一葉記念館を訪ねて
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一葉記念館を訪ねて

 

11/20(土)久しぶりの小春日和に誘われ、台東区立一葉記念館を訪問しました。
ここは、名作「たけくらべ」の舞台となった竜泉寺町にあり有名な吉原の西隣に位置し、
一葉も荒物・駄菓子商を営みながら住んでいました。


昭和36年5月地元有志が寄付した約290uの用地に、台東区が記念館を建設したものです。
新札ブームで現在来場者が激増しており、あまりの盛況ぶりに、来年2月からの改築工事も
決まったそうで、築43年の2階建てが、06年秋に地上3階、地下1階に生まれ変わる予定
だそうです。


一葉は天才と呼ばれるにふさわしい明治女流文学の第一人者ですが、生涯の大半を不遇の
うちに過ごし、晩年の一年、所謂「奇跡の1年」に「たけくらべ」「にごりえ」「十三夜」
などの名作をやつぎばやに発表した。そして「たけくらべ」の翌年、明治29年11月23日
肺結核の為、24年の短い生涯を閉じた。
父則善の残した多額の負債、長男泉太郎の夭折、次男虎之助は分籍され、戸主として全ての
責任を負わされ、母と妹を抱えて経済的な苦闘が長く続いた。小説の制作を思い立ったのも
原稿料を当てにしての事であった。そうした低い次元から始まった一葉文学であったが、
後に奇跡の1年といわれる作品群が持つすぐれたリアリティを獲得できたのは、次第に倍加する
家計の不如意にあえぎ続けた人生経験と見合ったものでした。


記念館に並ぶ展示物の中で、私は特に「一葉から西村釧之助宛書簡」「一葉から伊藤夏子宛書
簡」に胸をつぶされる思いでした。何れも、普通の人間なら人には見せたくない、一葉の生活の
困窮ぶりを知らされる内容です。

24年間の短い人生を貧困の中で駆け抜けた一葉でしたが、その彼女をもっとも苦しめた
お金に、今回一葉が新5千円札となって誕生した事を、天国でどのように感じているでしょう
か?


一葉記念館全景

千束稲荷神社

一葉住居跡

浅草寺

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