|
とっぴんからりん
長閑で退屈な午後。
空は晴れ渡り、血盟城の回廊はうららかな光に満ち溢れている。
鳥たちは楽しげに囀り、まるでこの国の平和を謳歌しているようだ。
ほらまた一羽、大きな鳥が頭上を通り過ぎていく。
エンギワルーーーー
その鳴き声から『エンギワル鳥』と呼ばれ、国の天然記念物でもある正式名は極楽鳥だ。
この国の空に、吉兆の証であるその姿を頻繁に見掛けるようになったのは、我が主である正義感に溢れた麗しい双黒の少年が魔王の座についてからだ。
誇らしい想いを胸に、大空を優雅に舞うかのように飛ぶ極彩色の影を見上げると、ばさりと翼を羽ばたかせながら、もう一度大きな声で鳴いて西の森へと飛び去って行った。
ふわり、ふわり、と目の前を揺れながら落ちてくる青い羽根。
無意識に手を伸ばして捕まえると、サファイアブルーの大きな羽根は、光を受けてしっとりと輝いていた。
色は違えど、その濡れたような艶やかさは主の黒髪を思い出させる。
彼の好きな青い色の羽根。
先を削って羽根ペンに加工してみようか。
天然記念物の羽根だけれど、この国の王が使用するなら問題はない。
「喜んでくれるかな……」
指先でくるくるとそれを弄びながら、俺は止めていた足を再び動かし始めた。
***
しばらく当てもなく回廊を歩いていると、前から籐籠を抱えた侍女が一人歩いてきた。
彼女の手にしている籠の中には、ふわりとした白い布とその上に乗った数輪の白い花。
運ぶのを手伝うほど重い物ではないかと、俺の為に回廊の端に寄り、すっと頭を下げてくれる彼女に軽く笑みを返して通り過ぎる。
しかし、少し歩みを進めた所で、控えめな声に背後から呼びかけられた。
「あ、あの……、コ、コンラート閣下。」
躊躇と緊張を多分に含んだその声に振り返ると、彼女は籠を両腕で強く握り、硬い表情でこちらを見つめていた。
彼女が少しでも和らぐように、俺はできるだけ穏やかな表情で視線を合わせ、彼女の言葉の先を促した。
「と、突然お呼び止めして申し訳ございません!」
そう言うと、彼女は勢い良く頭を下げる。
「特に急ぎの仕事がある訳でもないから、気にしなくていいよ。」
「はい、ありがとうございます。」
俺の声に顔を上げた彼女だが、未だその声には硬さが残ったままだ。
「それで、あ、あの…、大変失礼かと存じますが、その…、閣下が今、お手にしていらっしゃるその羽根なのですが……?」
「ああ、これ?」
俺が摘んでいた青い羽根をくるりと指先で回すと、彼女は「それです」と大きく頷いた。
「これは、エンギワル鳥の羽根、かな。」
俺の言葉に、彼女はふっと嬉しそうな笑顔を浮かべたが、すぐにまたその表情を躊躇いを含んだものに変えた。
顔も知っているし、何度か言葉を交わした事もある侍女ではあるが、繕い物や洗濯などを担当する彼女の方から俺に声を掛けてきた事は今までに一度もない。
そんな控えめな彼女が、かなりの勇気を振り絞ってわざわざ俺を呼び止めたのだから、余程伝えたい事があるのだろう。
戸惑いになかなか話し出せない彼女に、俺は先を促すように問いかけた。
「空から落ちてきた羽根を、たまたま手にしていただけなんだけど、ひょっとして君の用件は、この羽根に関係しているのかな?」
「はい。あの、実は…、明日、私の姉の結婚式なんです。」
「それはおめでとう。」
「あっ、ありがとうございます!」
祝いの言葉に、彼女は軽くスカートの裾を持ち上げて腰を折り、ぱあっと本来の明るい笑みを浮かべて礼の言葉を口にした。
その視線は、自然と籠の中へと向う。
清楚なレースで縁取られた白い布の塊。
それを優しい仕草で撫でる彼女の様子に、その中身の正体を知った。
「そうか、じゃあ、この籠の中はお姉さんの花嫁衣装なんだね?」
「はい!母が残してくれていた物や、友達から借りた物なんかで済ますって姉は言っていたのですが、衣装だけは、私が新しい物を作ってあげたいって思って作りました。早くに母を亡くしたので、姉がいつも自分を犠牲にして、私や弟の為に一生懸命働いてくれてたんです。だから、一針一針、心を込めて縫いました。姉にはどうしても幸せになって欲しくて…。」
そう言って、彼女は花嫁衣裳の入った籠を大事そうに抱きしめた。
一連の話の流れに、彼女が戸惑いながらも勇気を振り絞って話しかけてきた理由を察した俺は、指先で羽根をまたくるりと回した。
