RETURN OF wooch
act 3



涙が目にしみる

少しテレビやビデオをみただけで、頭が痛くなり・・・なんて日々を続けているとなんだかもう、イライラのしっぱなしである。
あほらしいから、好きなようにすることにして、頭が痛くなったら寝る、という風に自然体(というか自堕落)で暮らすようにした。
春先の事故から初夏に季節は移ろう。突然だけど、夏といえばしっかりメイクである。汗やほこりでのメイクの崩れはちょっとダメモード。(あ〜一応コスメフリークなんでね)
しっかりメイクはやはりしっかり落とさねばいけません。ある晩いつものように私はメイク落しできっちりと洗顔をし、夜寝る前に少しvaioに向かう事にした。
しかしなんとなく目がおかしい。「もしかしたら、メイク落しが目にはいったかなあ?」と思い、目を洗い直し、目薬もさす。でも、なんとなくやっぱりかすんでいる。「ああ〜やっぱ調子悪いのかなあ?」と思いつつもやらねばならない仕事もあって、しばらく眼鏡をかけたり目薬を何回かさしたりでその晩の作業を終えた。
ベッドに入って、「このまま目が見えなくなるってことは・・・ないよね・・」と自問自答し、多少の痛みも手伝ってか眠りに落ちた

翌朝、いつものように愛ダルの散歩にでかけた。自転車で愛ダルと疾走しつつもなんとなく目がおかしい。目の前に霞がかかっている。帰り道には自転車を押してかえるほど目が見えなかった。
「ちょっと今回はただごとではないかも?」と思い、朝一番で眼科に行こうと思ったが、歩いて行くにはちょっと遠いし、でも車なんて運転できないし・・・。そう思っていると、ちょうど家に友達が用事でやってくることになり、帰りの車に乗せてもらい、眼科へ連れていってもらった。
その頃にはもう目をあけていられないほどの痛みと涙がボロボロ溢れ、サングラスをせずにはみっともなくて人前に顔をさらせない状態だった。
ようやく病院にたどり着いた。開院30分前だったが、好意で中に入れてもらった。先生はまだ出勤してないという事だったが痛みが酷くなる一方でベッドに寝かせてもらった。両の目の痛みがまるで全身の痛みのように増幅され、私は思わず痛みの為に泣いてしまった。(まあ、号泣ではないけどさ)痛さの為に泣くなんていつ依頼だろう??

ようやく先生の診察を受けた。みたなり先生は「角膜が両目とも傷だらけですよ。どうしたんですか、いったい」と呆れ顔でおっしゃった。
「こんな風になるのは、スキーをゴーグルなしで長時間するとか、電気溶接をマスクなしでやるとかそれくらいですよ。なんかやりました??」
と、そんな風に言われてもスキーも電気溶接もやってないし、ただ泣きながら「わかりません」と呟くだけだった。
そして「もしかしたら、メイク落しが目に入ったのかもしれません」そういうと、先生は明日、そのメイク落しの現物をもってくるように指示された。
とにかく角膜が傷だらけなので、目を使う事を厳禁とされた。
本来なら強制眼帯というもので目を強制的に閉じてしまうのがいいらしいのだが、両目なのでそうもいかなかった。「一両日目を完全に休養させないとその後の視力に影響がでますよ」という先生の言葉に黙って頷いた。
さて支払いも済み、家に帰ることを考えたが、誰にも連絡をとることもできなかった。
携帯電話はもっていたが、画面など見ることは出来ず、勿論ダイヤルすることもできない。電話番号なんて友達の誰一人覚えていなかったし。看護婦さんに頼んでわたしの携帯から誰かに電話してもらうことも考えたが、携帯の操作ーアドレス帖をどうやって開けるかとかの説明を考えるとイヤになったし、タクシーを呼んでもらうにも道順を伝えることの煩わしさ(景色も見えないのだから)を考えてやめた。

そして、わたしは約1キロの道をほぼ目が見えない状態で歩いて帰ることになった。歩道を頼りにうつむき薄目を明けてゆっくりゆっくり歩いていく。外気が目にあたるだけで痛くてしょうがない。気配と聴覚だけが頼りだ。(車に轢かれるかもな〜)などと思うのも気を紛らわせる術だ。本当は痛くて痛くてたまらない。うずくまったことも何回かあった。情けなさと痛さの両方で涙が次から次へと流れた。すると涙が眼球に染みて(本当は風にあたってかもしれない)痛さは針でつくようだった。

ようやく家に帰った。アイマスクをつけとりあえず横になった。ムチウチでかかっている病院でもらった痛み止めを飲みそのまま眠った。
少し寝て目が覚めると痛みだけは少し治まっていた。目隠し状態だったけど、家の中は手探りでもなんとかなった。「ガラスの仮面」の奇跡の人の練習シーンを思い出した。なんかちょっと可笑しかった

次の日、メイク落しを持って眼科に行った。成分表示をみた先生は「あなたこれ、ジブチルヒロドキシトルエンってトルエンが目に入ったら、そりゃ酷い事になるはずよ。シンナーに眼球一晩漬け込んだみたいなものよ」 といった。
「これは目に入ったら10秒以内に流水で徹底的に洗い流さなくてはいけないものよ」とも言われた。
しかしな〜洗顔料だよ〜、目に入ることは想定されてはずではないのかあ??
とりあえず、目薬がなくなるまで定期的に点眼すれば後は心配ないでしょうということだった。

このメイク落しの商品名はネアーム ビューティークレンジングオイルであります。
製造元は摂津市の(株)タイヨー パパイン洗顔などナチュラル志向のラインを出してたはずなんだけどな〜。
消費者センターに問い合わせてみたところこのシブチルヒロドキシトルエンは指定成分として表記すれば化粧品の中に使ってもよい物質扱いだそう。
ただ、それ以後メイク落しを選ぶ時は成分表示をくまなくみるようにしているけど、この成分を使っている化粧品はほとんど無かった。

この出来事で思い知った事は「誰の電話番号も覚えていなかった自分の情けなさ」である。やっぱり緊急連絡先くらい紙に書いて持ち歩いたほうがいいのかな〜。などと情けなく思った。
ともあれ目は2日くらいで治った。視力もほとんど元通りだと思う。
あ〜えらいめにあった。っていうかほんと災難続き・・・(涙)


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