A casual thoughts for various kinds

 よく受ける質問や制作について日ごろ感じたことを書いてみたいと思います
 
◇主として教室での質問や活動をとおして感じたことをあれこれ書いてみます。



2019年
□IFA国際美術協会展
 今年もIFA国際美術協会展が開催され、私の教室から26点の出品がありました。
 結果として5名の受賞者を出すことができましたが、受賞者に共通点があることに注目しました。そのうち4名が着色画
 とペン画の両方を描かれていることです。つまり積極的に教室の講座や行事に参加されていること。IFA展を
 入れて 年3回の展示会がありますが、全てに出品されています。合同展は当然ですが、暮れのペン画展は
 任意参加です。
 特に今年のペン画展は5枚の作品を描かなくてはなりません。そのうちの2枚は20号サイズのペン画です。  
 出品される 方は、私がペン画を勧めた時に辞退することなくペン画を始めた経緯があるので、積極的な訳です。
 それが今回の受賞に繋がったと思います。受賞は出品することを含め、求めなくては手に入りません。待っていても
 望める訳はありませんね。
 受賞は大きな励みになり、やる気を喚起し作品の質を高めます。目標が生まれると共に自分の世界を改めて考える
 きっかけにもなるはずです。チャンスはあるのですから出品をお勧めします。

なぜ挑戦しない?
 絵を描いていられるということは本当に幸せなことです。
 中高年の方が多い私の教室では、高齢のご両親を抱えているケースが多いようです。
 介護のために休まれる方、退会される方があります。残念に思いますが、そんな事情では致し方ありません。
 教室に参加 されて絵を描かれていることってじつは、幸せなんだなぁ、と感じます。誰にとっても、自由な時間を利用し
 て教室に通うことが、普通とは言えないからです。余暇を利用して余裕がある時間を楽しみたい、と望み叶うのは贅沢な
 ことなのかもしれません。そう考えると、より充実した時間を過ごしてもらいたいと、つい考えてしまいます。
 刺激を感じてもらえるように、いろいろなメニューを考えます。もっと感性を深めてもらおうと試行錯誤します。要は面白
 がって興味を持って挑戦して欲しいからです。子供の頃のような新鮮で好奇心を持って楽しんで欲しいと思っています。
 興味を持つ以外のことに挑戦してみて欲しいのです。それが楽しみを広げたり、自分の可能性を発見したりすることに
 繋がるのですから。絵を楽しむ時間が取れること自体、本当に恵まれていることですが、自分はこれで良し、とするので
 はなく もっと能力があるのでは、と貪欲にあれこれ求めてはどうでしょうか? その点で淡泊な方が多い気がします。
 「いや、ちょっとそれは…」「いやいや、根気がないから無理」「とてもとても私なんか…」など否定的にいう方は多い。
 謙遜されているのか、遠回しに辞退されているのか知りませんが、意欲のあり無しは判断できます。
 どうせ短い人生、大海をたゆたうような人生です。おおらかに挑戦してはどうですか。小さなこだわり、プライドなんぞ
 捨てておしまいなさい。人は誰でも多くの才能を持って生まれてくる、と言います。

こだわる事の大切さ、あるいは愚かさについて
 自分のスタイルにこだわる人がいる。世間でいう「自分の世界」を大切にする人だ。良く言えば信念を持つ人だし
 悪く言えば、融通が利かない頭の固い人、となる。しかしこの2つは明快に違う。混同してはいけない。融通が利かない
 とあっては評価にも値しない。信念があることの方が大切なのだ。信念のある人は自分の世界を持っていると考えて
 良い。つまり融通が利くのだ。自分を把握しているからこそ信念に繋がっている。そんな人は自分の世界へのこだわり
 があるから、迷ったり変化を求める。外から見ればこだわるようだが、時として変化を求め外の世界に対しても柔軟
 なのだ。
 
 ある画家が言っている。「積み上げるな、積み減らせ」と。信念を持っていれば分かることだが、石頭には理解不能
 だろう。積み上げてきたことにいつまでも縛られるな。ある時、積み上げた価値にも見切りをつけ、より自由な発想で
 創作せよ、そこに誰にも添わぬ自分独自の世界が開ける、ということだ。迷った時には新たな世界が広がる時だ。
 迷わず思いつきでも取り掛かってみよう!