彼女の姉が彼女と同じ青い瞳なら、サファイアブルーのこの羽根の輝きは、花嫁姿に良く映えるだろう。
「俺からも、君のお姉さんへささやかな贈り物をしてもいいかな?」
「え?あの……」
「これを、君のお姉さんへ。」
青い羽根を彼女の前に差し出した俺に、彼女は少し震える両手で口を覆いながら涙を浮かべる。
「そ、そんな……」
「迷惑かな?」
「いいえ!迷惑だなんて、とんでもないです!お声を掛けさせて頂いたのも、その羽根を譲って頂きたかったからで……。でも、そんな貴重な物を、私なんかが頂戴してもよろしいのですか?」
「もちろん。エンギワル鳥は幸せの鳥だからね。」
「あ、ありがとうございます!」
サファイアブルーの羽根を両手で大事そうに受け取り、彼女は少し涙を滲ませた瞳で嬉しそうに笑った。
「昔、俺が訪れた国では、『幸せの四つのおまじない』って言うものがあって、その内の一つに『何か青いもの』を花嫁が結婚式の日に身に着けていくと、必ず幸せなれると詠い伝えられていた。だから、君のお姉さんも、きっと幸せになれるよ。明日、花嫁の持つ花束の中に、この羽根を一緒に入れてあげると良い。」
「はい、ありがとうございます!」
青い羽根を手に、何度も何度も頭を下げる侍女に頷きを返し、俺は止めていた足をまた動かし始めた。
しかし、すぐに彼女が追いかけてきて、俺に小さな花束を差し出す。
「閣下、これ…、姉の花束に入れようと思って摘んできた花なんですが、私のお礼の気持ちとして、少しですが受け取って頂けないでしょうか?」
白く可憐な花は、清純な花嫁を思わせる。
「でも、良いのかい?」
「はい、沢山摘んできたので。ご迷惑かも知れませんが…」
良く見ると、先程まで彼女のシャツの襟元を飾っていた赤いリボンで、小さく纏まられている花束。
わざわざ俺に渡す為に花束にしてくれたのだろう。
「いや、迷惑なんかじゃないよ。ありがとう。」
彼女の気持ちを酌んで素直に花束を受け取り礼を言うと、彼女は本当に嬉しそうな笑顔で俺に深く頭を下げ、置き去りにしてきてしまっていた大事な籠の元へとパタパタと足早に駆けて行った。
その後姿を見送り、小さな花束に顔を近づける。
「花束を渡したら、俺は女の子じゃないんだからって怒られてしまいそうだな…」
ふわりと鼻腔を擽る甘い香り。
青い羽根ペンは作れなくなってしまったけれど、花束に照れて顔を真っ赤にする主の姿が浮かび、俺の口元は知らずと緩やかな弧を描いていた。
***
俺には少々不似合いな可愛い花束を手に、回廊を歩く。
するとカツカツと足早な軍靴の音が響き、柱の角からヴォルフラムが飛び出してきた。
「おっと…」
「うぉわあぁ!」
気配を察知して身を翻した俺に反して、俯きがちに何やらブツブツと口の中で呟いていた弟は、俺の存在に全く気が付いていなかった様で、突然現れた存在に慌てて大きく仰け反り体勢を崩した。
その勢いで、彼が手にしていた小さな籠が宙を舞う。
俺は咄嗟に手を伸ばしてそれを捕まえ、同時に開いた片手で後ろに倒れそうな弟の体を支えた。
驚きに見開かれた碧の瞳を覗き込む。
「大丈夫か、ヴォルフ?」
「だ、大丈夫に決まっているだろう!」
言うと同時に俺の手を乱暴に払い除ける。
相変わらずの態度に、俺は思わず苦笑する。
「急に飛び出したら怪我をするぞ。」
「う、うるさい!急いでる僕の邪魔をしたのはお前の方だ!」
「急いでるなら尚更気をつけないと…」
「ボーッと歩いているお前が悪い!」
両手を胸の前で組んで、フンと鼻を鳴らす。
『ヴォルフはね、怒っている顔が一番かわいいのよ。』
いつも母が言う、今、正にその顔だ。
「何を笑っている!」
口元を綻ばせたのを目聡く見つけ、ヴォルフラムは不機嫌という名の愛らしさを増幅させた。
可愛い弟をこれ以上怒らせては色々と厄介なことを経験上知っている俺は、早々に笑みを引っ込め、彼に気付かれないように小さく肩を竦めると、とっさに掴んだままだった彼の持ち物を鮮やかな青い軍服の胸元に差し出した。
「はい、これ。」
「………」
ヴォルフはしばらくその籠を見下ろしていたが、頬をほんのり染めた少しバツの悪そうな顔でそれを受け取り、「すまない」とギリギリ聞こえるぐらいの小さな声で謝罪した。
弟の不機嫌の理由は知っている。
グウェンダルに陛下の仕事の邪魔になるからと、執務室を追い出されたのだ。
