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Littlewitch |
’04/04/23 発売 |
”音”を通じての心の交流を描いた傑作 |
唐突ですが私は「ミュージシャン」です。 その為に音楽をテーマにした作品は評価が甘くなる傾向があります。 例えばETOILEの「HANDLE WITH CARE」などが良い例で、 ゲームシステム、CG、BGMとどれも平凡な出来なのに嫌いになれないんですヨ〜(^^; どうしても自分の経験と重ねあわせて見てしまうので、 感情移入の度合いが他の作品よりも格段にUPするのが原因です。 (ちなみに上記の作品はストーリーとしてはそこそこの盛り上がりを見せますが、 あまりに突拍子も無い展開と現実離れした内容なのでオススメ出来ません(^^;) そんな私がこの作品を「お気に入り」にするのは正に予定調和と言うものですが、 それを差し引いても素晴らしい作品だと思います。 私のつたない音楽知識と共にこの作品を解説したいと思います。 ・ ・ ・ まずタイトルになっている「カルテット」等の演奏形態ですが、 知っている方も多いと思いますがこれは「四重奏」の事です。 演奏者の人数に応じて少ない方から、 「ソロ」「デュオ」「トリオ」「カルテット」「クインテット」と呼ばれます。 これは主に管弦楽での用語で、BANDには使いません。 (「トリオ」はJAZZBANDにも使いますが・・・) その中でも特に弦楽(ヴァイオリンなど)でよく使われるのが「カルテット」です。 この編成が正式な弦楽の最少編成であると共に、少ないが故 個人の技量が最も問われる演奏形態です。 ここで、あまり音楽を御存知無い方は 「あれ?「ソロ」の方が技術を問われるんじゃナイの?!」 と思われると思いますが、実はそうではありません。 当然音楽の花形の存在は「ソリスト」(ソロをとる演奏者)ですが、 音楽とは「アンサンブルの芸術」ですから周囲との”調和”が絶対条件になります。 つまり「独奏」よりも周囲との調和が求められる「少人数編成」の方が実際は難しいのです。 そして「協奏曲」を演奏する為の「オーケストラ」の方が個人の責任は重いのですが、 (↑ミスで迷惑をかける人数が多いから) 「カルテット」の方が自由度がある分技量が試されるのです。 そして音楽に携わる者として書かなければならないのが、 「音楽で一番重要なのは心の一体感である」と言う事です。 よくミュージシャンは「音で会話をする」と言う様な事を口にしますが、 これは誇大表現でもなんでもありません。 一緒に演奏している人の事は”音”を聞けば伝わってくるものなのです。 これは「その日の体調」などの単純なものだけではなく、 「この曲をどう思っているか」「演奏に不満はないか」なども 言葉にしなくても分かってしまいます。 むしろ言葉よりも多くの事が伝わります。 この感覚は実際に自分で演奏した事のある人なら 大なり小なり経験しているものです。 参考までに言っておきますと、私の「表のページ」にある、 私の参加BAND「Scenic View」の曲の中の、 「for the rising generation」「forget me not」「Salvation」などの曲で そんな感覚を特に強く感じていますので 良かったら聞いてみて下さいm(_ _)m (宣伝、宣伝っと(^^;) ・・・・・ ・・・ ・ さて、ここまで一見作品と関係無い様な前置きでしたが、 実は上記の内容を理解していないと、この作品の魅力は伝わりません。 それ程に真正面から音楽を捉えた作品なのです。 正にこの作品のテーマは 「”演奏”から言葉以上に伝わる一体感と信頼」なのです。 裏を返せば音楽に興味の無い人から見れば「凡作」の評価になる作品です。 まぁ、演出やCGなど見所満載なので音楽を抜きにしても 「良作」なのは間違いないんですが・・・。 