蕎麦との出会い 和歌山では、乾麺だったか茹麺だったか母が作る年越しそば。甘辛く煮た油揚げが乗っていて除夜の鐘の前に家族が揃って食べる。これがいつもの大晦日風景であった。
社会人になってまもなく、釧路市の春採湖畔にある竹老園東屋総本店で食べた蕎麦寿司。たしか築山をあがったところの座敷で、いくつかの蕎麦が運ばれてくるなかで漆塗りの器の蓋をとると、ツンッとくる甘酸っぱく酢が利いて緑がかった蕎麦と艶のある海苔のさわやかな香り。この出会いが鮮明で長く印象に残った。
その後、蕎麦についての記憶が途絶えた時期はあるが、ながく東京に住んで、出張や転勤も経験したおかげで北海道・東北・甲信越・関東、それと関西、さらに九州など、それぞれ各地の蕎麦に巡り会えた。 |