斯く言う俺も、同じように執務室から追い出された口だ。
俺の場合は『邪魔になるから』ではなく『陛下の気が散るから』だったけれども…。
グウェンダルは、長期に渡る陛下不在で溜りに溜まった決裁を、今日一日陛下を執務室に閉じ込めて、全て処理して頂くと意気込んでいた。
俺へと向ける眼差しが厳しかったのは、陛下の長期不在の一端に俺が関わっていたからかもしれない。
いつもは陛下のお傍を離れない俺だが、『今は国内外ともに緊迫した局面も無く、この城内で陛下が危険に晒される事は無いに等しい。その上で私とギュンターが執務室内に居るのだ。それでも過保護なお前は心配か?』などと言われてしまえば、こちらは引くしかない。
ギュンターは俺の剣術の師匠でもあるし、グウェンダルもこの国を代表する立派な武人だ。
緊迫した状況下ではない今、確かにグウェンダルの言葉の通り、俺が執務室に詰めていなくても問題はない。
警備上は……。
しかし、同様の理由を聞かされた筈のこの弟は、どうやら未だ自分が追い出された事に納得していないようだ。
さっきから「婚約者なのに…」とか、「僕が居ないと」「尻軽が」「へなちょこが」と、手にした籠に向って何やらブツブツ呟き続けている。
気持ちは分からなくも無いが、回廊で小さな籠に盛り付けられたお菓子に向ってケンカを売る姿は、武人としては如何なものかと思う。
すっかり俺の存在や今の状況をを忘れているであろう弟を、現実に呼び戻す必要性を感じた俺は、また彼を驚かしてしまわないように、少々控えめに声を掛ける事にした。
「ヴォルフ…、急いでいるんじゃなかったのか?」
俺の声に我に返ったのか、ヴォルフラムはハッと視線をこちらに向け、一瞬バツの悪そうな表情を浮かべてから、再び籠の中に視線を戻した。
「は、母上がお呼びなんだ。」
「ああ、そう言えば、先日お戻りになられたんだったな。」
「グレタと一緒に、午後のお茶に誘われている。」
「そうだったのか。」
彼の持つ焼き菓子の行き先は母上のお茶会か。
きっと、ヴォルフラムがグウェンダルに執務室から追い出されたのを聞いた母上が、可愛い末の息子を慰める為に開くお茶会なのだろう。
そう思っていた俺に、ヴォルフラムが「そう言えば…」と視線を向ける。
「母上が、コンラートも見かけたら誘ってくれとおっしゃっていたが、お前はどうする?」
どうやら慰める対象の中に、俺も含まれているらしい。
艶やかに微笑みながら、赤く染まった指先で俺の頬をツンツンと楽しそうに突付いてくる彼女の姿が目に浮かび、俺は軽い頭痛を覚えた。
「いや…、今日は遠慮しておくよ。」
そう答えた時、ふと視界に入った小さな花束。
俺はそれをヴォルフラムの前に差し出した。
「そのかわり、これを母上にお渡ししてくれないか?」
あの方には、この可憐な花達より、もっと大きくて豪奢な花束の方が似合うとは思うが、それでも可愛い末の息子が顔を真っ赤にして差し出してきた小さな花束を、どんな男に贈られた煌びやかな贈り物より彼女が喜ぶ事は間違いない。
「わ、わかった。」
案の定、少し頬を染めて受け取った弟に、母上の溢れんばかりの優しさは全て受け取ってもらう事にして伝言を託す。
「では母上に、また後日ゆっくりと時間を取って伺いますと伝えておいてくれ。」
うむ、と鷹揚に頷き、弟はまた足早に歩き出した。
しかし、二、三歩、歩みを進めてから、すぐに彼はくるりと振り返った。
「ところでコンラート、お前は何をしているんだ?」
「俺?俺は…、散歩、かな。」
俺の答えに、ヴォルフラムは途端に眉を顰める。
確かに、あまり褒められた答えではないだろうが、焼き菓子にケンカを売っていた彼に、そこまで呆れた表情を浮かべられる事はないだろうと思う。
俺の顔をしばらく見ていたヴォルフラムは、やがてフンと息を吐き、カツカツと真っ直ぐに俺の所まで戻ってきた。
そして、上着のポケットから取り出した小さな包みを、俺にグイッと押し付ける。
「ヴォルフ……?」
「少し欠けた菓子だそうだ。お前にやる。」
思わず受け取った俺に頷き、ヴォルフラムは踵を返した。
そのまま振り返らず、彼は小気味良い靴音を立て、回廊を早足で歩いていく。
その後ろ姿を唖然と見送る俺の手には、紙に包まれた数個の割れた焼き菓子が乗っていた。
俺は弟に慰められたのだろうか…?
