バイオハザード6の二次小説を書いてます。
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四六時中考えてる
「そういえばお前はいつ俺をそういう風に…その、」
クリスが目を逸らして言いにくそうに口ごもった。ピアーズはその様子で言いたいことを悟った。
「いつから"好き"だったか、ってことですか?」
まぁ、そうだ、と更に小さな声で呻くように言ってから完全に顔を向こうに向けてしまった。
「何でそんなこと聞くんです?」
いつもとは逆に、きっと赤くなっているクリスをからかうように身を乗り出した。
「…いや、言いたくないならいい」
顔を見ようと前へ回ろうとしたピアーズの顔をクリスは手で避けた。見るな、ということだろう。だが、いつもは自分の方が慌ててるし真っ赤にさせられているから、この稀な機会を逃すはずもない。
「言いたくなくはないですよ。別に隠すほどのもんじゃないし」
言いながら椅子から立ち上がってクリスが身を捩って向こうを向いている側に回る。回って顔を覗き込んで――
「何だ?」
「…なんだはこっちのセリフですよ。全然普通じゃないですか」
覗き込んで見返された顔には狼狽の色は見られず、いたずらっ子のような笑顔があっただけだ。
「アンタはホントに赤くなったりしないよな」
ピアーズは憮然として自分の椅子に戻った。
「お前が顔に出過ぎなんだ。ちょっとは訓練しろ」
「言っときますけど!俺が顔に出るのはアンタにだけだから!他では完璧なポーカーフェイスですから!」
言ってから気づいた。何かまた俺は恥ずかしいことを――
気づいてしまえば顔に血が昇るのを止められない。
「ふぅん?俺にだけ?いつから?」
顔を赤くしたりすればクリスは楽しげだ。からかうように追い打ちをかけてくる。
「やっぱり言いません!」
「言えよ」
さっきと形勢が逆転したかのように今度はピアーズが顔を背けて、クリスがこちらに身を乗り出している。
「絶対言わない!」
そう断言するとクリスは楽しげに笑った。
「まぁ、知ってるけどな」
言われて目を剥いた。思わずクリスの顔を見て気づく――ものすごく楽しげな顔を見て。
「し、知るわけない、でしょう!俺のポーカーフェイスは完璧だ!」
半ばやけくそで噛みつくように顔を近づけて言った。
「…四六時中、考えてたろ?」
不意に笑みを引っ込めてクリスが真面目な顔になった。
鼻先が触れ合うまであと5センチ、という距離でお互いを見つめる。
「そんなに考えてません」
「嘘つけ、部隊にいた頃から俺をじっと見てたろ」
「見てませんよ!だって、俺が自覚したのは――」
言いかけて止まる。近かった顔が遠のいてクリスが背もたれに背中を預けた。
「…例の事件の後、か」
ピアーズが右腕を失ったあのバイオテロ。その後だ。ハオスという化け物から命を賭けてクリスを救った、その時に気づいた。

――絶対にクリスを死なせない。そのために自分が死んでも構わない。

最初は傾倒のあまりそう思ったんだと思った。だが、違う、とすぐに気づいた。
クリスはBSAAに必要なんじゃない。俺に必要なんだ、と。
クリスがいない世界に俺が生き残って何になる?そんな世界はいらない。
――そう思った。

「…ていうか、結局言わされてるしっ」
乗り出した身のまま顔を伏せる。テーブルの上で握った拳に額をつけた。
「部隊にいた頃からそんな感情持ってたら、一緒の部隊で活動できるわけないでしょう!」
「…それもそうだな。お前はすぐに顔に出るし」
「出ません!」
「四六時中考えて仕事にならんだろ」
「俺はどんなけだよ!」
あまりな言い草に思わず顔を上げたピアーズにクリスの視線が刺さる。思わずたじろぐと、クリスは目を逸らした。
「――」
クリスが何か呟いたが聞こえなかったので、首を傾げながら聞き返した。
「え?」


――俺も四六時中考えて指揮なんか執れたもんじゃなかっただろうしな。

向こうを向いているのでクリスの顔は見えない。さっきと同じだ。でも、今度はこちらから見える耳が赤い。そして、ピアーズは自分の顔もきっと真っ赤だろうと思った。

「お互い様ってことですね」
ピアーズが思わず言うと、クリスは顔を背けたまま、うるさいぞ、と言った。


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