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     「鉄骨工事」


 鉄骨工事では規格化された工業製品である鋼材を鉄工所で
管理しながら切断・加工し、その部材を現場で組立てするので
作業は通常ミリ単位の誤差で進められます。

 朝一番にトレーラーで搬入された材料がレッカーで吊上げられ、
鳶工が細い梁の上を軽快に移動しながら順番に手際よく取付け
していきます。

 夕方になって地上にあったものがきれいに姿を消して、全ての部材が
手元の図面通りにビシッ!と納まると、作業が無事に終わった安堵感も加わり
とても爽快な心地です。


 「鉄」は私たちにとって最も身近な金属です。原子番号は26ですが、なんと地球の重量の
3分の1を構成するほど豊富に存在し元素の中では1だそうです。また、鉄を含まない金属は
「非鉄金属」とひとくくりに呼ばれる事からも別格であるのがよく解ります。


 産業革命により鉄はガラスと共に19世紀に始まる近代建築の主役となりました。
建材としての鉄の特徴は一言にすると「しなやか」と表現できます。ねばり強くて、
たとえ細く軽量でもしっかりとした強度を持合わせています。

 1889年竣工のパリのエッフェル塔や69年後の昭和33年に完成した東京タワーは、
大量の細い鉄骨部材を組上げたトラス構造です。いずれも高さが300mを超える
巨大な建築物ですが、遠目にはその姿は軽やかで繊細かつ優美です。

 各部材は現場で手作業によりリベット接合されており、エッフェル塔ではその数が250万個に
及ぶそうです。現場監督としては膨大な作業を想像して思わず笑ってしまいますが、表面を
隙間なく覆うリベットには何故か有機的なものを感じ、間近では建物が迫りくる恐竜にも見えて
逆に力強さを感じます。


 高さ634mの東京スカイツリーは2012年(平成24年)の竣工で、東京タワーからは54年後です。
建物の足元は一辺が68mの正三角形ですが、地上315mで真円となりそこから上が円錐形に
なっているそうです。

 容易には理解しがたい形の変化ですが、それにより日本建築で耳にする「そり」や「むくり」が
場所ごとに生じるため、多彩なシルエットが生み出されています。

 最近では現場溶接で長大な1枚の鋼板を造り、そのまま構造材として屋根や外壁に用いて
驚くほどの大空間を実現させた建物も建設されています。

 これら、鋼材ならではの特性を遺憾なく発揮させた建築物が数多くデザインされていて
素材としての鉄の魅力が尽きる事はない様です。


 話は変わりますが、「鉄」は私たちの体にとっても必要不可欠なものでもあります。
鉄分は赤血球の中に含まれるヘモグロビンが全身に酸素を運ぶ際に重要な役割を果たし、
体重60sの男性であれば約3gの鉄が体の中にあるそうです。

 普段、真四角の工場や倉庫建築にしか携わっていないと、ポテンシャルのある鉄骨を、
残念にもスレートや折版の単なる下地材としてしか捉えられなくなっているかも知れません。

 こうして様々に鉄の特性を捉えた優れた建築を知ると、創造の感性を少しは磨いて
光らせておく必要があるのではないかと感じ、爽快だけでは済まされない心地です。


 なるべくなら、身から錆は出ないでほしいものです。

 

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