ミステリート
〜不可逆世界の探偵紳士〜
Abel
’04/05/28 発売
緻密なストーリーが魅力の推理作品
発表から一体何年が経過したんだろう・・・。
(確か最初の発表は’00年だったと思う)
待った甲斐があったと言うものです!!
前作「不確定世界の探偵紳士」を凌駕する作品に仕上がっています。
詳しくはそちらのレビューで書いていますが、前作は多少シナリオに無理がありましたが
この作品では”基本的には”無理のない内容になっていますので、
素直に作品世界に入り込めます。
”基本的には”と書いたのは「水陰」と言うキャラに「変身スキル」がある所です。
「変装」なら分かるけど「変身」って・・・(^^;
まぁ、他愛もない洒落で済ませられるレベルの問題ですので、
ちょっと苦笑するぐらいで気にはならないんですけどネ。(笑

そもそも最近の「菅野ひろゆき様&アーベル」の評判は決して良くありませんでした。
いつまでも新作を出さず、リメイクばかりでの運営。
おまけにそれらの作品の内容もお世辞にも褒められたものではない。
今回も同時発売の「不確定世界の探偵紳士〜Rebirth!」は
キャラCGとシステムが変わっただけで「Hardcore!」と全く同じ内容と、
その悲惨な内容には閉口せざるを得ません。
正直な所、大ファンである私でさえ「よく会社が持ってるナ〜・・・」と思っていました。
そんな「一体今まで何をやっていたんダ!」と言うファンの声に対する
期待通りの新作の出来栄えに私は素直に絶賛したいと思います。



さて、そんな背景の下で発売されたこの作品ですが、
今までの鬱憤を吹き飛ばすかの様な力作です。
まず登場人物の数40人以上!!
・・・と言っても「そんなにいたかいな?」と思ってしまうのですが(^^;
これはメインキャラの性格付けをハッキリさせて初期設定からして際立たせる事で、
他のサブキャラとの差別化を図り、ストーリー全体をまとめている所為です。
とは言ってもそのメインキャラだけでも10人以上。
(ストーリー展開から見てココでは13人とします)
そしてそれぞれのキャラの思惑が絡み合う重厚なストーリー・・・。
この辺りは菅野様の「お家芸」で、流石の仕上がりです。

更には・・・
菅野作品レギュラーメンバー総出演!!
と言っても「声なし」なので「十文字隼人様」はいませんが(^^;
原画、CGに「CARNELIAN女史」
シナリオはもちろん「菅野ひろゆき様」
その他のスタッフは未発表ですが、
演出、音楽なども「いつもの」メンバーなのは想像に難くなく、安定した仕上がりです。
更に何時もの事ですが、他作品に登場したキャラ(エクソダスギルティー)も
登場して他もプレイしている人の世界観を広げる役割を果たしています。
当然ですが知らなくても支障の無いような作りになっていますので、
そこは御安心下さい(^^;
・・・・・
・・・

それでは初期設定から見ていきましょう。
舞台は現代日本。主人公はイギリスで「クラスA」を誇る名探偵。
その「八十神かおる」のアシスタントだった「七尾芹奈」が日本で失踪した。
丁度「アイドラー」の顧問から「悪行双麻捜索」の依頼があった事もあり、
かおるは日本の「しあわせ探偵事務所」を訪れる事になる。
そして事件の中での「南条深雪」との出会い。
更には再会した芹奈からの決別の言葉。
彼はクラスAのプライドに賭けて、その大きな渦に挑んでゆく。
と言ったストーリーです。

言うまでも無く、「続編」である以上「前作」のコンプは
事実上の必要条件になっています。
単体でも楽しめる様な気遣いは随所に見られますが、
やはりココでは「不確定」のプレイをオススメします。
そうしないと最後のシーンでの「足元のみのCG」で感激出来ませんから・・・。
(おぉ〜っとネタバレ風味ダ!!(^^;)

と言う様に、前作をプレイした人には今更説明の必要もない設定です。
「キャラ立ち」に関しては一片の欺瞞も必要ない菅野様ですから、
この作品でも存分に魅力的なキャラに浸って下さい。
これこそが「菅野作品」の生命線ですから。(^^)

次にシナリオですが、
前述した通り、前作に見られた「ちから技」が無くなり
とても納得出来る内容になっています。
これは私の勝手な想像ですが、前作での失敗を教訓にして
散文的な内容にならない様に「各事件」を章で区切っています。
このスタイルは正に「正解」の1つだと思います。
もっとドラマティックな展開に出来るスタイルもあったと思いますが、
この素直さが却ってこの作品を引き立てていると思います。

そして相変わらず素晴らしいのは「伏線」の張り方。
この部分に関しては「EVE」以来の出来栄えではないかと思います。
実はこの作品「完結」していません。
その為、宙に浮いたままの伏線がいくつも存在します。
続編への期待を膨らませる常套手段ですが、
ココでもそれは成功していて、私は早く続編を出してくれないと
それこそ「事件」を起こしてしまいそうです。(笑
いくつもの伏線をいかに紡いで行くのか今から楽しみです。

最後にストーリー展開ですが、
この作品では「フィーナ視点」でのシナリオを語り部に据える事で、
ストーリーを展開していっていて、複雑なストーリーを纏め上げています。
個々の事件を「かおる視点」での一人称で進めていって、
インターバルで「フィーナ」を登場させて全体のストーリーを築き上げていく。
そして要所要所に現れる「第三者」の視点で伏線を張っていく。
この役割分担こそがこの作品のキーポイントです。
元々菅野様は「多人称シナリオの名手」ですが、
「EVE」や「DESIRE」で見せた「システムに組み込む」方式よりも、
より自然な形で表現しているこの作品こそが正に真骨頂だと思います。

そこに絡んでくる「ゲーム」としての楽しさ。
わざわざOHPで「ネタバレ、攻略禁止」を謳うほどの「推理モノ」としての完成度が
プレイヤーを作品の中に引きずり込みます。
前作では「電波か超能力か!?」と言うような方法でしかコンプ出来ませんでしたが、
この作品では論理的な推理や謎解きが出来るので、
更にストーリーに傾倒して行けます。
これは重要なポイントでありながら、今までの「菅野作品」で
疎かにされがちだったのでとても好印象です。
(もしかすると、今までも菅野様の脳内では「論理的」だったのかも知れませんが、
過去の作品では「EVE」がギリギリのラインであって
「不確定」はその部分は駄作でした。)

菅野様ご自身も「適度な難易度に留めた」と仰っていますが、
今まで「そこ」に気付いていなかったのでしょうか?(苦笑
(あれで適度か!?と言うつっこみはナシの方向で(^^;)


さぁ!過去の栄光に縋るのをやめた「菅野様の本気」を
みんなで楽しませてもらいましょう!!(^0^)/
「次回作」も期待していますヨ〜♪
(ボソッと)きっと「フルボイス版」出るナ・・・(ボソッと終わり)




「この世に悪がはびこる限り探偵稼業は必要なのさ」

それは人々の想いを受け入れた言葉

自らが礎となって平穏を齎す覚悟の証

誰よりも悪事を憎み

誰よりも情に熱い

そんな18歳の少年に

誰よりも「しあわせ」を・・・