■酒井美紀というひと | |
=97年邦画の真打ち「愛する」公開= | 1997/10/2 |
今年は何でも映画復活の年だそうで、とりわけこの夏は、見てない人まで見たような気になった「もののけ姫」、見る前から内容が全て分かっていた「ロスト・ワールド」の両巨頭を中心として映画館は随分盛況だったようだ。
中でも、アニメ以外では久しく低迷の続いていた邦画が元気である。もちろん、その中心はあの「失楽園」なのだが、それは置いておくとしよう(笑)。「うなぎ」「HANA-BI」の映画祭受賞組以外にも良質な作品が続々と登場している。秋元康企画ということで何かと見る前から差別を受けていた(?)「恋と花火と観覧車」、渡哲也渾身の復活作「誘拐」、あまりにも地味すぎて全く客が入らなかった「私たちが好きだったこと」、ある意味で最も日本映画が得意とする分野であるペーソスコメディ「ひみつの花園」等々……
そして、この秋に97年邦画の真打ちとも言える作品が公開される。遠藤周作原作、熊井啓監督の「愛する」である。主演は酒井美紀。そう、彼女こそ今年の日本映画活況のキーパーソンである。今年は、前述の「恋と花火と観覧車」「誘拐」に加えて「流れ板七人」にも出演し、何と1年で3本かと驚いていたところに、この初主演作である。
酒井美紀といえば、岩井俊二監督の「Love Letter 」で主演の中山美穂を食ってしまう程の素晴らしい演技でスクリーンデビューを果たし、昨年のドラマ「白線流し」で完全ブレイクした日本映画界の秘蔵っ子だ(「白線流し」は殆ど映画ですからね)。何だか、映画会社の太鼓持ちみたいな言い方になってしまったが、彼女のあのどこまでも澄んだ目と、見る者に得も言わぬ切なさを感じさせる透明な佇まいは、ホントに素晴らしい。その彼女の映画初主演作だ。期待するなという方が無理に決まっている。
「愛する」は新生日活の第1弾で、会社側は天海裕希主演のキャスティングを考えていたのだが、熊井監督の強い希望(というか監督引き受けの条件)で酒井美紀の主演が決定したのだそうだ。素晴らしい俳優が素晴らしい作品を作り上げ、素晴らしい作品は素晴らしい俳優を呼び込む。「Love Letter 」以来の酒井美紀の活躍は、久しく絶えてなかった日本映画の活力がもっとも如実に表れているのではないだろうか。
しかし、油断は禁物だ。「私たちが好きだったこと」をサッサと打ち切って「失楽園−海外版」を上映してしまうのも、また日本映画界の現実である。さあ、「愛する」もあっという間に終ってしまうかもしれないぞ。早く見に行こう。
■岩井俊二全編撮り下ろし、松たか子のビデオ・クリップ集発売 | |
1997/11/3 |
まさに八面六臂の大活躍である松たか子の最新アイテムは、ファーストアルバムからの6曲をあの岩井俊二監督が全編撮り下ろしたビデオ・クリップ集。実はこのクリップ集は来年公開予定の岩井俊二監督の新作「四月物語」の予告編になっているとか。ストーリーなど詳細は不明だが、松たか子ということは、「スワロウテイル」路線じゃなくて「Love Letter」路線なんだろうな。
岩井俊二はかなり彼女に興味があるようだが、驚異の傑作アルバムに仕上げたアルバムプロデューサーの日向大介といい、素晴らしい人材が集まってきますね、彼女の周りには。まあ、岩井俊二のコメントからしても、何だかよう分からんオーラが出てるんでしょう。そう言えば、彼女が今やってるヤマザキパンの前のCMキャラは「Love Letter」の酒井美紀だった。ヤマザキが岩井俊二にプッシュしてるとか……