まだほんのりと温かいそれに、思わず笑みが浮かぶ。
肩を震わせクツクツと笑う俺の掌から漂う、さっきとは違う種類の甘い香り。
「そろそろお腹空かせてますよね、きっと…」
花より団子と言う言葉が、彼の国にはあったと思い出す。
お腹を空かせて執務机に懐くあなたの姿が浮かび、俺の足は自然と執務室のある方向へと向っていた。
***
執務室のある棟に入ると、行き交う兵の姿も増えてくる。
警備兵からの敬礼に、答礼を返しながら奥へと進んで行く。
すると両腕に荷物を抱え、フウフウと息を切らして足早に駆けて来る兵が一人。
汗の滲む頭部で、廊下に射し込む光をキラリと反射するその姿はダカスコスだ。
俺の姿を目に留め、敬礼をしようとしているのだろうが、両手に一杯の荷物をどうしようもできず、右往左往している姿に苦笑が洩れる。
人の良い彼は仕事を頼まれる(と言うより押し付けられる)事が多いのか、いつ見ても忙しそうだ。
ヨロヨロとしながらも、俺の側まで来ると途端に背筋を正し、軍靴をピシッと揃えて、顎で支えている荷物を少し傾けた。
どうやら敬礼の代わりのようだ。
「大荷物だな、少し持とうか?」
「いいえ、大丈夫であります閣下!これはこれで均衡が保てておりますので、お気遣いありがとうございます!」
「そうか、それなら良いんだけど。それより、今日はまた一段と忙しそうだな。」
「そうなんであります〜、聞いてくださいコンラート閣下〜。」
声を掛けると、彼は引き締めていた表情を一瞬で崩し、情けなく眉を寄せた。
「今日はまず、朝から軍馬の健康診断で軍曹殿のお手伝いをしておりました。それが意外に早く終わりまして気を良くしておりましたら『ついでだから厩舎の掃除をしておけ』とか、軍曹殿が軽〜く仰られる訳です。まあ軍曹殿の命令は絶対ですので、気合を入れて掃除をしていたのですが、その時に近くに居た馬達が上着を両方からこう、思いっきり引っ張って振り回してくれまして、派手にコケるし、桶の水はぶちまけるしで散々な目に合いました。」
息継ぎの間も惜しむように一気に話し、ダカスコスはそこで大きく息を吐いた。
なるほど、良く見てみれば彼の軍服は所々濡れて藁と土がこびりついている。
「それは大変だったな。」
「はぁ、でもそれは良いんです…。いつもの事ですし…。」
「いつもの事なのか…?」
「はい、いつもの事であります。それでもようやく厩舎の掃除を終えて着替えに戻ろうとしていましたら、今度はギュンター閣下に捕まりまして、『アレを持ってきなさいダカスコス』『コレを持って行きなさいダカスコス』『走れダカスコス!』『飛べダカスコス!』って、飛べる訳がないのに魔族使いが荒いのなんのって、城中走りまわらされたんであります。端から端まで行って無い所がない程に。挙句の果てに……」
そこで彼は言葉を切り、持っている荷物の重みが増したかのように肩を落とし、さっきとは比べ物にならないほど大きな溜息を吐いた。
「ギュンター閣下は………に」
「ん?」
「汁に…、塗れられました……。また例によって、ゴフォァ!ドッバァァァ!っと、派手に噴射なさいまして……」
「あぁ………」
ダカスコスの軍靴にベットリと付着している物の正体を知り、俺も言葉を無くし息を吐くしかなかった。
「すぐに軍曹殿が執務室に呼ばれ、汁塗れの閣下は引きずられて行かれたんですが、もう大惨事で……。後の掃除が大変でした。それがやっと終わったと思ったら、今度は軍曹殿の雑用が全部こちらに回ってきまして、気付いたら朝から何も食べていないような有様です。」
情けない声でそう言うと、ダカスコスはがっくりと項垂れた。
無理に作った笑顔が痛々しい。
俺は手の中の包みを開き、焼き菓子を気の毒な男に差し出した。
「これで良ければ食べるといい。」
「えぇぇっ?宜しいんでございますか?」
「ああ、貰い物だけど、俺は空腹ではないし、陛下に差し上げるにも割れたり欠けたりした物だからね。」
「あ、ありがとうございます〜!」
