の管理人。大のプロレスのファンでもあり、レスラーフィギュアの収集をするにまで至っている。最近では同サイトでワールドカップリポートを始める予定で、その動向が注目される。
佐伯屋主人・丸木音二(以下、主人)
以前、組み合わせ抽選の時に、私的に各グループの順位予想は一度やったわけですが、今となっては見解も変わっていることでしょうし、もう一度、あらためてお互い順位予想し直そうというのが、この対談シリーズの趣旨です。
お互い、まず順位予想を提示することから始めましょう。
私は、1・フランス、2・ウルグアイ、3・デンマーク、4・セネガルです。
らく
うん、俺も同じ。1・フランス、2・ウルグアイ、3・デンマーク、4・セネガル。フランスの1位通過は変わらないけど、釜山で本大会の抽選があった時はセネガルを2位に推してたね。でも今となっては、セネガルはちょっと信用できない。やっぱり国際経験の乏しさがマイナスになると思う。
主人
はいはい。国際経験というのをもっと厳密に言うとワールドカップ出場経験の無さでしょう。間違いなくセネガルは今や、カメルーンとも肩を並べるアフリカのサッカー強国の一つで、僕も日本と対戦したときの強さを観て、2位に推していたような気がするのですが、ワールドカップ独特のムードを味わっているか味わっていないかは大きな違いですよね。それでも、初戦で勝利できれば勢いに乗り旋風を起こすことも考えられましたが・・・。
らく
セネガルは、いきなり開幕戦それもディフェンディング・チャンピオンのフランスとの第一戦だ。タレントの質、システムの完成度から言ってもフランスと比べてはコケル可能性は高い。それにW杯初出場のプレッシャーに加え、セネガルの主力は若手が多い。エースのディウフが21歳、そのパートナーとしてお馴染みのアンリ・カマラが24歳、ボランチを務めるパブ・サールも24歳・・・。
セネガル予想布陣:4−4−2
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H・カマラ ディウフ
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ファティガ S・エンディアエ
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P・サール ディアオ
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ダフ コリ
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ディアッタ シセ
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シルバ
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主人
つまり、一度負けると不調のどん底に陥る可能性があるということですね。イタリア、アルゼンチンクラスの強豪でなくとも、出場経験が豊富なチームなら、初戦のフランスにたとえ負けたとしても、デンマークやウルグアイに勝てばいいじゃないかという気分転換ができるだろうけど、それもあまり期待できない。
らく
ちょうど、98年初出場した日本がアルゼンチンとの初戦で出鼻をくじかれ、以降はクロアチア、更には格下と言われていたジャマイカにも敗北してしまったのと同様のことが起きるんじゃないかな。
それから、アフリカ勢にありがちな精神力の弱さを克服できるだろうか。
主人
コンフェデレーションズカップの時に、優勝候補と目されていたカメルーンが日本にあっさりボロ負けしましたからね。あの時のカメルーンは、協会と選手間で監督解任を巡るゴタゴタがあったようです。それ以外にも以前ナイジェリアでは監督や選手の人選に政治家が介入するといった事態もありました。アフリカ勢の場合、選手が試合に専念できない環境が足枷になっているのも確かですが、選手達も公私を区別する術を身につけないといけない。あれだけ御家騒動が毎回のように起こるのだから、それは当然起こるものとして馴れてほしい気もします。ただセネガルという国自体はカメルーンやナイジェリアと比べて、政情は安定しています。セネガルがアウリカで躍進できたのも、そこの部分が大きいですね。
らく
そのセネガルと初戦で対戦するフランスはやっぱり強い。攻撃陣は、世界最高のゲームメーカー、ジダンを中心に空中戦の強さと卓越した決定力を持つ1トップのトレゼゲ、左にはスピードを生かした抜群の突破力を持つアンリとタレントが豊富。高さ、強さ、速さ、正確さを兼ね備えた最高峰の布陣だ。ベンチには、90年代後半のフランスをエースとして支えてきたジョルカエフや、ジダンの親友デュガリ-が控えいる。
ピレスが怪我(右膝十字靱帯断裂)でW杯には出れず、デサイーもアキレス腱の痛みを抱えているというように主力に故障者がいることは不安だけど、ピレスの穴はヴィルトールが埋め、デサイーのコンディションが整わなければテュラムをユベントスのように本来のセンターバックで起用すれば何とかなる。そしてテュラムの抜けた右サイドバックには、サニョル、またはカランブーを使えばいい。選手層の厚さは頼もしいよ。フランスの1位通過は確実じゃないかな。
