足の指の間が痒くなる心意気
| 2002年6月14日(金) 「小咄その5・らくだ男」 今週は小咄強化週間です…手抜きとか言うでないぞ。 一人の若くたくましい男がいた。彼は冒険家だった。 サハラ砂漠を徒歩で横断する、遠大な冒険計画を、綿密に綿密に立てた。 ありとあらゆる可能性を想定し、ラクダを連れて旅することに決めた。 やはり砂漠にはラクダだ。 食糧、水、医薬品、武器…必要と思われるもの全てをラクダに積み込み彼は旅立った。 旅はきわめて順調に見えた… しかし、男はあまりにも若く、そしてあまりにも健康だった。 砂漠での残酷なまでの孤独…彼はその重圧に徐々に耐え切れなくなっていった。 「女…女が欲しい…!」 日夜男を責め苛む妄想…性欲との戦いに、彼は日に日に疲労の度を深めていった。 そんな時、男はある一つの事実に思い当たった。 「そうだ…このラクダ…メスだった…!」 男はその日の宿営地で下半身裸になってラクダに襲い掛かった。 嫌がるラクダ! 蹴り飛ばされる男… 蹴られ、噛みつかれ、傷だらけになっても男はラクダに何度も何度も襲い掛かる。 後ろから、また前から…あるときは深夜、またあるときは日中… 来る日も来る日も、ありとあらゆる手立てを講じて男はラクダに挑み続ける。 その度にまた、蹴られ噛みつかれ…それでも男はあきらめなかった。 その執念たるや…嗚呼、冒険家、かくあるべし! そんなある日。 ラクダとの夜毎の抗争に疲れ果てた男の視界に異様、 とも思えるものが飛び込んできた。 砂漠の中で倒れている人がいる…駆け寄ってみると…それは若い女だった! 「まだ生きている!」 男は携行している医薬品を取り出し、 知っている限りの医療知識で必死の看病を続ける。 その甲斐あって…女は健康を取り戻した。 「助けていただいてありがとうございます… 父のキャラバンと一緒に旅をしていたのですが… 強盗に襲われて…わたし一人生き残ってしまったようです…」 「そうですか…それはお気の毒に…」 男は砂漠の中にあるという、女の生まれ故郷まで彼女を送り届けることにし、 しばらくはともに旅を続けることになった。 …しかしその間も男は女の目を盗んでラクダに挑みかかっていたのだった。 この旅に何かしら呪われた雰囲気をいち早く感じ取った女… しかし彼女にはどうすることも出来なかった… いよいよ明日は女の生まれ故郷の町にたどり着く、という前の晩。 男と女は焚き火を前にしばし語らっていた。 「本当に助けていただいてありがとうございました。 このお礼は何でもいたします…」 「なんでも? 本当に何でも言うことを聞くのだな?」 「…ええ。あなたは命の恩人…覚悟は出来ています」 女は美しいまつげを伏せて消え入りそうな声で、そう答えるのがやっとだった。 …男の目に異常な炎が灯った。 男は女のほうへにじり寄る。 反射的に身を固くする女。 その女の耳のそばまで口を寄せて、男は熱い吐息とともにこう言った。 「本当に…何でも言うことを聞くんだな?」 「ええ…仰せのままに…」 「じゃ、じゃぁ…じゃあ!」 「は、はい…」 「ら、ラクダの足をおさえておいてくれ!」 お後がよろしいようで… |
| 片言隻句 ラクダでも させてくれたら それでええ ラクダに拒否され 狙うはサソリ 志さま 大きなフタコブ 顔をうずめて 3太郎 |