流石に口に放り込んでやる訳にもいかないので、後で手が空いた時に食べるだろうとダカスコスの上着のポケットに包みを入れてやると、彼は大量の荷物を抱えながらも、涙を流さんばかりに何度も頭を下げて礼を言う。
余程空腹だったんだろう、可哀想に。
肩をポンポンと叩いて彼を労い、俺はその場を立ち去ろうとした。
その気配を察したのか、ダカスコスが慌てて俺を呼び止める。
「コンラート閣下、待ってください!」
俺は振り返り、首を傾けて先を促す。
「焼き菓子のお礼に、この袋を受け取って頂けませんか?」
ダカスコスはそう言って、一生懸命に荷物の下の方に目をやりながら、視線だけで訴えてくるのだが、彼の言う肝心の袋が見当たらない。
仕方なく、俺は少し屈んで彼の目線の先を辿っていく。
すると、大きな荷物に隠れた彼の右手に、漸く引っ掛かっている程度に握られた麻の袋があった。
両手の塞がっている彼に代わってそれを外して受け取ると、袋の中には数個の香り豊かなキノコが入っていた。
「さっき厩舎の掃除の後、近道しようと思って突っ切った木立の中に生えてたんです。この芳醇な香りは高級キノコの『マッタケタケ』に間違いありません。食用キノコの中では最上の物なので、是非召し上がって下さい。」
赤紫色はかなり怪しげだが、独特の芳香がある。
確かに『マッタケタケ』に似ているが、本当に安全なキノコなのだろうか…。
「それでは失礼致します!焼き菓子、ありがとうございました!」
専門的な知識に欠ける俺がキノコを見て戸惑っている間に、ダカスコスはまたヨタヨタとふらつきながらも廊下を足早に駆けて行った。
その後姿を見送り、俺は肩を竦める。
「まあ、厨房で調理してもらう前に、安全かどうか確かめれば良いか……」
呟いて視線を手元に移す。
何故か今、俺の手の中にあるのは芳醇な香り漂う赤紫色のキノコ。
今日、俺が初めに手にしていたのは、確か極楽鳥の青い羽根だったのに。
青い羽根が小さな花束へ。
小さな花束が欠けた焼き菓子に。
欠けた焼き菓子が香り豊かな赤紫色のキノコへ。
そう言えば、昔、地球で読んだ本にこんな話があった。
あれは確か日本の民話で……。
あの主人公は、結局、最後に何を手に入れたんだったろうか。
少なくとも、こんな怪しげなキノコではなかった気がする。
物語の最後を思い出せないまま、俺はまた歩き出した。
「ギュン汁、上手く避けられたかな……」
困惑に眉を寄せ、大慌てで逃げ惑う姿が浮かぶ。
想う人との距離を縮めようと、無意識に俺の歩調は速まった。
***
カカッと硬質な靴音が響くと同時に、赤い影が目の前に立ち塞がった。
相変わらず、現役軍人より鋭い身のこなしだ。
挨拶の言葉を交わす間もなく、仁王立ちの小柄な人物からヌッと差し出された何の飾りけも無い布袋。
何故かそれは布の表面が波打つほどに激しく蠢いていた。
「コンラート、あなたが手にしているのは、もしや『ポックリイテマエタケ』ではありませんか?」
言うと同時に、布袋を持っていない方の手で、俺が持っていた物をひょいと奪い取る。
すぐに中を覗き込み、アニシナは一人納得顔でうんうんと頷く。
「やはり、間違いありませんね。匂いだけでも分かりましたが、これは『ポックリイテマエタケ』です。」
「『マッタケタケ』じゃないのかい?」
「コンラート、あなたは私の言う事が間違っているとでも言うのですか?」
「いや…、そう言う訳じゃないよ、アニシナ。」
「フン、こんな物の区別も付かないとは嘆かわしい。これはイテマエ目フクロダメダケ科フクロダメダケ属のキノコ『ポックリイテマエタケ』です。見た目は『マッタケタケ』に酷似しているため、うっかりり間違って食べてしまった愚か者が、その毒性にやられ、約一ヶ月に渡り継続的に陰茎が腫れ上がり、同時に襲われるそのあまりにも激しい痛みに、苦しみのた打ち回ってもがいた末に死に至るという、まあ何てことはない毒キノコです。」
継続した激痛が陰茎だけに?
それも一ヶ月も?
