鼻の奥がカユクなるバツイチへの道

第1章「出逢い」
第1話「ねこやなぎ」



 その娘と出逢ったのは大学5年の冬

 2年前にある程度将来を約していた

 一つ年上の女性との(自分としては)大きな失恋を経験し

 寂しさ半分、やけくそ半分で参加した自然観察同好会での出逢いだった

 最初は「ああ、元気な学生さんがいるんだなー」という程度で

 特に感情の起伏はなかった

 その娘は芸術系大学の2年生であったが1浪しているということで

 年はそのとき20歳。23になったばかりの僕とは3つ違いであった。



 僕がそのときはじめて顔を出したその自然サークル「ねこやなぎ」は

 ちょうど企画展の話で持ちきりだった

 自然・環境を題材に各自がお好みの「ゲージツ作品」を作り、

 ギャラリーを借りて展覧会を開く、というものだった


 その娘は芸術系大学生であることもあり、その話題の中心的存在だった

 「アカンやん! そうじゃなしに・・・!」などと

 10才以上年の離れたオッチャンたちにも物怖じせずに

 楽しそうに生き生きと話す彼女は、

 一見してこのサークルのマスコット的存在であると知れた



 別段美人でもなく、さして可愛らしい、 という感じでもない、

 大別すれば少々派手めな外見のその娘の

 男のような大口の笑い声と(文字にすればまさに「ギャハハハハ」)

 時として示すクールな横顔のギャップが面白くてしばし見とれていた

 「えと、3太郎さん・・・やったね?」

 「ん? ああ、僕? よろしくね」

 「いまなにしてはるの?」

 「学生です。恥ずかしながら・・・(笑)」

 「あ、留年? アハハ大変やねぇ」

 ・・・僕はムカッとするよりもむしろあっけにとられていた

 コンナヤツ、ハジメテミル・・・

 だが周囲の人たちはもう慣れっこのようでその娘の言うことを

 時には聞き流したり真剣に話したり、

 まるで繁盛しているどこかのチャットルームのようだった
・・・


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