一章から四章までのあらすじとキャラクター紹介
【一章】
西暦2211年、人類初の星間戦争が、地球国家と月面都市群の間で勃発。超能力者たちが宇宙で戦う時代が来たのだ。それから八年後の、西暦2219年六月七日。
十七才の少女、――朝乃は戦争で父母をなくし、日本の戦災孤児院で働いていた。突然、戦場に行ったはずの双子の弟、――裕也が孤児院に帰ってくる。
「さっさと送った方が安全だから、必要なことだけを言う。自分の身は、自分で守ってくれ」
裕也は超能力を使って、地球の日本から中立の月面都市「浮舟」へ、朝乃を送りこんだ。朝乃は事情が分からずにとまどう。朝乃の前に、二十八才の青年、――ドルーアが現れた。
「どうやって僕の家に入ったのかな、お嬢さん。君を招待した覚えはないけれど」
裕也は朝乃を瞬間移動(テレポート)で、ドルーアの家に放りこんだのだ。朝乃の登場はドルーアにとっても、予想外で突然のことだった。
キザでナンパなドルーアに、朝乃は振りまわされる。ドルーアは人気のある役者で、戦争反対を訴え続けている。
「朝乃を私たちに引き渡してください。日本を敵に回したいのですか?」
武器を持った男たちが朝乃をねらって、ドルーアの家に押し入ってくる。ドルーアと朝乃は応戦し、なんとか男たちを撃退した。
「僕たちは意外にいいコンビだ。ふたりで力を合わせて、悪いやつをやっつけた」
ドルーアは朝乃のほおに、キスをする。朝乃は、自分を命がけで守ったドルーアに、淡い恋心を抱いた。ドルーアは十一才も年上で、朝乃を子ども扱いするのに。
主人公の朝乃。家庭的で従順な性格をしている。ドルーアに片想い中。
『
Picrew(ピクルー)』の『
性癖女子メーカー』で製作。イラストレーターは、
桜いろはさん。
【二章】
襲撃者たちによって、ドルーアの家は壊された。朝乃はドルーアの友人で、裕也の知り合いでもある功(三十才)の家へ行く。功は二年前に、妻と日本から浮舟へ亡命してきた。
「ドルーアから君を守るように頼まれている。それに君は、裕也君の姉でもある」
朝乃は、自分が浮舟に来たのと同じタイミングで、日本の宇宙港が火事になっていることを知る。予期せぬニュースに、朝乃と功は動揺する。
「裕也君の超能力は尋常じゃない。地球から月まで人間ひとりを瞬間移動させるなんて、彼以外、誰にもできない」
「その裕也の力を手に入れるために、二十三の月面都市と日本を含め地球上の国々が、君をねらっている」
超能力者は稀な存在だ。だがたいていの場合、大した力を持たない。人の心を読む、物体を浮かせるなどの力を持つ者は、ほんの一握りのAランクかSランクだけだ。
Sランクの超能力者たちよりも、ずっと強い力を持つのが裕也だ。他に追随を許さない、世界最高の超能力者。朝乃は、そんな裕也の唯一の肉親だ。
「裕也君は従軍後、軍や戦争に嫌気がさした。しかし君を人質にとられたので、戦い続けた。なので君を浮舟に逃がして、自分も軍から逃げた」
裕也が今、どこで何をしているのか分からない。けれど朝乃は裕也を信じて、彼の望みどおり浮舟に亡命することを決めた。
ヒーローのドルーア。兄のように恋人のように、朝乃を守り愛している。
『
Picrew(ピクルー)』の『
推し男メーカー』で製作。イラストレーターは、
ぐ〜ちゃんさん。
【三章】
浮舟に亡命する手続きを行うために、朝乃とドルーアは入国管理局へ向かう。職員のひとりである信士(三十六才)が窓口で応対する。
そこへ同じく職員のジョシュア(三十九才)がやってくる。
「市長は、朝乃さんの身を心配しています。安全な市庁舎に連れてくるように、市長から命令されています」
朝乃とドルーアと信士は、ジョシュアに促されて、市長のタニア(四十七才)に会うために市庁舎へ向かう。ところが管理局の裏手で、不審な男たちに襲われる。
「朝乃、人の多い場所へ逃げるんだ」
ジョシュアは銃で撃たれて、ドルーアと信士は応戦する。朝乃も麻酔銃で撃たれて、意識を失った。
朝乃が目覚めたとき、そこは病院だった。裕也が誰にもばれずに、朝乃たちを助けたらしい。
――俺が助けたことは黙っていろ。
朝乃は病院で、信士の養子である一郎(十八才)と出会う。一郎は、ドルーアの弟であるニューヨーク(十九才)と友人であるらしい。
しかしドルーアは、家族と仲が悪いようだった。特に、弟のゲイター(二十五才)と。ゲイターは、軍需企業であるドラド社の役員のひとりだ。
「しばらく会えないけれど、元気で」
ドルーアは管理局裏手の襲撃事件の真相を探るために、朝乃のもとからいなくなる。朝乃はショックを受けるが、功は朝乃に、ドルーアをそっとしておくように言う。
「俺の家に、養子として来てほしい。俺も俺の妻も、君を大切にする」
朝乃は功の申し出を受けて、彼の家へ向かった。功の妻である翠(三十才)は妊婦で、朝乃をあたたかく歓迎した。
影の主役の裕也。シスコンで、チートな超能力者。功にあこがれている。
『
Picrew(ピクルー)』の『
キミの世界メーカー』で製作。イラストレーターは、
真崎マサキさん。
【四章】
朝乃が孤児院を出て行ってから、六日後。朝乃は、孤児院院長の由美(四十八才)と電話で話した。その電話で、彼女は何かを暗号で伝えてくる。
電話の後、裕也が朝乃に会いに来た。瞬間移動して、唐突に家の中に入ってきたのだ。朝乃は裕也との再会に驚き、喜ぶ。
「俺は、朝乃に言えないことをいろいろしてきた。俺は変わったんだ」
朝乃は、日本の宇宙港に火をつけたのは裕也と知る。裕也に会うために、ドルーアもやってくる。ひさしぶりに会ったドルーアに、朝乃はときめいてしまう。
「あなたは彼女と一緒に、和平を訴えてくれる存在です」
裕也はドルーアに、一通の手紙を渡す。ドルーアの元恋人であるジャニス(三十一才)からのラブレターだ。ジャニスは歌手で、反戦歌を歌っている。
朝乃は、ドルーアはジャニスを愛している、自分は失恋すると考えていた。が、ドルーアはジャニスを振ってしまう。
「僕がプライベートで君の手を取ることはないと、はっきりと書いた」
またドルーアは裕也のメールアドレスから、裕也が中国に住んでいることを言い当てる。
「君は、千里眼のミンヤンと関わりがある?」
裕也は今、Sランク超能力者のミンヤン(七十五才)のもとに、秘密裏に身を寄せている。ミンヤンは中国に住み、星間戦争をやめるように訴えている。
「俺は、ミンヤンさんが俺を必要と言ってくれるから、生きているのです」
裕也はミンヤンの力になり、戦争を終結させる、超能力者たちが戦場へ送られる世の中を変えると言う。朝乃は裕也の熱意に驚き、戦争に対する自身の考え方を見直す。
ドルーアもミンヤンを尊敬している。ドルーアは、裕也が自由に動けるように朝乃を守ると、裕也に約束した。そして朝乃に、今夜、電話すると告げた。
――五章へ続く。