螺旋回廊2
ruf

’01/12/14 発売

前作のシナリオの完成度を上げる傑作

世間一般のこの作品に対する評価は
「2番煎じ」
「緊張感が無くなった」
「やっぱりスタッフが変わると・・・(閉口)」
と言う感じであまり良い感想を聞きません。
中には「前作のアンケートの所為で、軟弱な”EDEN”になった為、
この作品のポイントだったものが台無しになった愚作」
と言う辛辣かつ的確な意見もあります。

しかし本当にそれだけでしょうか?
私にはそうは見えません。

自分でも自覚があるのですが、あまり一般的ではない
主義主張、嗜好、見解を持っている私には
この作品は前作に負けていない「傑作」に見えるのです。
(そんな見方をしてしまうので、投稿レビュー執筆時は
個人的見解は極力控えて書きます(^^;)
これから書くレビューに賛同して下さる方もいらっしゃるでしょうし、
逆に「何処に目ぇ付いとんねん!」と仰る御意見もあるでしょう。
これはあくまでも「私の視点」から見た「数ある意見の一つ」に過ぎません。
そこを忘れずにお読み下さい。



さて、まずは前作とのシナリオ比較から始めましょう。
最大の相違点は「ストーリーの視点」でしょう。
「一人称シナリオ」で展開していく所は前作と同じですが、
誰に視点をおくかが、明らかに違います。
一番目立つのが「主人公が2人いる」事です。
前作では主人公は1人だったので、感情移入が誘いやすい上に
「今、何が起こったんだ!?」と言う疑問点が多くなる為に
プレイヤーの「焦り」を効果的に引き出していたのですが、
その視点が2箇所になった所為で、客観的にストーリーを見てしまう状態になってしまって
注意力が散漫になってしまう上に、必然的に同じ事態を2方向から検証する形になる為
疑問点がより少ない「分かりやすい、素直なストーリー」になって
プレイヤーは緊張感が削がれている精神状態になります。
自覚の有無に係わらず、この作品に否定的な意見をお持ちの方は
ここが許せないんだと思います。

そして更に追い討ちをかけるのが、「ヒロイン視点のシナリオ」です。
前作では「絡とされていく感情の動き」が克明に描写されていたのに、
この作品では「状況確認」の為のシナリオになっていて、
「ヒロインの心」が今ひとつ見えない内容になっています。
これでは前に書いたポイントとの相乗効果で、
更に感情移入出来ない状態に陥るでしょう。

おまけに、ほとんどの方を興ざめさせるのが、
「EDEN」の詰めの甘さです。
前作では狡猾に主人公を追い詰めていく(様に見える)のに対して、
この作品の犯人達は「詰めの甘さ」が目に付く犯行の所為で、
最終的に主人公達に逆にやられてしまいます。
(これって「ネタバレ」ですけど、あえて表示いたします)

これでは確かに「レベルが下がった」と言う意見が大勢を占めても致し方ないでしょう。
・・・・・
・・・

・・・と、ココまでが「一般的」な見解でのレビューですが、
私の視点からはかなり違った意見になります。

確かに物語の確信をついてはいるので、全てを否定する訳にはいかないのですが、
それはあくまでも「フィクション」と言う土台の上であって
超のつく「現実主義者」の私には賛同する事が出来ないのです。
「フィクションをレビューしているのに矛盾している!」
と思う方もいらっしゃるでしょうが、
「現実を忘れたフィクションは見苦しい」と言うのが私のコンセプトなので
そこを楽しめる方の為に、私はこの作品を応援いたします!

私の判断基準の重要項目に
「感情移入出来るかどうか」がありますが、
これの対象は「キャラクター」では無く、
「ストーリー」だと言う事をまず念頭に置いて下さい。
(この点が、「ストーリーレビューアー」を自称する所以です)
この前提があるからこそ「泣きたいの〜」の項目の前置きの文章になるのです。
そんな私の感覚では、前作のシナリオにどうしても「違和感」が生じます。
その部分は「螺旋回廊」の私のレビューで「ネタバレ」として紹介していますが、
一言で言うと「バカ!何やってんだよ主人公!そこはそうじゃナイだろ!」
と言う感覚を覚える訳です。
このもどかしさを味わった方は多いと思いますし、
そこが前作の「魅力」だと仰る方もおられるでしょう。
しかし、私の見解ではそれは「ストーリー展開上の演出」であって
実際には考えられない対処方に違和感を覚えたのです。
・・・だって、冷静に見ると「前作の犯行」って「穴だらけ」でしょう?
あれだけ「犯行が実際に行われた証拠」をインターネットに公開した上に
肝心の被害者を解放してしまい、
更に「私が前作のレビューでネタバレしたポイント」が致命的です。
これだけの「証拠」「事実」「足跡」を残してしまったら、主人公がする事は一つだけです。
そうです、「この事実を持って、警察に行く」です。これで犯人は一網打尽です。
つまり、私は前作の「穴だらけの犯人グループの犯行」にこそ
もどかしさを感じた訳です。
あの展開なら主人公の元に届く「葵のポリバケツ」の中には、
「惨殺死体」が入っていてこそストーリーが完成するのです。
・・・・・
・・・

・・・え〜と、本作レビューに入るまでに何行書いたかな?(^^;
ほとんどが「前作」のレビューになっています(爆

この作品は正に「上に書いた問題点」を突いたシナリオです。
前作同様の「穴だらけの犯行」を主人公達「被害者」が
結束して「偽EDEN」(←ココ重要)を完膚なきまでに撃退するストーリーです。
警察の手を借りず、自分達の行動でそれを行うので
爽快感も満足感も2ば〜い2倍♪(^^)
私はこの作品に「螺旋回廊の正しい完成形」を見ました。
ただ、これには2つのポイントがあって、
1つは紛れも無く「前作あっての今作品」である事実です。
そんな人は少ないと思いますが、この作品だけしかプレイしていないと
「螺旋回廊の本来の魅力」は伝わっていません。
ですから、この作品を楽しむ為には前作が必要不可欠です。
そしてもう1つは「もう1つの完成形の可能性」です。
それは私が上で書いた「悲惨な結末」による「完成」です。
当然その可能性も視野に入れておかねば「螺旋回廊」に失礼です。
(・・・と、遠まわしに「完全版」の催促をしたりして(^^;)
どちらにしても、「1作目あっての続編」である事は周知の事実であって
その「ストーリーの繋がり」を楽しめるのが、
この作品の正しい続編としての価値を高めています。

と言う所で、私の「この作品のレビュー」の結論ですが、
「これだけでは平凡な作品だが、前作と合わせて初めて光り輝く作品」
もしくは
「前作を補完する意味の”おまけシナリオ”」
と言う事になりました!

・・・あれ?全然「前作に負けない」になってないじゃん!!(爆