自分のことは自分で決めたい
〜事前指示書のすすめ〜
延命治療の中止について
スパゲッティ症候群という言葉を聞いたことがありますか。
重い病気で入院すると、治療のために体の中に管を何本も入れられます。「この管は点滴のため、これは検査のため、栄養のため、人工呼吸のため、尿をとるため、手術の傷を治すため・・・」といった具合です。これがスパゲッティのからみあう様子に似ていることから、スパゲッティ症候群と名付けられました。
元気になって退院できる見込みがあるのなら、管につながれて集中治療を受ける生活を数日間我慢する気にもなるでしょう。しかし、回復することなくこの生活が一生続くとしたらどうでしょう。治療を受ける本人だけではなく、介護する家族までもがかかわる問題です。延命治療を中止する権利をもつのは、本人であるあなたか、あるいはあなたの家族だけです。
もしあなたが病気により意識不明になって、家族があなたの意思を確かめることができなかったらどうしますか。逆に後遺症を恐れるあまり、必要な治療を受けられない場合もあり得ます。たとえば、あなたが脳出血になったとします。「手術をすれば、麻痺もなく元気に退院できる可能性があります。しかし、結果が悪ければ後遺症のため寝たきりになり栄養剤を管で入れてもらう生活をする可能性があります。
手術を受けなければ確実に死亡します。いったん延命治療をはじめたら止めることはできません」と担当医師に説明されたとします。あなたの家族は後遺症をおそれて、「手術をしない」という選択をするかも知れません。
これは、いわばブレーキの効きにくい自動車のようなものです。止まれないとなれば速く走れません。ここでブレーキの役目を果たすのが事前指示書です。
事前指示書の書き方
私たちは、衣類や食物・車を選ぶ時には自分の好みや必要性に応じて選びます。まして、自分の命に関わる病気の時こそ他人まかせではなく自分自身の人生観や価値観に基づく納得できる選択をしたいものです。「自分のことは自分で責任をとる心構え」が基本となります。
個人的要望の記入
あなたが自分の言葉で、「私はこのような状態になったら回復不可能と考えます」ということを記入します。つまり、「あるところまで来たら、治療にブレーキをかけてください」ということです。考え方は一人ひとり考え方が違うはずです。
ある人は「たとえ体が動いても痴呆(記憶・認識があやうくなる状態)になったら回復不可能と考える。栄養チューブを使ってまで生きたくない」と書くかも知れません。別な人は「意識不明になって動けなくなっても人工呼吸器を使って生かしてほしい」と書くかもしれません。これは、一人ひとりの価値観・人生観の違いからくるものです。
終末期の医療の選択
次に、「回復不可能」になった場合に、命にかかわる病気についてどのような治療をしてほしいかを4つの中から選択します。
@ 緩和ケア(病院に入院しないで、自宅または施設で過ごす)
A 限定治療(手術などをしない範囲で入院治療すると考えてください)
B 外科治療(心臓病や、癌の手術などを含みます)
C 集中治療(急性期病院の集中治療室ICUに入院すると考えてください)
さらに、栄養補給方法や心停止時の処置についても選択します。
かかりつけ医や家族と話し合いながら書きます
自分ひとりで書いてどこかにしまいこんでおいても、肝心なときに役に立ちません。また、思い違いをしたまま書いてしまう可能性もあります。かかりつけ医や家族と話し合っての記入をおすすめします。コピーを、かかりつけ医の診療録(カルテ)に残しておいてもらえば、不幸にして病気になったときに、あなたの意思が生かされます。
なお、事前指示書は1年毎にあるいは病気になった時・健康状態に変化があった時など、いつでも見直しや変更が可能です。
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