■カンヌ映画祭カメラドール賞に輝く「萌の朱雀」ようやく公開 | |
1997/11/3 |
「うなぎ」の金賞受賞で沸き返ったカンヌ映画祭のもう一つのハイライトであったカメラドール賞受賞作「萌の朱雀」が半年たってようやく日本公開される。
ひとつ心配なのは、ことに日本映画に関しては評論家の受けが必ずしも動員に結びついていないということ。「うなぎ」は例外として、この類の映画の殆どが単館公開であり、初めから興行的に成功する余地が与えられていないのである。いくら評論家受けが良くても、興行成績が悪ければ、次回作の制作が苦しくなる道理で、それを避けるためにも、是非「萌の朱雀」には記録的動員を果たしてもらって、メジャーロードショーに持っていってもらいたいものである。
最後になりましたが、河瀬監督御結婚おめでとうございます。
■「コン・エアー」急上昇も、大自然には勝てず | |
=97/11/8-11/14映画興行成績ベスト10= | 1997/11/21 |
予想どおり、パニック大作「ボルケーノ」が1位キープ。同じく火山の脅威を描いた「ダンテズ・ピーク」は今イチの入りだったが、トミー・リー・ジョーンズの知名度のおかげか「ボルケーノ」は好調持続である。これを猛追するのはスティーブ・ブシェーミの快演が目に焼き付く「コン・エアー」。作品の完成度では、ニコラス・ケイジの前作「ザ・ロック」の方が上だが、アクションの原点に近い分かりやすさが今作の幅広い人気の秘訣のようだ。
初登場組は、三谷幸喜初監督作「ラヂオの時間」と、いつものスティーブン・セガールのいつもの映画「沈黙の断崖」の2つ。邦画の初登場4位は今年の最高記録(ただし「もののけ姫」除く。何で除くねん?)である。しかし、セガールはよくやるよなぁ、同じような作品ばっかり。もはや伝統芸能の域か? 一方の「ラヂオの時間」は三谷ワールド爆発の密室劇。井上順のアメリカン・コメディ風の軽い演技と、軽薄短小丸出しの放送作家役モロ師岡が印象的だ。
■女優と歌手の理想的結婚、仲人は岩井俊二監督 | |
=映画「四月物語」徐々に全貌明らかに。 歌手松たか子は武部聡志制作の4thシングル発表= |
1997/11/21 |
前回、第1報をお伝えした岩井俊二監督のクリップ集「空の鏡」の最終チャプターに「予告」とあり、何だろうなぁと思ってみていたが、その正体はやはり来春公開の映画「四月物語」の予告そのものであった。6曲のクリップを順番に見ていくと、最後に突然映画の予告が出てきて、実は今までのクリップがまるごと「四月物語」の撮影を兼ねていたことが分かる、という仕掛けになっている訳で、さすがは岩井俊二、ひねくれた、いやヒネった構成になっている。
そんな岩井監督のお気に入り、松たか子の4thシングルは、日向大介の元を離れての人気アレンジャー武部聡志制作によるもの。「四月物語」までは、マツタカ−日向−岩井の最強トライアングルで突っ走るものと思っていただけに、ここへきての路線変更は少々意外である。しかし、聴いてみると相変わらずのホンワカしっとりのマツタカ・ワールド。まさにオーラとしか言いようのない強引な吸引力である。
最近、広末涼子や松たか子のような女優出身の人の曲が良くできているのは、女優として築いたイメージが明確化されていて、作家サイドが音を合わせやすいからだと考えているのだが、みなさんはどう思われますか?
