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  その人は言いました  

ひらり,ひらりと旗がひらめく.
赤い表と白い裏を見せて.

その人は,身を乗り出して話す.
目が,少年のように輝く.
カメラを回す私に,老人だと忘れさせる.

手を伸ばせば,すぐに届くような昔話.
インタビューは,とめどめなく続く.
彼は,妖怪は身近に居たと言う.
家の暗がり,行き止まりの道,もちろんお墓の中にも.

口が歪む.
ひらり,ひらりと馬鹿にするように動く.
なめらかに,すべらかに.
語りだす.
笑い出す.
口の中から,膿が出てくる.
すべてを捨てて,自由になるのだと.

そのヒトは,すでに妖怪になっていた.
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