想像しただけでも下腹部を襲う重苦しい痛みに、それのどこが『何てことはない毒キノコ』なのだと、心の中で呟く。
もしうっかり疑問を口に出してしまえば、延々と毒の何たるかを語られるのは経験済みだ。
アニシナとの会話を無事に終わらせたいのなら、要点を纏めて簡潔に、余計な事は語らず必要な情報だけ、だ。
アニシナは手にしたキノコをじっくりと観察しながら、満足げに微笑んだ。
「すばらしい実験材料です。早くこれを受け取りなさい。」
「え?」
「さっきから、この袋を受け取りなさいと言っているでしょう。早くお取りなさい。」
登場した時から俺の目の前に差し出されたままだった布袋が、グイグイッと胸元に押し付けられる。
一度も「受け取れ」とは言われていないが、アニシナが受け取れと言うのだから受け取るべきなんだろう。
俺が少し戸惑いながらも差し出された布袋を両手で受け取ると、アニシナは満足そうに頷いた。
気のせいか、俺の腕の中に納まった布袋の中身は、さっきの大暴れが嘘のようにピタリと大人しくなった。
「アニシナ、聞いてもいいかな?」
「手短に。」
「これは、何?」
「それは実験用動物です。少々毛色が珍しかった為、ひょっとしたら魔力の欠片でもあるのではないかと捕獲してみましたが、何のことはない。色々調べてみても魔力の欠片もない、ただめぇーめぇーと煩いだけの小動物であることが判明しました。」
言われてみれば、か細い声でめぇーめぇーと僅かに聞こえてくる。
細く布袋の口を開ければ、かなり黒に近い濃灰色の子猫が怯えて潤んだ瞳で俺を見上げていた。
「私には役立たずな代物ですが、陛下に構ってもらえず腑抜けているあなたには丁度良い相手でしょう。貴重な実験資材の提供感謝します。では、ごきげんよう。」
そう言って優雅に一礼し、クルリと踵を返してアニシナはアッという間に去って行った。
ポツンと取り残された俺と子猫。
俺は袋の口を大きく開けてやり、子猫を自由にしてやった。
しかし、子猫は警戒を纏ったまま周りをキョロキョロと見回すだけで、逃げる気配をみせない。
しばらくそうしていたが、どうやら天敵が居ないと確認できたのか、スルリと俺の上着の中に入り込んできた。
ボタンとボタンの隙間から、彼の人の髪に良く似た色の小さな頭をひょっこりと覗かせ、すりすりと胸に擦り寄って来る。
指先でその喉元を擽ってやると、子猫はゴロゴロと心地よさ気な声を上げた。
「俺の向かう先に、おまえを可愛がってくれる人が居るって分かってるのかな。」
答えるはずの無い子猫の頭を撫でながら語りかけると、子猫はめぇーと甘えた声で鳴いて答え、すっと目を細めてあくびをした。
***
兵が両脇を護る重厚な扉の前に立ち、軽く扉を叩いて名を告げる。
するとすぐに、「入れ」という重々しい声と共に扉が開かれた。
書類の束を片手に部屋を出て行く文官と入れ違うように、俺は執務室へと足を踏み入れる。
「失礼します。」
「コンラッド!」
数時間ぶりに会った主は、満面の笑みで俺を迎えてくれた。
椅子を大きく鳴らして立ち上がり、今にもこちらに駆け寄って着てくれそうな気配を見せてくれたユーリだったが、直ぐ隣の机に居る人物にギロリと睨まれ、すごすごとまた席に付き、放り出した羽根ペンを拾い上げて、しぶしぶ書類に署名する作業を再開した。
ちらりと俺を見やり、肩を竦めて照れたように笑う。
恥じらいを滲ませた、そんな愛らしい魔王陛下の表情とは対照的に、眉間に深い皺を刻み、この国の宰相殿は不機嫌そのものだ。
「お前には今日一日、執務室への出入りの自粛を言い渡してあった筈だが、コンラート。」
これ見よがしにわざとらしい溜息を付いてから、グウェンダルは扉の前に立ったままの俺を鋭い眼差しで睨みつけた。
「ああ、出入り自粛要請じゃなく、どちらかと言うと強制退去だったけどね。」
「どちらもさほど変わらんだろう。」
「まあ、そうかな。」
肩を竦める俺を一瞥し、グウェンダルは表情一つ変える事無く視線を手元の書類に移した。
「それで、用件は?」
紙面の文字を追いながら、不機嫌さを滲ませた重低音で俺に問いかける。
その隣で書類に署名を続けながら、ユーリは必死で俺に救いを求める眼差しを向けていた。
「ギュンターの事を聞いてね。」
「…………」
惨状が脳裏に蘇りでもしたのか、無言のままのグウェンダルの眉がピクリと動いた。
彼はこめかみを押さえて深々と溜息を吐き、眉間の皺を益々深く刻んだ。
「とりあえず、あれのお蔭で半刻は中断したな。その間、陛下にはご休憩を取って頂いたから、お前が心配するような事は無い。」
「あれが休憩……?」
不満げな呟きに、ギロリと音がしそうな程の視線がユーリに向けられる。
ユーリはピクッと体を震わせると、慌ててまた書類にペンを走らせた。