■初めから沈む運命とは、まさにタイタニック号の如し | |
=超大作「タイタニック」東京国際映画祭にてワールドプレミア上映= | 1997/11/21 |
制作費240億円というのは、これはもう半端な額じゃない。日本映画としては破格の制作費をかけた「誘拐」は5億円だから、「タイタニック」1本で「誘拐」が48本撮れる計算になる。実際にタイタニック号と同じサイズのレプリカを作って沈めたというのだから、我々日本人には到底理解不可能なスケールである。
レオナルド・ディカプリオのギャラも結構高いだろうに、無茶なことをするもんである。この制作費のおかげで、どんなに客が入っても興行収入のみでは決して「ペイ」しないそうで、後々のビデオ化権やなんやらでやっと収支トントンになるそうだ。昔と違って、純粋な興行収入のみで収益を上げることが難しくなっている時代ではあるが、それは結果であって、この作品のように最初から興行黒字を放棄している作品も珍しい。
タイタニック号の悲劇は、有名作では過去2回映画化されており、いずれもパニック中心というか、史実に基づいたドキュメンタリー調の作品となっていた。力技が得意のキャメロン監督は、その悲劇の中に架空のカップルを登場させ、3時間という長丁場で、パニックと恋愛の交差するスペクタクルを描き出した。さすが、無理矢理「ターミネーター2」を作り上げた監督だけのことはある。
今回も、やっぱり楽団が最後まで演奏して、舷側を滑り落ちていくシーンがあるのだろうか?
■サイコな映画と愛すべきデブ | |
=また日本映画に新星登場、田口浩正初監督作「MIND GAME」完成= | 1997/11/21 |
田口浩正といってもピンとこない方は、ホリプロのサイトに掲載されている写真を見てください。「ああ、あのデブの兄ちゃん!」と思わず頷くことだろう。
周防正行監督作品には欠かせない愛すべきデブ(デブというのは本人が言われていることで、決して誹謗中傷ではありません。あしからず)の田口氏。最近では、三谷幸喜監督の「ラヂオの時間」でスタジオ・ミキサーの役を渋く演じ、中原俊監督の「Lie lie lie」では豊川悦司にコロッと騙されれるお人好しの銀行員を汗かき熱演していた。
そんな田口氏の監督デビュー作となった「MIND GAME」は一切笑いなしのサイコ・ミステリー。主演には「今日本一泣き顔が巧い役者(by 筆者)」柏原崇を起用し、田辺誠一、鈴木保奈美という役達者を両脇に配した絶妙のキャスティングからしても期待大である。なお、田口氏本人が出ていない理由については「ミステリーにデブはいらない」からだと監督が言っておられます。
周防監督曰く「今まで彼のことを憎めないデブだと思っていた人は、これから彼に嫉妬するだろう」とのことです。まずは見るべし。
■空飛ぶ要塞堂々の威容を現す。リアルなアメリカに取って代わったのは強いアメリカ | |
=97/11/29-12/5映画興行成績ベスト10= | 1997/12/11 |
先週初登場1位を記録した地味地味映画「フェイク」を早くも追い落としたのは、ハリソンフォード主演作No.1ヒットというよく分からないコピーがついている派手派手映画「エア・フォース・ワン」。戦う大統領といえば「インディペンデンス・デイ」のビル・プルマンが思い浮かぶが、なんとなく若い頃のハリソン君に似ているような気がする。まあ、まだ格が違いますけど。しかし、「メン・イン・ブラック」「タイタニック」と超強力作2本がすぐに控えているので、どこまでAF1が快飛行を続けられるかは不明な現状である。
以下7位までは殆どの作品がダウンとなり、小休止といったところだが、8位−10位はひっそりとした上昇組。唯一の初登場「ブラッド&ワイン」は、ジャック・ニコルソン、スティーブン・ドーフ共演というだけで何やら恐ろしげな感のする犯罪映画。久しぶりの薬師丸ひろ子出演作「マグニチュード」も粘り強くランクアップしている。ただ、彼女はこういう何とか省推薦みたいな映画よりも、ホモの夫を持つアル中の妻というとんでもない役をエキセントリックに演じた「きらきらひかる」みたいな変な作品(誉め言葉)の方が数倍魅力を発揮すると思う。いつまでも角川の秘蔵っ子じゃないんだから、いい意味で彼女を乱暴に扱って欲しいもんです。