2018年
□ 第3回「よみがえるペン画の魅力展
 前回、第1回目のペン画展発足をお知らせしてから、雑感にはまったくお構いなしでした。
 どうにも年中個展や合同展示会、IFA国際美術協会展、ペン画展等々雑事や制作、それに教室の運営に
 追われて、とにかく突っ走るだけの生活です。その他にも急ぎの注文も描かなくてはならず、やや余裕のない毎日です。
 昨日1枚納品が終わって一服したので、今日は朝から油彩画を描いています。来年のIFA国際美術協会展に出品を
 考えている絵で50号。オランダ派の煌びやかな静物画ですが、画集に載っていたものを急に模写をしたくなり、50号で
 進行中です。過去のマイスターたちの作品には芸術のエキスが凝縮されていますので、描くことで多くのことを学ぶことが
 でき、勉強にはかかせません。自分の世界も一人よがりになっては進歩もありません。風をいれることも大切です。
 
  時々ホームページを見ているよ、と友人や思わぬ人から聞かされます。で、気まぐれに更新を目指します。
 ここ数日、整理していた本箱から見つけた古本の「美の十字架」を読んでいます。若い頃、といっても高校生ですが、
 この小説を読んでいたく刺激をうけました。 画家を目指す青年の話ですが、この本に出会って画家を人生の目標に
 したように思います。改めて読み返して自分の原点に触れた思いで、制作にも新たな励みができました。

□上達する人、しない人
 プロとして成功する条件をある人が言っていましたが、なるほどと思うところがありました。
 4つの条件があって才能、努力。これは当然として、運が強いこと、そして最後に×××であること。
 教室でも4つ目の条件は感じる点ですね。上達しない人にはこの×××さが足りないのです。納得。

 
12月は第1回ペン画協会展発足    2016年秋記   
 来週はもう師走。ペン画展がいよいよ始まります。
 じつはペン画講座を京都教室で始めたのが2009年だったと思いますが、当初からゆくゆくはペン画展をしたいと
計画していました。最初は教室展として水彩、油彩などと入り混じった形の展示で、ペン画展と名乗れる形式では
ありませんでした。従ってペン画展をしてみたい想いは、ずっと持ち越しになっていたわけです。
 講座で学んでいる生徒さんも様変わりをして、京都の発足メンバーはすっかり消えてしまい、今は2期生でしめられて
います。それでも20号で出品する教室合同展でもペン画の大作がならぶほどに頑張っていただいています。
 ペン画はどうしても小品が多いのが通例ですが、どのような絵にせよ大作に挑むのは、とても勉強になるものです。
小品では必要なかったテクニックを要するからです。構図の組立、ペンの選択、線の強弱など大作向きの判断が
問われます。ペン画も奥が深いもの。初心忘れず、継続することが大切です。
 聞いてみると、3年くらい講座に在籍された会員さんは、退会後ほとんど描かなくなるようです。考えるに、5年くらい
真剣に取り組んだキャリアを持たないと、ペン画も身につかないでしょうね。ペン画に魅せられた人は着色画には
あまり関心を示さないようです。モノトーンの世界にはそれほど独特な魅力があると思います。

 将来はペン画の公募展へと拡大してみたいと思いますが、自分の制作時間を取られるのが少し心配です。

新製品の発売
  今年の前半も展示会の準備や作品の制作に、そして教室での指導に追われる毎日でした。
  そんな中でもホルベイン画材株式会社さんのご協力で「佐藤一正セレクションバージョン18」の
 発売はとても嬉しい出来事でした。
  かねてから、市販されている絵の具セットにやや使いづらさを感じていたこともあり、吉村会長にご相談
 したところ、ぜひ作ってみましょう、と快諾をいただき、絵の具の選定にかかりました。
 透明性と価格を優先して、鮮やかで活気のある水彩画を描ける色を揃えたいと試行錯誤を繰り返しました。
 2色で混色すればできる色は排して、もっとも基本になる色17色と白で決定するのには時間がかかりました。
 最初のプランから多少変更を加えて、6月の個展前に急ぎ製品化をしていただきました。
 予想以上の反応で、個展会場に持ち込んだ見本も次々に売れてしまい、追加注文するほどでした。
 今は展示会で会員向けに売っていますが、希望が多ければ店頭で一般の方にも販売したいものです。

