足の指の間が痒くなる心意気

2002年12月3日(火)「二つのリング」

「ご注文のご結婚指輪ができあがって参りましたので、どうぞいつでもお受け取りにいらして下さい」
百貨店の人から電話をもらったのでいそいそと出かける。

「お待たせ致しました、コチラです」
トレーに入れられて二つ並んで運ばれてきたリング。大きなリングと一回り小さなリング。わんこはことのほか嬉しそうに見える。

「では早速サイズの確認を」
…わんこにはあらかじめこう言っておいた。
「指輪は結婚式の時まではめてあげないよ。だから今日は自分ではめなさい」
それぞれがそれぞれのサイズの指輪を手に取り、左の薬指に。わんこのはするっ、ぴたっとおさまった。一方ワタクシのリング。ぎゅぎゅぎゅっ、ぴたっ。な、なんとかおさまった。が、抜けない。案の定抜けない。

「ちょっとキツイですか?」
売り場担当のおっちゃんも不安そうだ。
「サイズは間違ってないようですしねぇ…ちょっと力を抜いてみて下さい」
おっちゃんに左の薬指を委ねる。ぎゅぎゅぎゅのぎゅっ。スポッ。おお、抜けた抜けた。
「もう一度はめていただけますか? 指をコチラへ」
おっちゃんに薬指を差し出すと優しくはめてくれた。きゅきゅきゅ。な、なんだか感動する…わけもなく複雑な心持ち。おっちゃん、ワタクシを気に入ったのか、二度、三度と指輪をはめてくれる。内心、頬を赤らめる。
「う〜ん。サイズを大きくするとお風呂とか手を洗うだけでぽろっと落ちてしまうことがありますから…」
「そ、そうですか…う〜む。では、もう、このままで」

これ以上太らない誓いを立て、少し小さめの指輪を受け取った。もし式の当日指輪が指に入らなかったら…小指じゃダメだろうか? もしどうしても薬指でなければならないのだったら、その辺のストローの袋か何かでその時だけ代用する、とかでもダメなんだろうか? とにかく、これ以上太れない。「ヘンゼルとグレーテル」のお話なら、もう魔女に喰われてる。

 はめたら二度ととれない指輪。浮気よけには最適なんだろうが。

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