新御神楽探偵団
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’03/12/26 発売
大手ブランドの実力発揮の推理ADV
不発の多かった2003年度でしたが、最後の最後に意欲作が集中しました。
これもそんな作品の中の1つです。
正直な所「コンシューマー」からの移植と聞いていたので、
多少心配していたのですが(私は根っからのコンシューマー嫌いです(^^;)
そんな不安は全く必要の無い作品でした。
前作以前を知らなくてもほぼ問題の無い作りや、新しく楽しいゲームシステムは
流石は大手ブランドだと納得しました。

しかし、アリスソフトや菅野様もそうである様に大手や古参のクリエイターの方に共通する
あくまでもゲームとして楽しめる物にしようとする姿勢には頭が下がりますm(_ _)m
私なんかは普段からシナリオ、ストーリーしか見ていないのでゲーム性は気にしていませんが、
やはりゲームと言う「参加型エンターテイメント」を探求する情熱は
本来のブランドのあり方を問うている様で、現状への警鐘なのかと思います。
私が言うのも何なんですが今のエロゲーは目的のヒロインシナリオを選別する為だけに
選択肢が出現する様になっており本来のADV(アドベンチャーゲーム)の趣旨が
全くと言って良い程生かされていない作品ばかりです。
時代と共に趣きが変わっていくのは仕方の無い事だと思いますが、
所謂昔の「骨のあるアドベンチャー」が懐かしいナとも思う訳です。
考えて考えてやっと次のシーンに進めた時の清清しい程の達成感!!
私がエロゲーにハマった理由はその「ご褒美」がHなCGだったからです(^^;

ちょっと昔話をしますから「イラネ〜ヨ!」と思う方は読み飛ばして下さい。(笑
私がエロゲーを始めた1982年頃のADVと言えば、
次の行動を自分で考えて実際にキーボードから「コマンド」を入力していました。
その際にはゲーム中の言い回しなども考慮して言葉を決定しなければならず、
例えば『カガミ サワル』ではダメで『カガミ フレル』が正解だとか
同じ物を指していても『ツクエ』ではなく『テーブル』じゃないとダメとか
今から考えると理不尽にも思える内容でした。
おまけに当時はハードディスクなんてものは存在していないので小さなメモリに
1シーンごとのデータを「カセットテープ」からその都度読み出していました。
「ジーガチャッ!ジー・・・」(頭出しをしている音)なんて音を聞きながら、
次に進めた達成感の余韻に浸っていたものです・・・。

それから程なくしてフロッピーディスクが登場する頃になると「選択肢」が定着しました。
今まで頭を抱えていた難問から解放されたかと思えば次の試練が待っています。
「コマンド総当り」「無限ループ」です。
調査する対象を調べる順番などの行動の順序が決まっていて、
それが間違っていると永遠に同じシーンから進まない・・・。
おまけに、なまじ選択肢があるとその無限の組み合わせから混乱する事に・・・。
「やってられるかぁ〜〜〜!!」
との叫びがいろんな家から聞こえたとか聞こえないとか(^^;
よく昔からのゲーマーが『PC−98版の「同級生」は革命だった』と言うのは、
どんな行動をとっても良い。つまり「行動の自由」を手に入れたからです。
まぁこの頃になると難易度も随分ヌルくなっていましたし、
現在の様な「間違った選択でもとりあえず進む」スタイルはここから生まれたので、
必ずしも良かったとばかりは言えないんですが・・・(^^;
・・・・・・・・
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・・・
と、随分脱線しましたが、そんな「革命家」のelfがこの作品で生み出したのは「推理トリガーシステム」です。
事件捜査で行う「聞き込み」で核心に触れる内容が登場した時に、
銃に見立てた「トリガー(引き金)システム」を撃つと推理が進行していくと言うものです。
銃ですから当然「装弾数」が決まっていて無駄弾は撃てません。
要は「新事実」が出現したらクリックすれば良いだけの事なんですが、
これがなかなか見逃したりするので難しく、楽しい♪
バッチリ推理が嵌まった時の達成感、爽快感は往年のADVの正しい進化形だと思わせてくれます。
勝手に主人公が推理を進めていくのではなく、ちゃんと自分がゲームを進めている実感が湧く為です。
もう少し難しくても良かったかもしれませんが、それは個人差があるので何とも言えません。
私に言えるのはこの達成感こそがADVゲームだと言う事です。

