S L 讃 歌( Part 2 )


蒸気機関車という言葉は、なんという無骨な響きなんだろう。

SLというと、また逆にじつにスマートに響く言葉だ。

かつて18世紀に英国で産業革命が起こり、ジェームス ワットによって蒸気機関が発明された

産業革命の勃発によって、産業の機械工業化は急速に発達した。それによって人々は大きな恩恵を

受けてきた。

暫くして蒸気機関を応用した蒸気機関車がスティーブンソンによって発明されたと, 高校で教わってきた。

それからは産業の近代化、交通の近代化が著しく発展し人々は大きな恩恵を受けてきた。

乗り物はどんなものでも人々に夢を与えてくれる。その中でも蒸気機関車、あなたは動力を持った

乗り物のなかではフルトンの汽船についで歴史も古く、私たちにとって一番身近な存在であった。

人々の夢と希望を乗せて、あなたはずっと働いてきた。あなたの働く様は人間と同じだ。

急坂にさしかかると真っ黒い煙と蒸気を吐きだし、苦しそうに喘ぎ喘ぎ息せき切って駆け上ってくる。

下り坂では実に軽やかな足取りで、鼻歌など歌いながらスピードを出して走り去っていく。

その様は人間そのものであった。

現役時代のあなたは本当によく働いてきた。老躯に鞭打って一生懸命に頑張ってきた。

夜耳を澄ますと、遠くの駅で貨車の入替作業をしている吐息が伝わってくる。 ”ポッ” という

短い汽笛を鳴らし、コマネズミのように小ぜわしく走り回っている。

暫くすると、貨車の編成も終わったのかあなたは大きな汽笛を一発響かせ豪快に発車していった。

あなたは何処の町へ向かったのだろう。遠くの町、見知らぬ町、夢多き町、あなたの発する

ドラフトと汽笛は私たちに多くの夢を与えてくれた。

しかし、そんなあなたが現役を退いて久しい。その時以来新しく生まれてきたあなたの

仲間はいない。現在日本の各地で活躍しているあなたの仲間もすべてカムバックしてきたものたちだ。

今のあなたの姿は、かつての現役時代のあなたを知っている人にも知らない人にも、懐かしさ

と夢を与えてくれている。

私はそんなあなたが大好きだ。なぜなら公園の片隅で寂しく眠っている姿より、息せき切って

働いてるその姿こそあなたの働く本当の姿なのだから。

                                    S.MAEDA


 S47/11月小海線にて
 夕方の桑畑を行くC56



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