会社案内


     「和菓子」



 ヨーロッパから明治期に入って来た洋菓子に対して、
伝統的な製法で作られた日本のお菓子を「和菓子」と
呼びます。

 その起源は古代縄文人が食べていた木の実や果物
であったと考えられており、その後、奈良・平安時代に
 輸入された唐菓子を原形にして、人工的なものが作られ始め、「菓子」と呼ばれる様に
 なったそうです。


  そして鎌倉から桃山時代にかけての茶道の普及や、室町時代からの南蛮菓子の伝来に
 影響を受けながら発展を続け、「饅頭」や「羊羹」、「団子」など、現代の私たちが目にする
 和菓子の基本形は、江戸時代の京都を中心に確立されたと言われています。

  また当時にも流行があった様で、享保から天明年間(1720〜1780)には「桜餅」や「大福」
 「きんつば」などがもてはやされ、文化・文政期(1804〜1830)には「今川焼」や「かりんとう」
 そして幕末には「最中」が庶民の味として人気を集めたそうです。

  そして文明開化を迎えると、本格的な洋菓子の普及が始まる訳ですが、ちなみに日本で
 最初に製造された洋菓子は「ビスケット」で、それは明治8年(1875)の事だったそうです。


  さて、そんな長い歴史に培われてきた和菓子は、繊細で華やかな上に日本文化の
 奥ゆかしさを持ち合わせており、時に「五感で味わう食の芸術」と評されています。

  それは「色や形の美しさ〜視覚」はもちろん、「ほのかな香り〜臭覚」に加え、食べて美味しい
 「甘み〜味覚」や「舌ざわり〜触覚」、そして煎餅などを味わう時の「パリッ!という音〜聴覚」
 などにより、一層味わいが助長されるところから実感できます。


  そこで一考、これらの機能美ともいえる感覚がとても魅力的である要因が、和菓子が「生もの」
 であり「手づくり」である事だとすれば、もしかすると伝統的な日本建築にも同様の「五感の芸術」
 を見出せるかも知れません。

  確かに私たちは、優れた木造建築での暮らしに身を置けば、端正な「姿かたちの美しさ〜視覚」
 はもちろんのこと、穏やかな「畳や木の香り〜臭覚」や、天然木ならではの「情趣あふれる木目や
 色合い〜味覚」に癒され、そして素足に触れる「木肌の優しさ〜触覚」には、温かみを感じることが
 できます。

  また静閑な庭を前にして、風に揺れる「木々の葉音や、せせらぎの水音〜聴覚」に接した時にも、
 とても心地よい安らぎを覚えるはずです。

  さらに加えて、和菓子には、四季折々の季節感、そして花鳥風月をはじめ、歴史や風土などを
 主題に、素材を生かした巧みな表現世界が展開されており、それは建築における季節の「室礼」
 (しつらい)とまさしく同様で、やはりそこにもお互いに相通ずるものが存在すると言えます。



  ところで今時、住宅建築に携わっている方なら、おそらく「菓子」という言葉の響きを耳にした時、
 すぐに頭に浮かぶのは「瑕疵」の方だと思います。こちらの「瑕疵」とは欠点や傷を意味しており、
 昨今は住宅の建築工事に際して、それを担保する保険への加入が義務付けられるなど、施工者
 にとっては何かと厳しい時代です。
 
  例えば、屋根の軒先の瓦によく付いている丸い部分は、その形状から「まんじゅう」と呼ばれて
 いますが、それがたくさん並んでいても、本物の瓦が「瓦煎餅」の様に容易に割れたり、ましてや
 雨でふやけてしまうとマズイわけで、ここでは一転、和菓子と大きく異なり、建築工事の世界では、
 「甘〜い仕事」が絶対に禁物であることも事実です...。
 

 

戻る


Copyright (c) 2007,Seki Koumuten