「休憩はさて置き、ギュンターが欠けた分、何か俺でも手伝う事があるならって思って来たんだけど。」
「今のところは特に思い浮かばないな。」
「そうか、たまには剣以外でも、陛下のお役に立ちたかったんだけどね。」
「そんな暇があるなら、城下の見回りにでも行ってこい。」
「そうだね、残念だけど仕方がないな。」
俺の言葉に、ユーリは寂しそうに表情を曇らせる。
そんな彼を安心させるように笑顔で頷いてから、俺は胸元に感じる温もりにそっと手をやった。
優しい手付きで撫でてやると、小さなそれはもぞもぞと動き出し、やがて上着の合わせの隙間からひょこりと可愛い顔を覗かせた。
めぇーめぇー
庇護欲をそそる鳴き声の直ぐ後に、ガタンと大きな音が響く。
音の方へ目をやると、グウェンダルが椅子を倒す程の勢いで立ち上がっていて、その視線は俺の胸元にいる小さな体に釘付けになっていた。
「そ、その子猫たんは……」
「ああ、この子?そうそう忘れてた。さっきアニシナが連れていたんだけど、俺にって言われてね。」
正確には『連れていた』ではなく『捕獲していた』、だが。
俺は懐から子猫を取り出してそっと両手で抱きかかえ、部屋の奥まで移動した。
「可愛い子猫じゃん。何でアニシナさんが?」
ユーリがゆっくりと立ち上がり、俺の腕の中の子猫を覗き込みながら問いかける。
指先で子猫の鼻先を擽り、小さな舌で舐められて楽しそうに笑っている。
「どうやら毛色が少し変わっているんで、魔力があるかどうか調べて、実験に使おうと思ってたみたいですよ。」
「ああ、確かにあんまり見かけない色だよね。ちょっとグウェンの髪の色と似てる。だから、魔力があるとか思ったのかな、アニシナさん。」
「そうかもしれませんね。」
「怪我とかはないの?」
「ええ、怪我はないようです。ただ、余程怖い目に合ったのか、まだかなり怯えていてね。」
「そっか、可哀相に……」
「私がその子猫たんの世話を……、いやダメだ。この書類を今日中に片付けなければ……いや、でも……子猫たん……」
突っ立ったままのグウェンダルは何かに耐えるようにうずうずと落ち着きが無く、さっきから苦悶の表情を浮かべてブツブツと呟いている。
自分の欲望に正直になっても良いと思うのに、真面目な彼はこうやって、日々眉間の皺を深くしているんだろう。
俺は苦笑を浮かべ、彼の苦悩を終わらせてあげようと、抱いている子猫をグウェンダルの前に差し出した。
愛らしい小さな瞳が、うるうるとグウェンダルを見つめる。
その眼差しが彼の心を直撃したのか、とうとう耐え切れなくなったグウェンダルの手が、子猫を抱き上げようと伸ばされた。
その瞬間、バーンとけたたましい音と共に勢い良く扉が開き、赤い影が執務室をずかずかと横切った。
「ぐえっ!」
あっと言う間にグウェンダルの襟首を掴んだその影は、胸を張って高らかに言い放つ。
「グウェンダル!ちょうど良い所にいました。さあ実験です。」
「ふ、ふざけるな!見て分からないのか!私は今、陛下と大事な仕事の最中だ!」
「実験も大事な仕事です。」
「バカ者!執務より大事なものがあるか!」
「執務より大事なものはない?そうなのですか?そうなのですね?」
「……ああ、そうだ。」
「そうですか。では仕方ありません。コンラート!」
「なんだい、アニシナ?」
ウミドクグモ貝の色に彩られた可憐な指先が、真っ直ぐに子猫を指し示す。
子猫はビクッと体を震わせ、慌てて俺の上着の中に逃げ込んだ。
「コンラート、あなた、陛下のお傍に戻ったのなら、もう寂しさを紛らわす為のそれは必要ないですね。先程はあなたに差し上げましたが、もう無用ならその小動物を返してください。この小さな体ではあの猛毒に耐えれらるか保障しかねますが、他に被験者がいない以上仕方がありません。さあ、それを寄越しなさい。」
「子猫たんに猛毒だとぉ!?」
掴まれた上着の襟を取り返そうと抵抗を試みながら、グウェンダルは驚愕の声を上げる。
「やめろぉ!!かわいい子猫たんに虐待など私が許さん!」
そんなグウェンダルをアニシナは覚めた目で見上げ、フンと息を吐いた。
「グウェンダル、あなたが許そうと許すまいと私には関係ありません。私は一刻も早く実験をしたいのです。あなたは何よりも大事な、そう、この子猫の命より大事な執務に専念すればよろしいのです。さあ、コンラートその子猫を私に寄越しなさい。」
「ダメだコンラート!アニシナから離れろ!子猫たんを護ってくれ!」
俺に向って必死の声で叫ぶグウェンダル。
その声に頷いて、俺は子猫と共に、アニシナとは執務机を挟んだ安全圏に立っているユーリの隣に移動した。
「では、あなたが来なさいグウェンダル。その書類は明日でも構いませんね?」