フランス予想布陣:4−2−3−1
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トレゼゲ
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アンリ ジダン ヴィルトール
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プティ ビエイラ
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リザラズ テュラム
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デサイー ルバフ
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バルテス |
主人
そうですね。フランスは各ポジションにワールドクラスの選手を揃えている上に、98フランス大会で優勝したジャッケ前監督の遺産を引き継ぎ、ルメール現体制4年間でチームワークにおいても高度に完成された集団ですよ。
ただ、ピレスの負傷は痛い気もします。確かにスピードや得点力においてはアンリやヴィルトールを代わりに起用することで補えるけど、ピレスの特徴はそれだけでなく、ウイング、ボランチ、トップ下をこなせるユーティリティー(万能)さを持ち、ジダン以外でフランスの中盤に創造性を与え、攻撃に変化をつけられる貴重な選手ということです。ジダンは必ず厳しいマークに合うだけに、フランスにとって非常に惜しい欠場ですね。それでも予選リーグは順当に行けばフランスの1位は堅い。
らく
ルバフ、シルベストル、クリスタンバルなどデサイーのパートナーとなる、もう1人のセンターバックが不安視されているけど、ビエイラとプティのボランチコンビによるプレスがかかっている状態なら、それほど欠点にはならないと思う。
そんな完成されたフランスに対して他のチームがどのように対峙するかが、このグループの注目点だけど、隙があるとすれば、フランスは決勝トーナメントをにらんだ戦い方を最初からしてくると考えられることかな。アルゼンチン、イタリアなど最初から優勝を狙っているチームは決勝トーナメントにコンディションのピークを持ってくるからね。
主人
はいはい。それでも、2000年のハッサン2世杯の手抜きのフランスに日本はドローにされましたから。もしフランスに一泡吹かせようと思えば、正攻法ではなくフランス人の度肝を抜くような意外性でしかできないと思うんですね。
その点から考えていくと、まずデンマークは外れると思う。確かに全体的に長身でフィジカルコンタクトが強く、ヨーロッパのチームらしく組織的で、なおかつノルウェーやスウェーデンといった他の北欧諸国と比べてテクニシャンを多く輩出しているし、攻撃にはロンメダール、ヨルゲンセン、グロンキア、トマソン、サンドなど好選手が揃っています。でも、それらの選手の折角の個性はフランスの選手の個性によって相殺されてしまう懸念があるんですよ。例えばロンメダール、ヨルゲンセン、グロンキアらは足が速くて、テクニックがある典型的ウインガーだけど、対面するサイドバックのテュラムやリザラズも走力があり、どんな攻めにも対応できる柔軟性を持っている。センターFWのサンドはパワーに特徴があるストライカーだ。しかしその彼をマークするデサイーもフィジカルコンタクトの強さは圧倒的なんですよ。
デンマーク予想布陣:4−2−3−1
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サンド
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ヨルゲンセン トマソン ロンメダール
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グラベセン テフティング
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ハインツェ ヘルベグ
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ヘンリクセン ラウルセン
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セーレンセン
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らく
デンマークの攻撃陣の能力は高いけど、フランス守備陣の能力も同様もしくはそれ以上に高いという訳だね。
主人
ええ。フランスが相手でなければ期待できるんです。まあフランスにとって怖いのは彼らよりもトマソンの方だと思う。トマソンは特殊なFWで、最前線で身体を張ってポストプレーはしないけど、下がり目の位置からスタートして、センターFWのポストプレーに反応してリターンを受けてシュートとか、センターFWを囮に使って前線の空いたスペースへ突進したりといったプレーは日本の小野が所属するフェイエノールトでもお馴染みですね。フランスのセンターバック、デサイーやルバフは共にスピードへの対応に難があるだけに捉えにくい選手でしょう。ただし彼の能力を生かすには好パスが必要だけど、フランスの強力なプレスをかいくぐってパスを配給するのは非常に難しいと思いますよ。