■普通の人々が選ぶんなら、全部「もののけ姫」でいいのにねぇ | |
=第10回日刊スポーツ映画大賞発表= | 1997/12/16 |
12月から年を越えて2月あたりまでは、各映画賞の時期になってくるが、まずは「第10回日刊スポーツ映画大賞」の結果が発表された。
いわゆる映画評論家と言われる人々が殆ど選考委員に入っていないことから、結果は至極妥当なメジャー路線となっている。まずは何と言っても「もののけ姫」で、監督賞(プラス石原裕次郎賞)をゲット。商業ベース、話題ベースでの最大の対抗馬「失楽園」は黒木瞳の主演女優賞のみにとどまった。結局、日本映画の復活だと騒がれた今年をリードしたのは良くも悪くもこの2作品だった訳で、まずは市井の意見を妥当に反映したものであろう。
恐らく、シネマジャパネスク系作品や単館系作品はハナから対象になっていないとしか思えない受賞結果なので、まあ、そういう前提からすれば、主演男優賞の渡哲也、助演男優賞の西村雅彦なども何の問題もないのだが、よく分からないのが、作品賞の熊井啓監督「愛する」。
実は、私はこのサイトの立ち上がり時に「愛する」と主演の酒井美紀を大プッシュする原稿を書いたのだが、いざ勇んで見に行った結果は残念ながら期待を大きく裏切るものだった。稚拙なストーリー展開と古臭いカメラワーク。何よりも主題の曖昧さと伝えるべきことの未消化さが傑作になりうるべき原作を見事なまでに破壊していた。純粋無垢な少女ミツを演じた酒井美紀は予想以上の力演で、もし彼女がミツを演じていなかったら……と思うと、背筋も凍る思いである。それほどひどかったのだ。もはや、熊井監督はボケてしまったのか(脚本も書いてるんですよ、この人は)?
しかし、よく考えると酒井美紀を起用したのが失敗だったなぁ。純粋無垢なヒロインに純粋無垢なイメージの女優を使ったら、監督は仕事しなくていいんですよ。いっそのこと葉月里緒葉を使って聖女を表現するくらいの意気込みがないと駄目だったのでは、と私は今では思っています。そんな作品が受賞してしまったのは、一つくらい文芸路線の作品を混ぜておかないと、というようなカルチャーコンプレックスが無意識に選考委員に作用したのかもしれない。
だから、「愛する」の監督賞だけは個人的に異議を挟ませていただきます。ついでに言わせてもらうと、「新人賞:酒井美紀」ってのは何だぁ? 誰も「Love Letter」見てないんですか?今さら松井に新人王やるみたいなもんでしょうが。
■アメリカは娯楽大作、イギリスはシニカルとユーモア、日本は450円? | |
=97/12/13-12/19映画興行成績ベスト10= | 1997/12/24 |
正月映画本命の「メン・イン・ブラック」が2週連続1位をゲット。「ロスト・ワールド」を食った夏の全米大ヒットから半年遅れの日本公開で、ようやく実物を見た結果としては、佳作ではあるが傑作ではない、やはりアメリカン・コメディは日本ではシンドイのかなぁ、というようなところだった。続く2位は初登場のブラピ様御拝見映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」 。地味な作品だが、やはりブラピの底力か。
邦画では、やや相棒の光一君を引き離した感のある Kinki Kids 剛君主演「金田一少年の事件簿/上海魚人伝説」 が初登場4位、夏休み映画のはずが正月映画兼用になってしまった「もののけ姫」5位、東宝の手堅い稼ぎ箱「モスラ2/海底の大決戦」が7位ニューエントリーという結果。一方、東映が「失楽園」の配収をつぎ込んで作った(と噂される)「北京原人」は、何故か超横綱作「タイタニック」と同時の来週公開。果たしてチャートインすることが出来るのか? (金券ショップでは公開前にも関わらず、既にチケットが450円で売られているそうです)
