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     「枯山水」



 京都市の北部 紫野に、室町時代を代表する日本庭園が
あります。 臨済宗の大本山、 大徳寺の塔頭寺院 大仙院
(だいせんいん) の枯山水庭園です。

 枯山水は、池や遣水などの水を用いず、石組や白砂など
により山水の風景を表現するもので、そこに観念的な世界
 が創造されています。遊楽や散策などを主とはせず、自然と静かに対峙(たいじ)する、
 瞑想や座禅にふさわしい場です。同じ京都の、あの著名な竜安寺の石庭も枯山水です。


  大仙院の庭園では、深山幽谷から流れ出た湧水が、渓谷を下り大河となり、やがて大海へ
 注ぐまでの流転を、自然石と美しい刈り込みで巧みに描き出しており、ゆるりと本堂の周囲の
 縁を廻れば、ひとつひとつの場面に様々な思索をめぐらしつつ、一連の旅路を体感する事が
 できます。

  荒々しく厳しい表情の石組は、険しく神秘的な断崖絶壁の山の峰を表し、白砂に施された
 「砂紋 (さもん)」と呼ばれる箒目(ほうきめ)は、河の流れや海のうねりなどの水景を表現して
 います。

  流れにまたがる石橋や、その中に浮かぶ船の形の船石など、様々な役石も、効果的な
 空間演出を果たしています。

  ぐるりと縁を廻り、最後に白砂の敷き詰められた南庭を前にして、軒下に腰掛けると、実際に
 穏やかな大海原を目にしている様で、旅の終わりを実感する事ができます。


  素材の特徴を生かし、自然の造形を巧みに利用して表現された庭園には、見る者を飽きさ
 せず、静謐 (せいひつ)な空間の広がりに心打たれるものがあります。


  また、庭づくりには、「気勢 (きせい)」と呼ばれるキーワードがあり、それは石や樹木の形から
 感じ取れる「勢い」とも呼べるもので、バランスを崩す事なく、その方向性を上手くコーディネート
 する事が大切であるとされています。

  古来より日本では、自然の石には神が宿るという信仰があり、永遠性の象徴でもあります。
 単なる石に魅力的な個性を感じる事は、漢字が象形だけでなく意味を持つ事や、水墨画の濃淡
 に、多彩な色彩を感じる事にとても似ている気もします。


  優れた自然石の表情を読み取る事や、それを生かして美しい庭を創造した作庭家の思いを
 感じ取る事は、まさしくその名と同じ「意思」を読み取る事とも言え、そには形式にとらわれない
 自由で豊かな発想が不可欠に思われます。


  堅固な石に対して、真逆のそんな柔軟な思考が求められるのは、何とも皮肉な話です。

  枯山水には欠かせない「石」ですが、とりわけ 「石頭」 だけは例外の様です...。

 

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