らく
意外性なら、セネガルはどうだろう。黒人選手の運動能力はホントびっくりするよ。あの中田英がアトランタ五輪でナイジェリアと対戦してサッカー観が変わったと言うぐらいショックを受けたみたいだし。初出場、初戦でフランス、しかも開幕戦でなければもっと良かったのだが。
主人
でも、フランスにとってセネガルがアフリカのチームだから意外性を感じるということは無いと思いますね。ディウフはランス、アンリ・カマラはスダン、彼ら前線に好パスを配球するプレーメーカーのファティガはオーゼール、守備の要であるアリウ・シセはモンペリエというようにセネガルの大半の選手がフランスリーグに所属しています。そして監督はフランス人のブルーノ・メツです。つまりセネガルはいわばフランスに育てられたチームなんですね。セネガルのフランス流組織サッカーはアフリカを席巻したけど、裏を返せばフランス人にとっては大変見慣れているサッカーなのです。90年W杯イタリア大会開幕戦でなぜアルゼンチンがカメルーンに負けたかと言えば、事前にカメルーンについての情報が何も無く、いざ試合で驚異的な運動能力を見せつけられ、未知のサッカーに戸惑ったからですが、今のセネガルにフランスを戸惑わせる要素は無いですよ。いくら運動能力が高いと言ってもフランスにだってアフリカ系の黒人選手は多いのだから、さしたるアドバンテージにもならない。
らく
なるほど。言われてみれば、セネガルの主力は、みんなフランスでプレーしてるね。データは、完璧にフランスに入っちゃってるわけだ。となると、フランスに傷をつける可能性があるのはウルグアイか。32枚目の切符をかけたオーストラリアとのプレーオフが印象的なチームだったよね。カリーニ、モンテーロ、レコバ、ギグーなどセリエAのビッグチームに在籍する実力派の選手を揃えているし、センターラインがしっかりしていて守備が堅い。攻撃陣は手薄と言われるが、レコバが変幻自在のドリブルで相手ディフェンスを混乱させ、アブレウやサラジェタなど高さに強い選手もいる。また怪我をしながらプレーオフに出場したダリオ・シルバというファイト溢れるアタッカーもいる。フリーキックはレコバの強烈なシュート、また芸術とまで言われるマガジャネスもいる。相手キーパーはどっちが蹴るか困惑するだろうね。
ウルグアイ予想布陣:3−4−1−2
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マガジャネス シルバ
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レコバ
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ギグー タイス
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ガルシア デ・ロス・サントス
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ロドリゲス レンボ
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モンテーロ
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カリーニ
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主人
仰有る通りです。やはり、このチームのアドバンテージはたった一人で完成された組織ディフェンスをもズタズタにする技術を持ったレコバという選手がいることですよ。おそらくウルグアイ−フランス戦は、フランスの猛攻によって守備ラインは下げられて、3−5−2が5バック状態になり、ボールは支配され、サンドバック同然になるでしょうね。たとえジダンに、南米予選でブラジルのリバウドをマンマークして完封した長身ボランチ、デ・ロス・サントスをぶつけたとしても焼け石に水、やらないよりはマシという程度の効果だと思いますが、それでも、たとえ89分試合から消えた状態でもレコバが1回でもボールを持って前を向いたらフランスと言えども怖いと思いますね。
らく
しかもウルグアイ代表では自由を与えられている。所属チームのインテル・ミラノではクーペル監督の組織戦術に縛られて、左サイドに張っていたり守備にも参加しなければならないけど、ウルグアイ代表のレコバは、彼本来の本能の赴くままのプレーをしてもいい。
主人
でも、よくよく考えれば、フランスとはまともに戦わない方が得策なのかもしれませんよ。フランス戦で全精力を使うより、最初からグループAの2位を狙って、フランス以外との試合で勝ち点を拾うことを考えた方がいい気がする。先頭で私はウルグアイが2位と書いたけど、初戦のデンマーク−ウルグアイの勝者が2位に大きく近付くと思いますね。
〈了〉