新年を迎えて思うこと
  1年の過ぎ去る早さを感じられる年になってきたようです。
  昨年は1月の個展から年が始まり、3回の個展、教室展、公募展出品、そして奈良でモミジスケッチの
 さいちゅうに石段で転倒して大怪我、と思い出の多い年でした。全力で生きている充実感を味わえる
 幸せな年だったことに感謝です。
  生涯で始めての救急車での搬送経験や松葉杖に頼ったことなど、本当に良い経験でした。2ヶ月経った
 今でも足は本調子とは言えず、かばった歩行のため両足とも膝の痛みがとれないまま。おかげで他人の
 不便さも理解できるようになりました。
  今年も楽しいことをあれこれ企画して頑張ろうと思っています。大阪教室が梅田に移転するきっかけに
 心機一転、初心にかえりたいものです。

▲楽しい教室ってどんなの?
  絵を楽しく描きたい、と思うのは当然でしょう。苦しくては誰も続けられません。
 しかし上達したいと強く願うとき苦しさはともないます。壁にぶちあたる、苦しいから止める。他の楽しい
 ことに興味を移す。他の芸、たとえばピアノ、バイオリンなどの比べて簡単に入れる絵画は、間口が広い
 といえます。それゆえ気軽に楽しさ味わえる分野でしょう。
  都合の良い言葉として、個性やオンリーワンと巷では言われます。
 学ばなくても描けると思う人もいますが、いかにも感情的な発想です。教室でも感情的な鑑賞ではなく
より理にかなった鑑賞を指導しますが、楽しいことを考える人には縁のない話のようです。
 上達する人、一向に変わらない人。なにが違うのか、原因はどこにあるのか考えますが結局「夢」を強く
持ち続けていられるかどうかでしょうか。そんなことを考えながら今年も教室を頑張ります。 

会報ができました。順次配布しています。

何のための野外スケッチなのか

 ― 野外スケッチを各教室ごとに年2回予定しています。
 教室に来られる動機に、旅行へ行った時、気軽に絵が描けると良いと思うから、との希望が多くあります
 つまり、現地で簡単なスケッチ、着色ができることの素晴らしさを想像されていると思われます。
 大いに夢が膨らむことでしょう。現地で実際の風景を目の前にして描いていただきたいものです。

  最近では写真を撮って、それを写すことで風景画とすることが常態化し、結局現地で活写をする技術が
 身につかないようです。木を目の前にして1本を真剣に観察して描こうとしていないから、あいまいな
  描写しかできない結果になっているのです。これからはカメラでの撮影を禁止して現場で完成させる
  意気込みの重要性を知ってもらうことが必要だと、昨今のスケッチ風景を観察して思うところです。
  カメラは便利な道具なので、どう利用するかは個人の判断しだいと言えますが、やはり適切な指導をしな
  いと「自然を体感し、自然を知る」という素晴らしい体験から遠ざかることになります。
 
  絵画を描き楽しむのだって多少の努力は要るのです。
 本当の楽しみは努力を重ねることで描けなかった世界を描ける様になった喜びです。気ままに描くことが
 楽しく描くことらしいですが、じつに底の浅い考えです。
 自然の風物を描く技術がないのなら、身につける努力をして欲しいのですが、目先の描き方を聞くだけで
 満足してしまう人が多いようです。

 良い指導と良い仲間、これを得られないなら良い絵画教室とは言えません。

□現在各教室ではペン画と着色の勉強をしています。

 作品展などをみると、固有色を塗ることにやや物足りなさを感じることがあるからです。
 もちろん赤いりんごを赤く描くことは間違ってはいませんが、絵として描くときには、色のもつ輝きと絵の
 構成を考えることも面白いやり方です。
 奈良教室で試したところ驚くほど多彩な絵ができ、合評も盛り上がりました。
 少々「生真面目な絵から遊び心のある絵」を考えてみたいと思っています。
 パレットの色を自在に使いこなせることを、合同展以降のテーマにしてみたいですね。
 
 もう1点はペンによるデッサンです。
 1本の線に集中する練習を取り入れて、物を1本の線で正確、短時間で見極めることを目的に
 これからたびたび取り入れたいと考えています。