それでは順番にストーリーを見ていきます。
まず初期設定からですが、
舞台は大正ロマン溢れる頃の中国は大連。主人公は前作の事件で
「守れるはずだった人を守れなかった」事から失意にくれて大連に渡った名探偵。
・・・なのですが、実際に操作するキャラはその探偵を探しに来て事件に巻き込まれる助手の「3人娘」です。
「鹿瀬 巴」は元気で行動力のある武術の心得のある女の子
「久御山 滋乃」は華族で気位が高い清楚な娘
「桧垣 千鶴」は冷静沈着だが純情で茶目っ気のある少女
そんな3人の推理をあなたが担って主人公を探してゆくと言う設定です。

一般的に「主人公=プレイヤー」がほとんどのエロゲーでこの設定は面白いです。
ストーリーは主人公を中心に回っているのですから、
その外側からアプローチをしてゆくスタイルは正しく「推理モノ」。
事件の核心にせまってゆくにつれて全貌が見えてくるのを効果的に演出しています。
更に特殊な環境(外国)である事による面白みがふんだんに設定に取り入れられていて、
とても魅力的な舞台となっています。

それでは次にその辺りを中心にシナリオを見ていきます。
ストーリーは舞台となる大連の「日本人居留地」で展開してゆきます。
ここでは本国(日本)の目が届かない事から独自の文化や慣習があり、
更にそれを取り巻く「土地の人」との摩擦などもストーリーに深みを与えています。
こう言った内容は「時代モノ」では定石になっていますが、
この作品でもその魅力は如何なく発揮されていて私もスグに虜になりました。(笑
特に勝手の分からない「3人娘」が現地の人との会話の中で少しずつ理解を深める辺りは、
「奴隷市場」で描かれた「異文化との交流」を自然に表わしている上に、
私達プレイヤーへの分かりやすい説明にもなっています。
この様なプレイヤーを置き去りにしない丁寧な仕事こそが本来の「ユーザーライク」だと思います。

そして「聞き込み」がゲーム進行の要となっている様に、登場人物との会話は秀逸!!
相手の人となりまでが実に巧妙に伝わってきます。
フルボイスも手伝って、この作品の屋台骨の役割をきっちり果たしています。

そして最後にストーリー展開ですが、
全部で3つの事件があり、それぞれを章で区切っています。
更にその章の中を前編、後編に分類してそれぞれは3〜4の推理編で構成されています。
この様に書くととても淡々と進んでいく様な印象がありますが、
前述した通りとても丁寧なテキストと展開で、実際には息もつかせぬ内容です♪

「3人娘」が巻き込まれる「事件」は何故かどれも物証に乏しい猟奇殺人ばかり・・・(^^;
そんなに猟奇殺人が起こる街には住みたくないナと思いつつ(笑
犯人への細い糸を手繰ってゆく様に魅了される私がいました。(ヤッパリ

・・・推理モノサイコ〜〜〜っ!!ADVバンジャ〜〜〜イ!!(←壊れた

手がかりを緻密に組み立てていく所なんかゾクゾクしますぅ〜♪
ちょっと残念なのは最後の決め手のパートで必ず主人公「御神楽 時人」が絡む事ですかネ。
ストーリーの流れとしては至極当たり前なのですが、
全ての推理材料を集めたのは「3人娘」なのに、最後に推理を完成させるのは
その場にいなかった主人公なんです・・・。
それだけ「時人」が凄いと言う事の表現なのは分かるんですが、
どうせなら最後まで彼女達に解かせてあげたいかナ、なんて・・・(^^;
まぁ、そんな展開は誰も望んでないんですけど(笑

しかしこの推理パートに登場する「脇役」達の魅力的な事と言ったら・・・。
展開上、全ての「伏線」は彼らが担っているんですが、これが素晴らしい!!
彼らとのやり取りだけで私は満足です。

・・・推理モノサイコ(ゴキャッ!(←殴られた
スイマセンマジメニヤリマス・・・。
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やはりゲームをゲームとして楽しめる事はとても重要だと思います。
ストーリーが同じぐらいの魅力なら、楽しい方に軍配が上がるのは当然ですから。