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2 暴力の定義と範囲

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法律にくわしい人の話によると、刑法上で正当とされる暴力には次のような種類があるそうです。
1 正当行為(例:罪を犯した者を刑務所に監禁する。)
2 正当防衛(例:強盗に対して反撃する。)
3 緊急避難(例:道路に飛び出してきた子供をよけるため車を脇の商店に突っ込ませる。商店大破。)

逆に言うと、上記の三つにあてはまらない暴力はすべて違法ということになります。
何の落ち度もない人に対して暴力をふるうことや、自分の正当性を主張するために殴り合いや決闘をすることはよくない。そう考える人はまあ多数派でしょう。

では、法律で許される暴力には何の問題もないのでしょうか。

「緊急避難」では人の生命や身体そのものでなく、物(財産)の損壊も暴力に数えています。

「正当行為」では、ある人の行動の自由を制限することも暴力の一種ではあるけれど、被害者をださない増やさないためにはやむを得ないと考えるわけです。そしてこのカテゴリーには「死刑」も含まれます。単なる行動制限でなく、犯罪者の生命を奪ってしまうという暴力行為にも正当性はある、と法律は言うわけです。

「正当防衛」では、自分が暴力をふるわれた時、ふるわれそうな時に暴力で反撃するのはやむなし、と考えます。これもまた、どのあたりまでが「やむを得ない範囲」なのかという疑問が残ります。たとえば、包丁を振り回して暴れている人を部屋に閉じ込めてドアを押さえるところまではしかたない。けれど、バットで殴って気絶させるのはどうか。包丁を奪って刺しかえすのはかまわないのか。

これからの議論のなかで、私はなるべく狭義の暴力、つまり、「人間が人間に対して物理的な力を行使することで相手の身体や精神に損害を与える行為」について話していきたいと思っています。
暴力を定義に解釈すると、物を壊すこと、行動の自由を奪うこと、性暴力、言葉の暴力、行為の強要などいろいろな要素が入ってくると思うのですが、これらを追求しだすと人によって線引きがまちまちで、定義だけでも収集がつかなくなってしまうと思うからです。

そういうわけで、まずは誰が考えても暴力でしょう、と思われる行為の正当性や結果について先に考えたいと思っています。

ですから、法律で許される範囲の暴力であっても、行動制限を超えた「正当行為」や「正当防衛」の内容についてもその問題点を考えていきたいと思います。

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