■毎年、年の初めにはアンケートをとって、その年1年の希望を聞くことにしています。
良かれと思って考えるリキュラムですが、さまざまな希望が出るので注目しています。
できる希望もあれば、やや無理かなと思うこともありますが、可能な限り教室で早々に
実行することを心がけようと思います。
デッサンの時間を多くして欲しいとの希望が今回は眼につきました。
絵を描くほどにデッサンの大切に気づかされる点はもっともだと思います。
ただ鉛筆でそれらしく物を描くだけでは面白くないので、一工夫したデッサンを試したいと
考えています。(2015/2-19)

■今年から合評日の次回に質問日を設けることにしました。
基本的なことをあれこれ説明をしているつもりでも、意外と分からないままに受講されている場合がある
ようです。講座の中でつい多岐にわたって説明してしまうことも原因でしょうか。
特に重要なポイントは、1講座で2つ程度に集約して説明すべきだと感じています。
大切なことは資料にして配布することにしていますが、これも盛りだくさんに書くより、1枚につき1つの
テーマに絞って例文や図版を多くする方が良いようです。(2015/2-18)

教室で野外スケッチに出かけると、思い通りに描けなくて困る方を多くみかけます。どうしても普段写真
から描くことが多いせいでしょうか。自然が360°周囲を取り巻いていると、どこを描けば良いか迷うところ
でしょう。大事なことはどこの何に引かれたかをよく考えてみることです。漠然と、この辺りと言う人がいます
が、だとすれば中心のある景色に変更した方が良いでしょう。
 中心になるモチーフが明快にできないのならあまり良い絵は期待できないからです。

◇現地に行ってさあ描こうと、すぐに場所を決めて描きたいのはわかりますが、まず簡単なスケッチを描いて
みることを進めます。大きな構図を確認するためです。中心になるモチーフはもちろんですが、デッサンスケ
ールなどを利用して、左右上下をどのあたりまで画面に入れるか確認してください。
 垂直、水平、斜めの要素の効果的に構成するためにも、まず鉛筆で描いてみてください。頭で想像すること
と画面に描くことはまったく違います。描くことが最上のプラン造りですので、普段から描く癖をつけると良い
と思います。写真に撮ってあとで考えますという人がいますが、現場でしっかりとプランを立てられる眼を
身につけることは重要なことです。卓上においた花を描こうとするときに、あとで写真から描けばいいからと
写真だけ撮って花が枯れるのをほっておく人はいないでしょう。たとえうまく描けなくても対象をじっくり観察
して挑戦する気持ちは大切です。

◇たくさん描けばうまくなるのか
 私の答えは「ノー」です。物に似せて描けるようにはなりますがそれは絵とはいえません。
写真に上手に似せて描いても絵とは言えないからです。教室ではその理由を時々話しますが、上手な絵
と言われる物が、ちっとも感動を与えないことを考えてみる必要があります。写真のような絵に感動する
人は、単にその「技術」に驚いているのにすぎないのです。鑑賞するときに絵を読み解く力を養ってほしい
ものです。「上手」「きれい」「好き嫌い」で絵を鑑賞しているようでは、絵を描く人としてはもの足りません。

◇基本の大切さ
 基本を大切と思わない人もいます。好き勝手に描くことが、楽しく個性的な絵が描けると思っているので
しょう。また基本を1,2年で身につけたいと言う人もいます。基本は数冊の本にまとめてあるわけではあり
ません。画面上の効果的手法を基本ということもありますが、絵が与える心理的な効果も基本といえます。
結局、継続は力なりというべきでしょうか。私は1枚1枚絵を描くごとに、基本に照らしあわせて推敲を重ねま
す。何十年絵を描いていても、基本が頭から離れることはありません。

◇抽象画が分からないという
 何が描いてあるか認識できる絵なら、上手下手がわかりますから安心して批評ができるでしょう。
しかし線や色しかない絵は戸惑います。しかしそこにも表現の基本があります。それは多分に具象画の
基本と重なり合うところも多いのです。描かれいるものの先入観にとらわれないだけに、直接的に作家の
意図がつたわってくるのが抽象画です。抽象画から学んで具象画に生かせる点もあるのです。
   雑感