最後に、ちょっと小粋なイギリス映画「フル・モンティ」の初登場9位をチェック。金欠状態から抜け出すために男性ストリップに真剣に挑戦する中年おじさんの奮闘ぶりを大フューチャーしたこの作品は、本国では歴代1位配収の歴史的大ヒットになっており、最近元気なイギリス映画の象徴となっている。このほかにも、さびれた炭坑町のブラスバンドの物語「ブラス!」、国王の精神錯乱をシニカルかつドタバタに描いた「英国万歳!」など、大資本のアメリカ映画とは一味も二味も違う作品達の公開が決定しており、「トレイン・スポッティング」以来のイギリス映画小ブームが、更に大きな潮流になるかどうか大いに注目だ。
■まだ「プリンセス・モノノケ」が邦画トップにいるようじゃねぇ | |
=98/1/13-1/19映画興行成績ベスト10= | 1998/1/22 |
正月興行戦争も一段落して、新作の登場もない静かな結果となった今週のシネマ・チャート。トップは、2週目にまさかの2位に落ちた後の2週連続1位となった泣く子も黙る超大作「タイタニック」。ハリウッドの超大作を必要以上に毛嫌いする人もいるが、これだけは自信を持ってお勧めできる名作。(詳しい作品レビューは、昨日発行号をご覧ください)
以下4位まではいわゆる正月洋画ビッグ4の揃い踏み。私は「セブン・イヤーズ・イン・チベット」のみ未見であるが、確かに今年の正月は粒揃いの大作(?)を存分に楽しめた日々であった。正月第2弾も、スピルバーグのドリーム・ワークス初作品、ニコール・キッドマンがとってもニートな「ピースメーカー」に、絶好調男同士の必勝タッグ、ジョン・トラボルタ&ニコラス・ケイジ共演のアクション大作「フェイス/オフ」が控えており、ますます洋画は好調のようだ。
5位以下はとりあえず並んだ邦画勢。しかし、何ともコメントに困るラインナップであります。「北京原人」は2週間早く打ち切りが決まったというのに、本当に6位なのか?(別にシネマスクランブルさんに文句を言ってる訳ではありませんが...)で、その後釜は極妻シリーズ最終作だとか。東映さん、しっかり頼みますよ。松竹では、奥山親子が電撃解任されて、シネマジャパネスクももう終わりだし...ああ、邦画よ、何処へ行く?
■さあ、今年のトレンドはベスパだ(!?) 工藤ちゃんは今も生きている | |
=究極のハード&ソフトボイルド「探偵物語」19年振りにスクリーンで復活= | 1998/2/9 |
松田優作と言えば「探偵物語」。ただし、薬師丸ひろ子とのアレではない。70年代から80年代への転換期をしなやかに駆け抜けた工藤ちゃんのアレだ。ベスパに乗った工藤ちゃんがスクリーンに帰ってくる、んじゃなくて、初めてスクリーンで会える。
東映が「北京原人」で見せた迷センスを払拭しようとしたのかどうかはよく分からないが、何だか唐突に沸き上がった感のあるこの「探偵物語特別編」。全27話から、衝撃の第1話(奥さんの熊谷美由紀と出会った作品ですね)と、地味ながら名作の誉れ高い第5話(水谷豊との夢の共演)をニューマスターでカップリングしたものに、それ自体が一個の作品とも言える完成度を誇っていた予告編、ハイライトシーン、更には「探偵物語」ファンのインタビューなどを組み合わせた内容のようだ。
私なんぞは、未だに史上最高のテレビドラマと確信しているのだが、世間的にはどうなんでしょうか? まあ、LDボックスも出てるし、最近はスマスマでキムタクがオマージュ・シリーズをやってるので、知名度はあるんでしょうが、全部見た人は案外少ないんじゃないのかなぁ。そんな人は、是非今回映画館で工藤ちゃんにノックアウトされて、LDを買いに走ってください。
しかし、いったい何だったんだろうか、あの異常なまでのカッコ良さは。黒スーツにベスパで街を走りまわるお馴染みの光景はもちろんのこと、服部刑事との抱腹絶倒の掛け合い、何でいるんだかよく分からない隣の部屋のナンシー&かおり、骨董品屋の主人、イレズミ者、力みまくりの松本刑事……。ああ、思わず19年前にフラッシュバックしてしまった。工藤ちゃんが決まっているのは当たり前だが、他の出演者から脚本から、つまり、ドラマ全体がビシッとスマートに決まっているのだ。とにかく、時の流れを越えて色褪せない永遠のスタイリッシュ感覚を、このドラマほど完成形として提示している作品を私は他に知らない。
