私の母 
                            木村敏子

 皆さんの投稿を読ませて戴いているうちに、だんだん心が温かくなってくるのを感じました。

 私は日々さまざまの人たちと出会い、いろいろなことを感じながら生きているのに、何時の間にか狭い視野でしか、ものごとが見れなくなっていたのに気がつきました。認知症の母を迎えて、私は相変わらず常識的な計りをもって、母を責めたり、イライラしたりの繰り返しでた。

 母は85歳で遠方の地からやって来たにもかかわらず、目覚しい変化をみせてくれました。
 接待上手な母は誰にでも好かれ、もてはやされることで、不安感も薄れ、かつての自信のなさから開放されて、まず顔の表情が変ってきました。おしゃれになり、みんなと歌もうたうのです。私は母の歌声を聞いた記憶はあまりなかったので、これにはびっくり。もっとびっくりは、デイサービスやショートステイなどで利用者にモーションをかけられても「あんな年よりはいやだわ」とお目当ては若い男性職員さんばかり。手を引かれて大事にされるのがこの上なく気分がよいらしく、帰宅後は楽しげに話してくれるのです。きっと心は乙女になっているのでしょう。
 毎朝自分の親を探すので私は意地悪く「あの世から、早くおいでって呼んでるよ!」と言ってみたら、一呼吸して「この世も別に悪くないからもう少し居とくわ」 
こんな切り替えしはしょっちゅうのこと。40年も離れて暮らしていた母との新しい出会いを喜怒哀楽をもって今しばらくつづけていけそうです。

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