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elf |
雪之丞’01/08/31 勝’02/09/27 発売 |
「男の友情」を真正面から描いた名作 |
この作品は約1年の期間を空けて発売された2部作です。 私の憶測では1作目のセールス次第で続編の製作を決定する方針だったと思われます。 その為、「あしたの雪之丞」は単独でも完結出来るシナリオですが、 2作目の「勝(まさる)」は1作目ナシではストーリーが掴めない内容になっています。 続編も単独で楽しめる内容にする作品が多い中、こう言った作りにするのは メーカーとしても冒険だと思ったかもしれません。 しかし、それに丁寧な作りで答えたelfは流石に大手ブランドの貫禄です。 私もこの作品はあくまでも「2つで1つの作品」として捉えてレビューしたいと思います。 ・ ・ ・ この作品が雑誌等で発表された時は「学園モノ」としか出ていなかった為に 「すわ、”同級生3”か!?」と物議を醸しました。 実は私も「それ」を期待していたので次第に内容が明らかになるにつれ、 購入意欲が薄れていったのを覚えています。(スタッフの皆様スイマセン!) それでも「デフォブランド」のelf作品と言う理由だけで玉砕覚悟で特攻しました。 その結果は・・・ 「やったネ!明日もホームランだ!!」 (↑古過ぎて誰も分からない(^^; 「有りそうで、少ない作品」もしくは「魅力が出しにくいので敬遠されがちなテーマ」 「過去に負った”傷”の所為で影のある主人公」 実際の所アニメやドラマではよくあるのに、ゲームでは少ない内容です。 これはゲームと言う参加型コンテンツへの感情移入を誘う為に、 多くの作品が「没個性の主人公」をあてているのが原因だと思います。 ただ、これは私的な意見ですが「没個性も1つの個性」だと思いますので、 それが感情移入を誘う理由にはならないと考えています。 それよりもこの作品の様に「確固たる世界観」にプレイヤーを引き込む方が、 建設的で確実な手法ではないかと思います。 (シナリオは大変ですけど(^^;) この作品でそれを成功に導いているのが、 恐らく最初から「2作目のED」までの構想が出来上がっていたであろう 「一貫した丁寧なシナリオ」にあると思います。 つまりこの作品は「1,2+α(フルコンプ後のおまけシナリオ)」までを 全て”しゃぶりつくさないと”完結しない、正に「ドラマ」になっています。 この様な作品を制作されたelfに最大の賞賛を送ります。 ・・・・・ ・・・ ・ さて、それでは順に見ていきましょう。 まず初期設定からですが、 舞台は現代日本。主人公は高校2年生の転校生です。 (1作目の設定です) この主人公はとある理由から元いた学校を「逃げる様に」 舞台になる学校に転校してきます。 その「とある理由」がこの作品のテーマになっている訳ですが、 主人公は一貫して「オレにかまうな!」と言う態度をとります。 それが気に入らないメインヒロインの「春日せりな」の号令で、 みんなが寄ってたかって「ムリヤリにでも(^^;」彼を 立ち直らせようとする設定になっているストーリーです。 天真爛漫なメインヒロインにお淑やかなヒロイン。 優等生でクールなヒロイン、明るく元気な先輩のヒロイン。 優しく親身になってくれる担任教師のヒロインに 主人公に一目惚れする後輩のヒロイン。 そして豪快と理知的な凸凹コンビの男友達。 正に絵に描いた様な学園ドラマの登場人物です(^^) そこにスパイスを利かせているのが「主人公の過去の傷」です。 ちなみに本編とは全く関係ありませんが、 2作目の修学旅行のシーンで登場する奈良の風景は 全て「ホンモノ」です!奈良に行けば本当に見られます。 そこで、次はシナリオを見ていきましょう。 このシナリオは終始一貫して「主人公の過去」を中心に回っていきます。 最初の方で書いた通り、一応の完結は1作目だけでも見る事が出来ますが、 この作品は「2作目のおまけシナリオ」である 「−そして、始まる物語。」の為の作品です!(←断言 全ての物語はこの為に用意された伏線です。 この結末の為だけに大作と呼んで差し支えの無いスケールの2つの作品が あると言っても過言ではありません。 1つずつのシナリオにそれぞれ納得のいく結末を用意していながらも、 (1,2作を通じて11人のヒロインのストーリーがある) その全てが霞んでしまう程の結末が用意してある・・・。 (冷静に見れば内容は容易に想像がつくんですが(^^;) これ程壮大で爽快で納得のいく「TrueEND」は他では見られません。 そんなシナリオを手がけたのは「井上 啓二様」 私はこの方の他の作品を知らないんですが、一発でファンになりました♪ そして、その能力を見事に昇華させたelfの開発体制の勝利です。 実際弱小ブランドではお金がもたなかったでしょうから・・・。 最後にストーリー展開です。 大まかには初期設定で書いた通りなのですが、 実は「勝〜あしたの雪之丞2〜」は1作目のネタバレをしないと あらすじすら書けない内容なので、書く事がありません(^^; それでも書きたい事があります。 ちょっぴりネタバレ風味ではありますが、 この作品のテーマは「加害者と被害者のその後の環境」 にあると思っています。 罪の意識から1人になる事を選んだ1作目の主人公と、 素晴らしく、理解のある家族に囲まれた2作目の主人公・・・。 このギャップこそがこのシリーズの最大のポイントだと思います。 2人の主人公の性格や言動の違いなど些細なものです。 意図して起きたものではないにしろ、 常に加害者は非難の対象になり、被害者は擁護される立場になる。 周囲がどんな反応をするかに関わらず当事者達の心情がポイントです。 この作品の発端が悪意の無い事故に起因しているので、 周囲の励ましに対して加害者は否定的になり 被害者はそれを幸福と捉える事が出来る・・・。 更にその当事者同士が「親友でありライバル」である事から 当然の様に加害者は被害者に無意識な「気後れ」を持ち、 また被害者は加害者にあからさまな「気遣い」をする。 それこそがこの作品の「テーマ」なのだと思います。 その対比が2作品の雰囲気の違いによく現れています。 正直な所、同じ「マルチエンディング」でありながら、 これだけの「TrueEND」を表現出来たこの作品は、 ある意味で私の殿堂入りの「家族計画」を超える名作ではないかとも思います。 ・・・実際「おまけシナリオ」では泣きましたし(^^; 「この作品に出会えて本当に良かった」 私の素直な気持ちです。 ・ ・ ・ 「人の幸福は人生で何度心から”ありがとう”と言えたかで決まる」 この作品で明確にはこの言葉は出てこない しかしその気持ちで溢れている 感謝の気持ちは時に言葉にならない事もある そんな不器用で愛すべき人たちに 心から 「ありがとう」 ・ ・ ・ |