映画化の企画段階では、第1回と最終回の組み合わせとなっていたようで、私はかなり前にこの情報を聞いたとき、大いに小さな声で異議を唱えた。というのも、最終回はやはり他の回と比較して著しく異質な作品に仕上がっており、ある意味「探偵物語」の象徴とも言える第1話と続けると違和感が大きすぎると思われるからだ。映画版の責任監修は松田優作の盟友村川透監督。どうやら、彼の意見もあったお陰か最終回の採用は見送られて前述の内容になった模様。(最終回は最終回でいいんだけどねぇ。)
そういえば、最終回のラスト、結局工藤ちゃんは死んじゃったのかどうかって、次の日学校で大論議になったよなぁ。私は死んでないって言い張ったけど。友人は「あの状況で、生き残ったと考えるのは無理だろう」って言ったが、私に言わせれば、工藤ちゃんは絶対死なないのである。それはスーパーマン的に死なないのではなくて、『意味もなく死なない』のだ。どんな状況においても、工藤ちゃんは一切の理由や過程を無視して生き残るのだ。「最終回までずっと見てりゃあ、そんなん分かるはずやろうがぁ」と当時私は友人に怒った記憶がある。
さて、皆さんはどう思われますか? 最終回まで見た人はご意見をお寄せください。
■記録に残る映画か、記憶に残る映画か? 『タイタニック』はやはり不沈船だった | |
=98/1/31-2/6映画週間興行成績= | 1998/2/12 |
さて、もはや『もののけ姫』を超えた感もある驚異的勢いの『タイタニック』は、初登場以来ブッチギリの7週連続トップキープ。「桁外れ」とは、まさにこの作品のためにあるような言葉で、2位以下とは観客数、週間興行収入、累計興行収入全ての部門で別次元の強さを発揮。ところが、太平洋を隔てた彼の地米国ではもっと凄いことになっており、初登場から8週連続1位は当然のこととして、史上最速の3億ドル突破に加えて、歴代興行収入でもなんと早くも4位に爆進している。(ちなみにトップ3は『スター・ウォーズ』(2回もやったらそらぁ1位でしょうなぁ)『E.T.』『ジュラシック・パーク』)アカデミーも史上最多タイの14部門ノミネートだとかで、何だか数字で語られる映画になってしまったようだ。さて、内容は…… みなさんの心の記録には永久に残るでしょうか?
桁下の方では、そろそろ新年第2弾もチャートイン。大作系では2位の『ピースメーカー』5位の『G.I.ジェーン』あたりが予想通りの強さ。『ピースメーカー』は文句なく面白いですねぇ。話としての新鮮味はないんだけど、同じ国家危機でもスーパーマン大統領が目立ち過ぎの『エアフォース・ワン』の倍はよく出来ています。
7位から10位は登場2週目の作品が並んだ。『ミミック』はバイオ・スリラー、『ブレーキ・ダウン』はサイコ(でもないか?)・スリラーと最近はやりの『怖いもの』系統が好調。
それから、シェークスピア・オタクのケネス・ブラナー最新作『ハムレット』が10位。古典中の古典を真正面から映像化した意欲作です。(4時間という上映時間も意欲的)『タイタニック』でも絢爛豪華な20世紀貴族衣装を着こなしていたケイト・ウィンスレットが、これでもかのコスチューム攻撃。ポッチャリポチャポチャ体型にとってもよく似合ってます。しかし、この人、トイレに行けない映画にばっかり出てます。
邦画はやっぱり8位の『HANA-BI』しかないでしょう。これだけチャート面で活躍する北野作品は初めてです。地味さではむしろ全7作品中トップだと思うのだが、やはり賞というのは絶大な威力。
下の方では、頑張る頑張る12位の地味で暖かい小作品『フル・モンティ』。アカデミーにもノミネートされちゃって、本選でグランプリ採ったりしたら、ジェームス・キャメロンがどんなコメントをするのか注目。