アニシナは両手でグウェンダルの上着の襟首を捕まえ、ぶんぶんと揺さぶりながら問いかける。
その勢いで振り回され、がっくりと全身の力が抜けたグウェンダルの首がガクンガクンと上下する。
「そうですかグウェンダル、実験に協力してくれる気になりましたか。では参りましょう。」
見様によっては頷いてるようにも見えたが、彼の信意は分からない。
完全に脱力したこの国の宰相を扉の外まで引きずって行き、アニシナは振り返ると満足げに微笑み、陛下に向って優雅に腰を折った。
「では陛下、ごきげんよう。」
「ああ、はい、ごきげんようアニシナさん……」
棒読みの台詞と乾いた笑みで、手を振って見送るユーリ。
バタンと扉が閉ざされ訪れた静寂に、同時に洩れる二人の大きな溜息。
「グウェン、大丈夫かな…」
「命までは獲られないと思いますが……」
股間の保障はできません。
僅かながらにある罪悪感に、さすがにその事実を告げるのは躊躇われた。
心優しいこの人に、たとえ想像だけでも下腹の痛みなど感じて欲しくはない。
めぇーめぇーと小さな鳴き声。
敵が去ったのがわかったのか、俺の上着の中に隠れて震えていた子猫が、もぞもぞと中から這い出してきた。
ユーリは気遣いを含んだ眼差しで、その小さな顔を覗き込んだ。
「お前、大変な目にあったなぁ…。ねえコンラッド、抱っこしても良い?」
「どうぞ。」
そっと差し出された両手に小さな体を乗せると、子猫は嬉しそうに眼を細めてするりとユーリの胸元にもぐりこみ、彼の纏う黒衣にすりすりと頬を擦り付けた。
そんな子猫にふわりと優しい笑みを向け、ユーリはそっと濃灰色の毛を撫でる。
「おっ、ふわふわじゃん。それになかなかの男前だ。あっ、こら、そんなとこ舐めるな、くすぐったいだろ!」
目の前の指にじゃれついてぺろぺろと舐め始めた子猫に、くすぐったそうに笑うユーリ。
「こいつ、お腹空いてるのかな?」
「そのようですね。」
「でも、お腹が空いてるってことは、元気になってきたって事だよな。」
「そうですね、グウェンが自らを犠牲にして護った甲斐がありましたね。」
「グウェンダル……、あんたの尊い犠牲で子猫は救われたよ。」
子猫を抱きしめながら窓の外を見つめ、ユーリはしみじみとした声で呟いた。
「お前もグウェンが無事生還してきたら、い〜っぱい癒してやれよ。」
めぇーーー
ユーリに答えるかのような絶妙なタイミングで子猫が鳴き、俺達は顔を見合わせてプッと噴出した。
さっきから俺がずっと求めていた、陽だまりのような温かな笑顔がすぐ傍にある。
子猫を相手に、クルクルと変わる表情をじっと見つめていると、俺の視線を感じたのか、ユーリはほんのりと桜色に色づいた頬でにこやかに微笑んだ。
「ふふっ、コンラッド、この猫すげーかわいいよなぁ。」
ほんの少し首を傾げるように、俺を見上げる大きな瞳。
視線が絡むと、ユーリの頬がさらにほんのりと色を増す。
はにかんだような笑みを浮かべたこの表情を見られるのは、俺だけの特権だとうぬぼれても良いだろうか。
「ええ、本当に可愛いですね。」
俺は幸せな気分に満ちた笑みを返し、吸い寄せられるようにユーリの唇に自分のそれを重ねた。
柔らかな頬が、一気に赤く染まる。
「なっ、なっ、なんでいきなり……!?////」
「あなたが可愛いから。」
ニッコリと微笑んで素直な気持ちをそのまま口にすると、真っ赤な顔でパクパクと口を開け、ユーリは必死で言葉にならない俺への文句の言葉を絞り出そうとしている。
もの慣れないそんな姿も、可愛くて仕方ない。
「子猫のミルクを貰いに行きましょう。それからお菓子も用意して、俺達もお茶の時間にしませんか?」
「良いね。ちょうど俺もお腹空いてたんだ。」
俺の提案に、もう俺への苦情も忘れ、ユーリは満面の笑顔で頷いた。
その笑顔があまりにも可愛くて、愛しくて。
俺は溢れる想いのまま、またユーリの柔らかな唇に口吻けた。
エンギワル鳥の羽根から小さな花束
小さな花束から割れた焼き菓子
割れた焼き菓子から毒キノコ
毒キノコから可愛い子猫
あの物語の結末を思い出した。
主人公が最後に手に入れたのは愛する人だ。
甘い口吻けを手に入れた俺は、そう、わらしべ長者……
END
久しぶりの一話完結なお話です。
『あなたの傍に』のすぐ後ぐらいのお話だと思って頂ければ良いかと思います。
一応、両想いになってからの二人ですが、あんまり甘くないですね、スミマセン;;
もっと短いお話になる筈だったのに、意外に長くなっちゃいましたww
短いお話さくさく書いて、ガンガン更新とか憧れる……。
頑張りの基、感想など頂けると嬉しいです。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
okan
(2012/06/02)

|
|