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君と一緒に歩きたい


私は慌てて,携帯で竹村に連絡した.
「早く来て! あいつ,苑田君のお金で,ブランド物を買おうとしている!」
怒りに,言葉がもつれそうだった.
「分かった.」
竹村の声も低い.

早く,早く来て.
私は美津子さんから見えないように,柱の影に隠れた.
ちらちらと,店内の美津子さんの様子を伺う.
何を買うのか,彼女は悩んでいる.
けれど,とうとうバッグとベルトを持って,レジへと向かった.
「待てぇ!」
瞬間,怒声が響き渡る.
振り返ると,デパートの中を全力疾走でかけてくる竹村.
まっすぐに美津子さんの居るブランド店を目指し,
「きゃぁああ!?」
私は悲鳴を上げた.
私の悲鳴に,他の女性の悲鳴と男性の怒声が重なる.

竹村が,美津子さんを殴り倒したのだ!
「お客様!」
レジに居た女性店員が,竹村を止めようとする.
けれど,竹村は止まらない.
逆に,店員を殴ってしまった.
「辞めて,竹村!」
私も止めなくちゃ!
……でも,怖い.
竹村は人が違ったかのように,暴れ狂っている.
陳列台を倒し,商品を美津子さんに投げつけ.
「君,辞めないか!」
警備員の男性がやってきて,竹村を取り押さえる.

美津子さんが,地べたに座り込んで泣き喚いている.
店内は,ぐちゃぐちゃだ.
どこか遠くで,パトカーの音が聞こえるような気がした.
あぁ,私はなんで,竹村に連絡をしてしまったのだろう.

昨日の竹村を見れば,こうなることは簡単に予測できたはずなのに.
警備員室に連れて行かれる竹村を見ながら,私は一人で泣いた.





――END(破壊)
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