広い道路はなんとか車が通れますが、狭いところは倒壊した建物が道を塞いでいて降りて調査しなければなりません。
古い日本瓦の家屋はその重さに耐えきれなくて真下に潰れています。屋根瓦の上を歩き回って、大きな声で閉じこめられていないかどうか反応を求めます。幹線道路の国道176号では、割としっかりした建物が道路へ大きく倒れ込んで道を完全に塞いでいます。神社の大鳥居が地面に落ちています。安産の神様である中山寺に入ると、参詣者の休憩所が潰れています。神社の職員が殺気立っているのか、我々の姿を見て「勝手に入ってくるな!」と怒鳴り込んできました。
惨状を見物に来たと勘違いしたのでしょう。こんな状況ですから、こちらも言い返すわけにもいかず、仕事の内容を説明して納得してもらいました。
途中で、足だけが毛布からはみ出た遺体が担架に乗せられていました。自宅は全壊でした。
夕方まで市内の被災状況を調査して回り、夕方からは遺体の仮安置所になっている体育館へ遺体に掛けるシーツと献花を持っていくように指示されました。
畳が敷かれている体育館には、既に多くの遺体が安置されていて、その一つ一つの遺体を囲んで遺族がじっとうつむいています。
沈鬱な雰囲気が漂う中、持参した花を遺体の上に置いていくのですが、子供なのでしょう、一際小さい遺体もあ
りました。その中でも落涙を禁じ得なかったのは、許嫁だったのでしょうか、女性の遺骸の手をじっと握っている若い男性がおりました。
今でもその時の情景は鮮明に覚えています。
職場に戻って、11時半にやっと解放され、またバイクにまたがって寒風の深夜を家路につきました。
まだ続く…
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