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     やきもの



 日本では昔から陶芸の人気は高く、全国にはたくさんの
陶磁器の産地があります。

 陶器の窯場としてよく知られている、信楽、備前、丹波、
越前、瀬戸、常滑は「日本六古窯」と呼ばれ、それぞれに
個性が溢れる「やきもの」の本場です。

 中でも備前は千年に及ぶ歴史があり、六古窯においても最古の窯場だと言われています。

  そんな備前焼の特徴は、釉薬を一切用いず、良質の陶土を1200〜1300度の高温で堅く焼き
 締めるところにあります。そしてその魅力は、土と炎により自然に生み出される様々な「窯変」で、
 「灰かぶり」 や 「胡麻 (ゴマ) 」、「緋襷 (ヒダスキ) 」、「ぼた餅」、などと呼ばれるものがあります。
 備前焼は色合いが地味で素朴ながら、風趣に溢れ、飽きがこず、強度があって実用にも優れた
 「やきもの」です。


  一方、陶器に比べて繊細優美で透明感のある磁器の代表と言えば、伊万里・有田焼が有名
 です。数多くの釉薬や絵具を用いた鮮やかで多種多様な意匠には、かつてヨーロッパの王侯
 貴族を大いに魅了しただけあって、洗練された美しさがあります。


 そこには400年を刻む発展の歴史の中で、それぞれに
特徴を持ついくつかの様式が誕生し確立されています。

 藍の染付が素朴な味わいの 「初期伊万里様式」、海外向
けに、絢爛豪華に装飾された 「金襴手 (きんらんで)様式」、
そして、濁手 (にごしで) と呼ばれる柔らかくて暖かみのある
 乳白色の素地に、余白を生かして花鳥風月を左右非対象に描く構図が特徴の 「柿右衛門様式」
 などが知られています。


  また佐賀鍋島藩が、京都御所や徳川将軍家への献上品や城内のお道具とするため、藩窯の
 威信をかけて門外不出でデザインや技術を高めた「鍋島様式」は、食器の収納を考慮するなど、
 実用に則して作品が規格化・様式化されている点が大きな特徴です。


  こうしてみれば、ひと口に 「やきもの」 と言っても、実に様々な様式や形態があるものですが、
 例えば、ここにあげた「やきもの」を日本の建築様式になぞらえてみるのも一考です。

  一見派手さがないものの、深い味わいと手づくりのぬくもりが感じられ、生けた草花や盛り付けた
 菓子や料理を一層引き立てるなど、実用に適う「備前焼」は、まさに 「民家」 だと言えます。

  また、華やかな美しさを持ち合わせ、多彩で装飾的でありながら、どこか瀟洒で落ち着きのある
 「伊万里・有田焼」には、「数寄屋」の風情を感じます。

  そして、洗練を尽くし、様式化された美を追求した武家の「鍋島焼」は、いみじくも 「書院造り」 だと
 言えるかも知れません。


  ところで、豊かな余白が美しく以前のコラムで取り上げた「不足の美」にも通じる 「柿右衛門様式」
 は、現在も佐賀有田の地で受け継がれており、当代の酒井田柿右衛門は、第14代になるそうです。

  年に一度、日本伝統工芸展で 「柿右衛門」 を必ず目にしますが、華やかながら静謐で深い
 味わいに毎回とても魅了されています。ものづくりに携わる者としては、その美意識に少しでも
 あやかりたいものですが、残念ながらいつも同時に感じる事は、やはり 「器の違い」 です...。



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