それでは順に見ていきましょう。 まず初期設定ですが、 舞台は現代ヨーロッパ某国、主人公はマイスター見習いの青年です。 ・・・実は私最初はアンティークなCGの数々に騙されていて、 「携帯電話」が登場した時に「へっ!?」と思ってしまいました(^^; これって現代のお話なんですネ・・・(汗 それ程に雰囲気のあるCGで彩られています。 そして偶然参加した教会でのクリスマスコンサートで ヴァイオリンの演奏を評価されて有名な「マグノリア音楽院」(当然架空です(^^;) に誘われると言う設定です。 そこで出会うカルテットのメンバー。 勝気で元気いっぱいの第1ヴァイオリン いつも明るいムードメーカーのヴィオラ もの静かで控えめなチェロ そしてライバルであり良き仲間である 他のカルテットのメンバー達。 流石に音楽院と言う設定通り、皆音楽に真剣に取り組んでいて それだけでも「仲間意識」が自然と湧いてくる設定です。 そこで目指すは、優秀チームに選ばれて有名音楽祭に出演する事! 目標設定もバッチリです! 「目標は彼女と仲良くなってウ〜ハウハッ♪」 なんて、いいかげんな内容ではありません。 (いや、エロゲーの目的は全部それなんですけどネ(^^;) 次にシナリオです。 全編に亘って若者らしい「学生っぽさ」に溢れています。 私の考える「学生っぽさ」とは、そこはかとない明るさと その影に潜むまだ見ぬ将来への不安です。 これだけ多くの「学園もの」が存在しているのに、 この辺りがバランスよく表現出来ている作品は実は少ないです。 そんな実直な「青臭さ」からくる爽快感こそがこのシナリオの魅力です。 やっぱり「学園ドラマ」はこ〜でなくっちゃ♪ そして秀逸なのが絶妙の長さです。 長すぎず、短すぎず・・・ 語り過ぎず、語らなさ過ぎず・・・ 演出とCGと、なにより音楽で 「伝わる事」を信じて作品を仕上げる。 そこで気付くのが、状況説明や情景描写が全く無い事。 全てのテキストは「台詞」だけです。 これで良いんです!十分なんです! 流石はLittlewitchさん!分かっていらっしゃる!! いらない文章は徹底的に排除して演出に全てを賭ける。 そこから生まれる独特なリアリティは唯一無二の存在です。 (これでもうちょっと頻繁に新作を出してくれればねぇ〜・・・(笑) 最後にストーリー展開を見てみましょう。 まず根底にあるのが、とても贅沢でしかしとても不幸なトラウマです。 主要人物が全員見事なぐらい幼少からの問題を抱えています。 音楽院などと言う場所に通っているのですから、 大半の学生の家庭は金銭的に恵まれています。 そんな環境で育ったんですから「自分は不幸だ」などは贅沢であり、 また同時にそれが故の「期待」と言うプレッシャーから逃れられない。 出生は選べないのですから、これは不幸とも呼べるでしょう・・・。 これはどのシナリオにも共通しているのですが、 私が評価しているのは、ありがちな内容ながらちゃんと 「そのキャラならでは」の問題とそれに見合った完結を用意している所です。 う〜ん・・・だいぶネタバレ風味になってるナ〜・・・。 とにかく独特の雰囲気があなたを包む作品です。(←ゴマカスナ! そしてココまで書きませんでしたが、何と言っても注目は音楽です。 「世界ノ全テ」などでお馴染みの「細井 総司」様のこだわりが光ります。 BGMにも本物のカルテットを2組用意するなど他では考えられない内容です。 特に中盤のライバルとの「ダブルカルテット」での演奏のシーンで私は泣けました。 スゲ〜ですから、ぜひ一度ご覧下さい。 ・ ・ ・ 「言葉は人の最大の発明である」 本当にそうだろうか? 真理は突いているが、それだけとは思えない なぜなら私は音楽が好きだから 言葉以上に伝わるものを知っているから 一度触れると離れられないものだから だからこそ私は思う 「人に生まれて良かった」 ・ ・ ・ |