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  モフオンの逆襲  

俺,斉藤勇太(さいとう ゆうた),十六才.
リオノスに連れられて,テルミア大陸にやって来た男子高校生.
天空神ミアの頼みを受けて,魔王を倒すために旅をしている.
神様のご加護で,初めからレベルは最大値,ちょっとなぐっただけでモンスターのダメージは9999ポイント,回復魔法も使えるから怖いものは何もない.

ある日,俺は森の中で,モンスターの群れに襲われている女の子を発見した.
もちろん,モンスターは退治したさ!
剣をぶんぶん振り回し,普段は面倒で使わない攻撃魔法もド派手に使って,仕上げに決めゼリフ.
「相手が悪かったな.われこそは,天空神ミアの使いリオノスより召喚されし勇者.」
剣をさやに収めて振り返ると,女の子は熱い視線を送っている.
腕をケガしていたので,さっくりと魔法で治してあげる.
俺は調子にのって,女の子をお姫様抱っこで町まで運んだ.
家にたどりつくと,女の子の両親が涙ながらに感謝する.
「どうぞお礼をさせてください.今夜はわが家に泊まってください.」
俺はちやほやされて,おいしい料理をいただき,ふかふかのベッドで休んだ.
そして翌朝,女の子は告白した.
「私はあなたと離れたくありません.危険な旅には出ずに,ずっとこの町にいてほしいです…….」
女の子の背後では,両親がうんうんとうなずいている.
「けれどあなたは天空神ミアより地上に使わされた勇者.魔王を倒すという尊い使命をおっています.私などが引き止めていいお方ではありません.」
いやいやいや,引き止めていいっすよ!
俺もこの町で暮らしたいし!
「私のことは気になさらずに旅立ってください.ですが,もしも私をいとしく思ってくださるのならば,使命を果たした後でこの町に戻ってきてください.」
ここまで言われたら,旅だたないとかっこ悪い.
「魔王を倒し,必ずあなたのもとへ帰りましょう.」
女の子は,旅のおともに一匹のモフオンをくれた.
これを私と思ってくださいだってさ,かーわいー!

そんなわけで,俺は旅立った.
山を越えると,モンスターの群れに襲われているおじいさんを見つける.
当然,モンスターは退治した.
観客がおじいさん一人だったから,テンションは低かったけれど.
ぎっくり腰で立てないおじいさんを背負って,家までたどり着くと,
「ありがとうございます,勇者様.」
かわいい女の子がいた!
おじいさんの孫らしい.
俺は女の子にちやほやされて,お風呂では背中を流してもらった.
そして翌朝.
「私はあなたと離れたくありません.危険な旅には出ずに,ずっとこの町にいてほしいです…….」
女の子は泣きながら,俺にすがりついた.
「けれどあなたは天空神ミアより地上に使わされた勇者.魔王を倒すという尊い使命をおっています.私などが引き止めていいお方ではありません.」
また,このパターンか.
「私のことは気になさらずに旅立ってください.ですが,もしも私をいとしく思ってくださるのならば,使命を果たした後でこの町に戻ってきてください.」
「魔王を倒し,必ずあなたのもとへ帰りましょう.」
女の子は約束のしるしとして,一匹のモフオンをくれた.
二匹のモフオンはすぐに仲よくなって,俺の旅はどんどんと楽しいものになった.

川に沿って歩きながら,向こう岸に渡るための舟を探す.
すると俺は,モンスターの群れに襲われている小さな女の子に気づいた.
幼女は守備範囲外なので,ほどほどにかっこよくモンスターを退治する.
「大きくなったら結婚してあげる.」
とおませな口をきく女の子を,家まで送る.
玄関の扉を開けると,やっぱりここにも同世代の女の子がいた.
俺はちやほやされて,――女の子たちは,どっちが俺と結婚するかケンカするし,困ったなぁ.
そして翌朝.
「魔王を倒し,必ずあなたたちのもとへ帰りましょう.」
モフオンは三匹になった.

そんなこんなで,俺は十匹のモフオンと旅をしている.
モンスターとの戦闘時には,モフオンをかばいつつ剣を振るった.
俺は最初から魔王と戦っても簡単に勝てるレベルだったので,問題なかった.
草原を歩いていると,モフオンたちが騒ぎ出す.
もーん,もーん,もふーんと鳴いて,たがいにぎゅっとくっつきあう.
おしくらまんじゅう状態で,唐突に発光した.
金色の光の中で,モフオンたちは次々と合体して,大きくなっていく.
ライオンほどの大きさになると,
「おお,勇者よ.モフオンを十匹も集めてしまうとは情けない.」
リオノスに変身した.
「かくなる上はすぐさま魔王のところへ向かおう.魔王を倒したあかつきには,そなたを元の世界へ帰してしんぜよう.」
「ちょっと待って!」
俺はあわてる.
「俺には,帰りを待ってくれている女の子たちがいるんだ.」
「心配無用.」
リオノスの目が,意地悪く細くなった.
「天空神ミアのご加護により,彼女たちは誠実な男とめぐり合い,末永く幸せに暮らすであろう.」
「そんなー!?」
リオノスはかぱっと口を開けると,俺の体をはさむ.
俺は逃れようとしたが,洗濯バサミのようにリオノスのあごは強かった.
「いやだー,俺はこの世界でハーレムを作るんだーっ!」
俺をくわえたまま,リオノスは軽々と空へ飛び立った.
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