Lucifer 04(リメイク版)
どれだけの作為をこらそうと、彼はルシフェルを失ってしまう。ルシフェルは必ず堕天する。今回は人間との恋ゆえにおちたが、理由は毎回さまざまだった。
「今回も駄目でしたねぇ」
計画に協力した悪魔がつぶやく。彼は額に、大きな角を持っている。
「律子の誘惑は失敗しました。途中までは、うまくいっていたのですが」
律子は悪魔の手を取らずに、ルシフェルの手を取った。いや、ルシフェルと律子が出会った時点で、計画は失敗だったのかもしれない。
今回のルシフェルは、自我を持ったときから、地上に生きる人間に興味を持っていた。見習い期間が終われば、人間に関する仕事につきたいと言っていた。運命の恋人である律子を見い出し、恋に落ちるのは確実と思われた。
だから彼はふたりが出会わないように、律子に細工をほどこした。律子から、人間らしい気配を取り除いたのだ。だが、それが裏目に出た。見習い天使のルシフェルは道に迷い、律子を天使とかんちがいして頼った。
律子には、天使だの悪魔だのを信じない現実的な性格を与えていた。もしも天使を見ても、すぐに忘れるように。さらに悪魔の見張りまでつけていたのに、ほんの少しのすきをついてふたりは出会った。
初めのルシフェルが彼から離れたとき、彼は心から悲しんだ。もっとも愛していた天使だったのに、ルシフェルは彼に反抗し、地獄へおちていった。
その悲しみを埋めるために、彼は新しいルシフェルを何百、何千と作った。同じ過ちを繰り返さないように、さまざまな容姿、さまざまな性格を与えた。けれど、みんな離れていく。今回は悪魔にまで協力してもらったのに。
「いい加減、あきらめた方がいいと思いますよ」
悪魔は笑い、やみに溶けて消える。初めのルシフェル、――サタンのもとへ帰るのだろう。彼は、ただひとり残された。次のルシフェルは、どんな瞳の色にすれば堕天しないのか。彼の苦悩は、永遠に終わらない。
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