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29 日本社会は物騒か?

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数日前の新聞に「日本の年間殺人発生件数が戦後最低を記録したのに、マスメディアはなぜ大々的に報道しないのか?」といった趣旨の論説がのっていました。

犯罪白書を調べてみると、確かに殺人の件数はわずかな増減を繰り返しながらもじわじわと減り続けています。この数は欧米諸国と比べてもずいぶん少ないようです。

そのわりに、世の中が平和で安全になった気分がしないのはなぜでしょうか。

ひとつには暴力犯罪の少ない状況に日本に住む人たちが慣れていること、もうひとつは暴力に対する人々のまなざしが年々厳しく、批判的になっていること。
これらが関係しているのではないかと私は考えています。

人殺しや暴力沙汰が日常茶飯事で、常に護身に気を配らなければ暮らしていけないような国に住む人たちは、多少の個別事件にはニュースバリューを感じないでしょう。
日本に住む私たちは「人間は暴力被害にあうことなく生涯暮らすのが当然」と意識しているからこそ、暴力の理不尽さに腹をたて、報道を読みあさるのだと思います。

また、殺人や傷害が減っても性犯罪や恐喝、詐欺、窃盗などが減らなければ安心安全な国という実感は乏しいでしょう。
私たちはここまで暴力犯罪を減らしてこれたのですから、それ以外の犯罪についても十分とりくんでいけるはずだと思います。


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