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星座と蕎麦の蒔きどき

 牡牛座にあるプレアデス星団を日本では「統ばる(すばる):(星が集まる)」から昴(すばる・すまる)と呼んで親しんできた。
「すばる」は、西日本とりわけ近畿地方で多く使われてきた名前で、すばり、すまる、すわり、つんばりなど多くの方言をもっている。 また、六つの星が連なったように見えることから、静岡から東北までの東日本では六連星(むつらぼし)」という呼び方が多く使われ 、これも地域によっては六連(むづら)、六星(むつぼし)・六連珠(むつれんじゅ)、六神様(むつがみさま)など少しずつ異なった呼び方をもっている。
 もう一つ、三ツ星」と呼ばれるのもあって、これは鼓のような形をしたオリオン座の中央部分のベルト付近に規則正しく並んでいる三ツ星のことである。

 古来から星は、規則正しく季節や時刻を教えてくれることからも、農業に携わる人達にとっては貴重な存在であった。
ことにプレアデス星団はその高さで蕎麦蒔きや麦蒔きの時期を知るための重要な目印とされてきた。
「すばる
まんどき 粉八合」は、そばまきの時期を表したもので、「すばる」が南中したときが「まんどき」で、夜明け方に南中したときにそばを蒔くともっともよく実り、一升の実から八合の粉がとれるという俚諺である。
 *南中(なんちゅう):すばるなど天体が真南にくること。
なかには、「すまる、まんろく粉八合、頭巾落しの粉一升」ということわざもあって、まんろくが西へ過ぎ、頭巾がすべり落ちるほどの高さに達したときに蕎麦を蒔くと、一升の実から一升の粉が取れるという。
実際に、山梨や長野でも、すばるのことを一升星ともいうそうで、一説には星が一升舛にあふれるほど群がっていることからの名前ともいわれている。

「三つ星まっ昼粉八合」はオリオン座の三ツ星で、すばると同様に、蕎麦まきの時期を言い表したもので、静岡県富士郡では夜明け前に三つ星が南中するころに蕎麦の種をまくと、一升の実から八合の粉が取れるとのことわざである。

【蕎麦蒔き】
「すばるまんどき 粉八合」   (長野県)(静岡県)(奈良県)(山口県)
「スマル真天井に粉八合」   (島根県隠岐)(長崎県壱岐)
「すばる上天夜八合」   (長崎県壱岐)
「すまるの天上粉八合」   (山口県)
「すわり満時粉八合」   (奈良県)
「六連空なか 粉八合」   (静岡県)
「つんばり九つ こう八合」   (福井県)
「すまるまんろく粉八合 頭巾落しの粉一升」   (岡山県)
「すばるまんどき 粉一升」   (長野県)(山梨県)
「すまる午時にそば植えて 三握り三把でそば一升」   (岡山県)
「すばるまんどき蕎麦のとき」
「すばる満月蕎麦八合」
「三つ星まっ昼粉八合」   (静岡県)
「三ちょう星が空の真上に来るころ蕎麦をまくと豊作」   (福島県)

【麦蒔き】
「すばるの山入り麦蒔きの句」   (静岡県)(福島県
「すばるの山入り麦蒔きじまい」   (神奈川県)

【稲刈り】
「シンマリさんが宵の口にでるようになったらぼっぼつ稲刈りをする」   (山口県)
「すばるが二丈ぐらいの高さにたっした時、稲刈りをする」   (静岡県)

【里芋の植え付け】
「すまる九つ八つがしら」   (兵庫県)

参考書
 「星の方言集 日本の星」(中央公論社)
 「日本星名辞典」(東京堂)  野尻抱影
 「続故事ことわざ辞典」(東京堂)鈴木棠三
 「蕎麦の辞典」 (柴田書店) 新島繁


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