貴金属の中で最高位に君臨する「貴金属の王様」であるプラチナは、科学的な歴史の中では比較的新しく登場した金属です。 融点が高く、溶解したり作業するには、酸素炎を必要とします。 紀元前には既にプラチナが使われていた事を証明する出土品が、パリのルーブル美術館に展示されている『テーベの小箱』と呼ばれる化粧ケースです。 純度の高いプラチナの破片が、古代エジプト文明の第25王朝(紀元前720〜656年)に、既に使われていたのです。 紀元前700年 古代エジプトや約1000年前のアンデス文明では、プラチナを使ったジュエリーや工芸品が作られていました。 加工するには非常に高い温度を要するので、1920年以前ではプラチナ魂を石のように指輪やペンダントなどにセットして使われていたというのが殆どでした。 その一方、紀元前後から南アメリカではインディオ達が高度な精錬・治金技術で純度80%以上のプラチナの指輪やペンダントを作っていたといいます。 プラチナが一般的に宝飾品として加工されてきたのはそれ以降になります。 どちらにしても、当時はプラチナと知りながら作っていたのかは定かではありませんが、最高権力者の貴重品であった事というのは間違いなく想像できます。 1735年、南米コロンビアのピント川でスペイン人の海軍将校が白い金属を発見しました。 それを「銀」というスペイン語のプラタ(plata)から、「プラチナ・デル・ピント」と名付け、現在のプラチナの語源となっています。 こうしてプラチナは南米から海を渡ってヨーロッパに伝わるようになりました。 古代エジプトでその一端はうかがわせてはいたものの、最高位の貴金属として本領を発揮するようになったのは18世紀半ば以降の事でした。 19世紀になると、その謎に満ちた金属を初めてジュエリーとしてメジャーにさせた人こそが3代目カルティエ、ルイ・カルティエでした。 彼は、精錬も加工も他の金属と比べると非常に難易度の高いプラチナのこれからの可能性を逸早く見抜いたのでした。 高温に耐え、腐食もせず常に変らないプラチナの白い高貴な輝きはヨーロッパの王族達の心を次々と魅了していったのでした。 アールヌーボー全盛期には、刺繍のレースのような軽やかさを取り入れたジュエリーがプラチナを使う事により可能になりました。 日本にプラチナが伝わったのは明治時代の事です。 この時代、黄金色に輝く金よりも白色に輝く銀色が好みであった日本人は、 同じ銀色に輝きしかも銀のように硫化(変色)せずいつまでも輝きを損なわないプラチナの登場に心奪われたそうです。 そうして人々を魅了し続けながら最高の貴金属として、現在の日本に浸透していき今や世界的なプラチナ消費国の1つとなったのでした。 高級な宝石ジュエリーには、必ずと言って良いほどプラチナ台で作られています。 それは、プラチナという金属自体が持つ粘り強さというのが大きな特徴で、小さな爪でも石をしっかりと支える事ができるからなのです。 また、白に輝く色は、どんな色の宝石とも相性がバッチリ! 金属と宝石との色合いが互いに競い合う事なく、それどころか宝石自体を魅力的に引き立ててくれるのです。 特にダイアモンドとの相性は、抜群です。 プラチナの白さはダイアモンドの輝きを増幅させ色石をより鮮やかに見せるという効果があるのです。 6本の繊細な爪が宝石を支える、かの有名な「ティファニー・セッティング」もプラチナの安定感・強さとしなやかさがあってこそ誕生したものです。 プラチナは、可塑性に優れ、展延性に富み、膨張率が小さく薬品に強いのが特徴です。 貴金属の分野に限らず、同じ貴金属の金や銀をしのぐ優れた特徴が物理的に備わっているのです。 日本ではプラチナの4品位性といい、4種類のプラチナ合金があります。 これらは銀と同じく千分率で品位を表します。 1000、950、900、850、の4種類です。 プラチナ以外の割金には、銀およびパラジウムで割ります。 欧米ではパラジウムではなく、主に銅、ルテニウム、コバルト、イリジウムなどを割り金としています。 プラチナの品位は、世界市場では Pt950以上のものが一般とされています。 日本では Pt850までが認められています。 (刻印は、Pt 又は Pmと表示されます。) プラチナの全産出量の約70%が、南アフリカ共和国です。 残りの30%は、ロシア、カナダ、アメリカなどで産出されているだけのとても稀少な貴金属です。 1年間の供給量は、金の25分の1にも満たない量です。 プラチナが原石より取り出される製錬、地金になる製錬の工程にかかる期間は 約8週間かかります。 またジュエリーになるまでの加工の工程でも、1度に鋳造される量が限られたり、硬度が高いなどの為に研磨にも時間がかかります。 そうしてでき上がったプラチナジュエリーには本物感があふれ、これぞ、「キング・オブ・ジュエリー」として輝き続け人々を魅了し続けるのです。
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参考資料
日本ヴォーグ社 宝石の写真図鑑 冷たいジュエリ
八坂書房 宝石ことば
双葉社 宝石の常識
講談社 宝石宝飾事典
読売新聞社 宝石
DeAGOSTINI TREASURE STONE
成美堂出版 最新シルバーアクセカタログ1200
美土理書房 宝石の気能
創元社 彫金教室
NTT出版 華麗なる宝石物語
ムーンフェイス・ローズマリー