足の指の間が痒くなる心意気

2002年1月26日(土) 「弁当魔人」

高校時代…


当時クラスに一人、とんでもない奴がいた

名前をK山という。

K山は金持ちの息子にありがちなわがままさを、

その人並みはずれた腕力と堂々たる体躯に備えつけた、いわば暴れ者だった

彼はその大柄な体に比例して食欲も桁外れなものを備えていた

2時間目の終わるころには自分の弁当をすっかり平らげており

いつも昼休みには不味いと評判の生徒食堂で臭い飯を食っていた


ある日の昼休み…

教室の片隅で声にならない叫びがあがった

「あ゛〜っ!だ、だ、だれやぁーっ」

皆そいつに視線を送る

「お、お、俺の弁当ぉぉぉぉっ!」

見るとそいつの差し出した弁当箱はすっかり空…

…いや。正確には空ではなかった。

中に残っていたのは、500円玉がひとつ。

「お前のオカン、シャレきっついのぉ」

「そやそや、きっと弁当作る間がなかったんやで」

「そ、そやけど…??」

「まあ、これで食堂で食えってことやろ」

…しかし。いつもの昼休みの教室の光景とは明らかに違う点が一つだけあった…

それは、K山が珍しく自分の弁当を教室で、しかもそ知らぬ顔して食べていたこと

勘のいい奴はこの時点でピンと来ている

目の前で弁当をかっ込んでる友と小声で会話する

「あいつやな…」

「ああ。間違いあらへん」

「どうする?」

「黙っとこう。そのほうがオモロイ」

「そうやな。イヒヒヒヒ」

「そうやろ?イヒヒヒヒヒ」


翌日も翌々日もその「弁当魔人」は出没した

謎の500円玉一つとともに。

徐々に気づく奴が増え始め弁当を鍵つきのロッカーにしまう事が、

クラス大半の登校後一番の日課になり始めたある初夏のころ。


その日の被害者はまたもクラスで一番のだらしない奴、N川だった

N川のロッカーはまさにゴミ溜めの状態であり、弁当箱の入る余地すらなかった

だからこそ、K山こと弁当魔神の格好の標的とされ続けていたのである

その日の2時間目終了後、またもK山は、N川の弁当を遠慮なしに食べ終わった

しかし!

いつものそんな情景が一変するまで、ものの5分とかからなかった

突如苦しみだし、床へ倒れこむK山!

倒れたまま激しく嘔吐を繰り返し、級友たちが取り囲みわぁわぁ言ってる間に

教師が駆けつけて来、誰が呼んだのか、あっという間に救急車で運ばれていくK山…

そこへ帰ってきたN川に疑惑の目が向けられたのは言うまでもない

「おい!まさか、お前!何食わせた!」

「いくらK山が相手でも、いくら仕返しでもやってええことと、悪いことがあるぞ!」

「え?いや。そんな…俺、何もしてへんって、ホンマやって!」

「じゃあ、なんで、あいつ!あんなことに…!」

「いや、ちょっと待って…あ、これ…昨日の弁当…」

「え?」

「いや、昨日な、『多分今日も弁当魔人にやられてるやろ』と思って先に食堂で済ましたんや」

「は?」

「K山が今日食ったのは、昨日の俺の弁当やったんや」


…幸いにも軽度の食中毒で済んだK山こと弁当魔人は

それ以来伝説のかなたへすっかり鳴りを潜めることとなったのである

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片言隻句

あなたへの あふれる愛情 弁当に

詰め込みすぎて 贅沢病
志さま

かわいく海苔で 描いてみたりする  3太郎
下の句日々ハゲシク募集中です

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