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君と一緒に歩きたい


「お菓子なんて,要らないよ…….」
私は膝を抱いて,顔を埋めた.
「ひどい,ひどいよ,竹村…….」
涙が出てくる.
うっうっと嗚咽を漏らしていると,兄が優しく抱きしめてくれた.
「美紀,泣くな…….」
「だって…….」
泣くなと言いながらも,兄の胸は温かくて,私は思い切り泣き喚いた.

しばらく経って,気持ちが落ち着いてくる.
私は,兄につき合わせてしまったお詫びに,今日あったことを話した.
竹村の告白が嘘だったこと,友人のミツキにも同じ告白をしたこと.
ミツキも私も,傷ついたこと…….
兄は最後まで静かに聞くと,私に質問をしてきた.
「そいつ,どこの高校だ?」
「△□高校だよ.」
確か,共学の公立高校だったはず.
「ふ〜ん.――同じ中学だったということは,近所に住んでいるのか?」
「ううん.竹村は結構遠くから,中学に通っていたから……,」
うろ覚えな竹村の家の場所を,兄に教える.
「あぁ,あそこか.……バイクで,すぐに行けるな.」
兄は,小さくつぶやいた.

そして兄は,唐突に立ち上がる.
「コンビニに行く.お前の好きなチョコレートの菓子を,買ってきてやるよ.」
いつもの頼もしい笑みで.
「うん,ありがとう.」
泣いてすっきりした私は,……多分,晴れやかな笑顔を兄に見せることができたと思う.
「いってらっしゃい.」
「いってきます.」
その後,兄は夜遅くまで帰ってこなかった…….





――END(復讐)
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