RETURN OF wooch
act 1



不幸は突然にー予知の行方

 いきなり重い書き出しになるけど、今年1月末に実父が急逝した。
病気がちだったけど、命に関わるものでもなく、小康状態を保っていたので、まさに突然の事であった。
親の死というのは人生で一度か二度向き合わなければならない不幸である。
あまりの突然の事に暫くは事態がのみこめなかったし、正直、哀しいという気持ちより、目の前にどんどん押し寄せてくるセレモニーをいかに段取りつけて進めてしまうかに流されてしまっていた。
それは後から思えば遺族の哀しみを少しでも紛らわせるものであったのかもしれない。
父の急逝より半年以上過ぎたが、そのときの記憶は断片的なものしかない。
ただ、「最後のお別れ」の時に何故か「お父さん、またね・・・」といってしまったことが何故だか今でも不思議な気持ちがする。
人間が一人この世からいなくなっても当たり前のように日常は続いていく。
しかし、その人のいなくなった事の大きさよ。自分の根っこがもぎ取られたような虚しさと寒さが私を覆っていた。まだまだ頭では父がいなくなった事が理解できていない、しかし、糸のきれた凧のような気持ちが今も続くのは何故だろうか。
 今ごろこんなことをいうのもなんなんだけど、今年の正月明けから、ほぼ毎夜といっていいほど歯の抜ける夢を見つづけた。
歯の抜ける夢は一般的に凶夢とされている。(かなり前、このページに同じようなことを書いたら、歯の抜ける夢は吉夢ですよ。と教えてくれた女性もいたけど)
毎朝、目覚めると口元に手をやり、歯があることを確かめる。夢の中で歯が砂のようにぽろぽろと崩れていった感触がいつまでも残っていた
まさか、自分の父親が逝ってしまうなんて思いもせず。
父は土木技術者だった。告別式の時、一人の見知らぬ青年がわたしに声をかけてきた。
「僕は学生のアルバイト時代に貴女のお父さんの図面を見て勉強したんですよ。いつかこの人に直に教えてもらいたいと思って勉強していました。残念ながら貴女のお父さんと仕事をする機会には恵まれなかったけれど」なによりの手向けの花だった。 自分のルーツである父を亡くしながら、その実感がなかなかわかないのはある意味私なりの防衛本能だったかもしれない。これを機にわたしの運気は坂を下るように落ちていったのであった。


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