TOPへ | ![]() 幻水topへ |
「ねぇ、聞いたわよクリス〜。どうやらうまくいったみたいね」
「ん?リリィ」
何処から聞きつけてきたのかリリィがそんなことを聞いてくる。
「私の言ったとおりだったでしょ」
やっぱり自信満々にそう言ってくる。
あのアドバイスで私はすごく恥ずかしかったんだから!!
…まあ結果オーライだったけど…
「そうでもなかったわよ……」
少し厭味をこめながら私はリリィに返した。
「またまたぁ〜わたしヒューゴから聞いたんだから」
ニコニコしながら肩肘で私の腕をつつくリリィ。
「え?何を??」
「サロメさんよ〜、このところ会議にいっつも遅れてくるって、しかもなんだかうれしそうで
この間もめずらしくあくびなんかしちゃってたんだって?」
一体何の話なんだ!?
「そういえば最近はよく眠れるハーブティーを一緒に飲んでるんだけど…
これからはやはり紅茶にしたほうがいいかな?
だけどそれがどうかしたの?」
「…本当にそれだけ、なの?」
拍子抜けしたようなリリィの声だ。
「ええそれだけよ。」
まあ本当にそれだけだからそう答えた。
「あちゃ〜」
「…何?そのあちゃ〜って、、、、」
いやな予感…
「あはは、な、なんでもないって。じゃあ私用事あるから戻るわ」
「……?」
「私は事実しか言ってないからね〜(ちょっと大げさに言っちゃったけど)」
そんな一言を残しそそくさと部屋を去っていくリリィに私は言いようのない不安を覚えた。
そんな折廊下からばたばたと駆ける足音が近づいてくる。
…かなりいやな予感がする
「クリス様〜!!!!!」
「クリス!!!」
「な、なんだ?ナッシュと、それにお前たち…」
入ってきたのはナッシュと部下の騎士達。
彼らは口をそろえて開口一番こうたずねた。
「「「サロメ殿と毎晩逢瀬を重ねてるって本当ですか!!???」」」
「はぁ〜!!!????」
わけのわからない質問に私は思わずこけそうになってしまった。
そんな私にお構いなしに皆は口々に私に思い思いの言葉を浴びせかける。
「最近サロメ殿は茶器を2客用意されている。以前はクリス様の分だけを用意されていたはず」
これはパーシヴァル。
一体いつ見ていたんだ。いつ!?
「あのサロメ殿が毎晩会議に遅れてくるとは…」
これはレオ。
まあ、サロメを会議に遅れさせているのは事実…だな。
だがそれはサロメの体を心配してのことで…
「このまえなんか会議中にあくびなんかしていたぜ?」
これはナッシュ。
サロメが勘違いしてハーブティーなんか淹れるからだっ!
「しかもクリス様のほうから、その、おっしゃられたとか…」
これはボルス。
嘘ではないが…
事実とも違うと思う…。
数々の目撃談にリリィの言葉が決め手となってそういう結末に行き着いたらしく、
確認のためにこうして赴いてきたということらしい。
「まったく、何を言い出すかと思えば、私とサロメがお、逢瀬など…」
言いながら想像してしまい思いがけず頬が紅潮してしまう。
な、何考えているんだ私は、お、おちつけ
そう思えば思うほど顔は熱く、心臓が早鐘を打ち出し、わたしは思わず両の手で頬を覆った。
そんな様子を見てどう思ったのか
「やはりうわさは本当だったか…」
「まさかサロメ殿とは…不覚」
「クリス様…クリス様……」
一同は勝手に納得し、好き勝手につぶやきながら部屋を後にしていった。
「え、ちょっと…」
部屋にはわたしが一人ぽつんと取り残されていた。
「私の話を聞いてってば……」
かくして二人のあずかり知らないところで二人の仲は勝手に進展していくのであった…
サロメ編へ続く |
「ふぁ…」
出かけたあくびをかみしめながらサロメは会議の各部署の報告を聞いていた
近頃会議が身に入らない気がする。
これというのもクリスのあの一言からだった。
「か、会議なんかに行かないで…も、もう少しここにいて欲しい…の。」
某工作員や某騎士あたりなら即押し倒しであろう
そんな台詞を潤んだすがるような瞳で言われたのである。
自分はクリスの保護者的立場、とわきまえているがゆえにクリスへの想いも秘め、
参謀役に徹しているのだが
あのような縋り方をされたら理性というものがいくつあっても足りないというものである。
いや、しかしクリス様は私を参謀役として頼られているわけであって…
だが、あのようなところは決して他の者には見せていないだろうし…
などと彼自身クリスにどう対処していいのかわからず
悶々と悩む日々が続いていたため、自然睡眠不足になり会議に身の入らないことがあるのだった。
それでも、少しでもクリスの不安を取り去ろうとともに楽しむお茶の時間はサロメの密やかな悦びでもあった。
「大変そうだねサロメ殿?」
「ルシア殿…?」
会議がおわり皆が部屋を後にしていく時、不意にサロメに声をかけるものがあった。
カラヤクランの族長ルシアである。
「じゃじゃ馬の手綱を握るのはそう簡単じゃないだろう?」
「クリス様に対する侮辱ですか?それは聞き捨てなりません」
「ふふ、ちがうよ、からかっているんだよ。」
「は?」
「どうしたもんだか、彼女を見ていると自分の昔を見せられているようでね…
ついからかいたくなるんだよ」
「…で、どうして私にからかうのです?」
「どうして…って?またわかりきったことを言う。それがゼクセン流かい?」
「わかりきってないから聞いているのですが?」
「毎晩、あの子についててやってるんだろう?それでお疲れ…なんだろう?」
「〜〜〜〜!!!!????」
真っ赤になるサロメの反応をどうとったのかルシアは満足そうに微笑む。
「ち、ちがいます!!!わ、わたしはただクリス様によく眠れるお茶を差し上げているだけで」
「あら、そうなの?」
「そうです!それだけです!」
「まあ、今はそういうことにしておくわ。」
そういって不敵な笑みを浮かべルシアは去っていった。
「…カラヤの戦士は…恐ろしい…」
グラスランドと手を組んでよかったと心から思うサロメであった
|
TOPへ | ![]() 幻水topへ |