍しくないのだが、大方の地域ではまだ花便りであったり遅いところは花も咲いていない時期なのに高山では新そばが出回っている。

 そば打ちを始めてから知った知識の受け売りだが、ソバの収穫には夏と秋があり、夏のものは「新そば」とは呼ばれず、敢えて「夏そば」と言われて秋物と区別され、味も風味もいいとされるのは秋の蕎麦を称してのみ「秋新」とか「新そば」ということになっている。
だから「新そば」の出回りは、早い北海道で9月に入ってからで、品種による違いもあるが一般的には、順次南へと下がっていくことになる。
従って、本州以西で、土地の新そばということになるとやはり10月以降でなければ新そばの季節には入らないと思っていたものの、 団体行動であったのとお昼にそばを食べたばかりで、残念ながら高山の新そばを味わうことはなかったが、ひとあしはやく収穫できる早生の品種なのだろうかなどいささか気にもなったが、よくよく考えると、北海道産のそばが全国に出回って、日本全国新そばの貼り札に替わっていたのかも知れないのである。
そばの栽培や収穫とは無縁の東京や大阪であれば北海道産の新そばが入ると「新そば」入荷とするのは致し方ないとして、多少なりともそばが栽培される地域にあっては、周辺の土地で穫れたそば粉(地粉)の出回りによって新そばの貼り札の季節とばかり思っていた。

 03年9月、今年も奈良県桜井市笠村からソバの花便りが聞かれる季節に入った。
北海道では7月中旬から始まった花便りも関西以西では9月からで、九州の宮崎、鹿児島は10月中が花の旬である。
従って一足早く北の国ではすでに新そばの季節に入った。北海道の幌加内からは9月4日〜7日の日程でそばフェスタが開かれて新そばが登場したという便りが届き、大阪でも早手回ししておいたという新そばの第一陣が音威子府産でそば製粉会社に入荷した。
まもなくそばのうまい季節到来だが今年はソバの収穫が悪いとの風評が盛んなのが気がかりである。

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