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  花咲かじいさん  

昔むかし,あるところに,一匹の白い犬がいた.
犬は,心やさしいおじいさんとおばあさんに育てられて,とても幸せだった.
だから犬はおじいさんたちのために,なにかをしたいと考えていた.
そんなとき畑の下から,黄金のささやく声が聞こえた.
――私は黄金.私があれば,おじいさんたちはきれいな服を着て,大きな家に住めるでしょう.
犬は前足で,畑をほった.
――ここほれ,わんわん! ここほれ,わんわん!
でもおじいさんは,ほらなかった.
おじいさんは言った.
――黄金を得るよりも,おばあさんとお前と仲よく暮らすことが,私はうれしい.
無欲なおじいさんは,家に帰ってしまった.

それを,となりの家のおじいさんが見ていた.
欲ばりなおじいさんは,くわで畑をほろうとした.
犬は黄金を守るために,立ちふさがった.
――ここ去れ,わんわん! ここ去れ,わんわん!
おじいさんは,くわを高々とかかげて,犬をおどした.
――じゃまをするのならば,やっつけるぞ!
くっしてたまるかと,犬はほえつづけた.
すると空のお日さまが,ぴかりと光った.
――黄金を失うよりも,お前がけがをすることを,おじいさんたちは悲しむでしょう.
そのとおりだと,犬はすごすごと立ち去った.
悪いおじいさんは黄金を手に入れて,大はしゃぎ.

その後,二人のおじいさんがどうなったのかって?
良いおじいさんは,庭に桜の木を植えて花ざかり.
おばあさんといっしょに,にこにこと笑って,犬は楽しく走り回った.
毎年みごとに咲く花に,彼こそまさしく花咲かじいさんと村人たちはもてはやした.
うわさを聞きつけた大名さまも桜をごらんになって,あっぱれなりと花ふぶき.
そして悪いおじいさんは,これまた悪い盗人に黄金をとられた.
おばあさんといっしょに,ぷんぷんと怒ったけれど,これこそまさしく自業自得.
めでたし,めでたしだね.
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