ラジオドラマ、漫画、またはドラマ等の映像化を想定して作りました。
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(著作権を放棄した覚えはありません。悪しからず。)

    

■登場人物(九人。場合によっては七人でも可)■
   佐竹 汐子; いわゆる出戻りの転校生。猪突猛進。
   相川 菜摘; 小学校時代の汐子の友人。
   宮本 青司; 不良少年。直情的。元ガキ大将。宮っち。ボスザル。
     チビ宮本; ↑の小学生時代。
   宇月 千也; いじめられっ子。予知能力を持つ。理知的。サル。
     チビ宇月; ↑の小学生時代。
   宮本の取り巻き連中(サンバカ)
        畑中; 直情型自己中。 久須木; お笑い担当。 木島; 愉快犯。

■設定(留意事項)■
   菜摘と宇月、宮本と木島と畑中が同じクラス。他はバラバラ。
   全員中学1年生。サンバカと上記4人、出身小学校は別。

   
  
                      予知の代償

   

(オープニング)

○とある中学校の清掃時間。
 佐竹汐子がちょうど廊下を歩いていると、バケツの倒れる音がする。
 見ると、廊下で宮本青司がニヤニヤと笑っている。
 その足元には、黙々と床を拭く宇月千也。彼のズボンは、びしょ濡れになっている。
 宮本の取り巻き三人が、うわっ汚ねえ、しっかり拭けよ、などと騒ぎ立てる。
 遠巻きに、またやってるよ、宇月も言い返さないから、などと囁く野次馬の声。
 汐子が瞠目して見ていると、宮本が気づいてくる。

宮本 「なんだよ、お前?」

 取り巻きらが威圧的に笑う。汐子、驚いて何も言えない。

○下足場。グラウンドから歓声が聞こえる。平和な風景。
 相川菜摘がロッカーから靴を取り出して履き替えるところ。
 その横で佐竹汐子が顔を赤くして、清掃時間に見たことを話している。

菜摘 「――そっか、アレってあんたが転校しちゃった後だったか」
汐子 「アレって何よ? あの二人に何かあったの? なんで宮っちがサルをいじめたり
    するのよ? ひどいよあの二人、昔はあんなに仲が良かったのに!」
菜摘 「(笑って)宮っちにサルかァ。また古いあだ名覚えてるねえ。まあ、汐が驚くのも
    無理ないか。……あんたがいない間に、こっちでもいろいろあったんだよ」
汐子 「何よ、いろいろって?」
 
 困ったように笑う菜摘。二人、校門に向かって歩き始める。

菜摘 「……汐が転校した年の冬なんだけど。宮本ン家が火事になってね。実は、宮本
    のお母さん、その火事で逃げ遅れて、死んじゃったんだよ」
汐子 「嘘……!? あたしそんなの、全然聞いてない!」
菜摘 「(肩をすくめて)ニュースにもなったんだよ。まあ、ただの火事だからね、ローカル
    ニュースでしか流れなかったみたいだけど。……ただ、問題はその後でね。うちの
    クラスで変な噂が出回ったんだよね。その火事の十日くらい前だったかな、宇月が
    『お前ン家が火事になるよ』って、宮本に話していたって言うんだよね。……嘘か
    ホントかは、よく分かんないんだけどさ」
汐子 「十日前? 十日後じゃなくて? ……火事になる前に、言い当てたって言うの?」
菜摘 「そうなのよ、火事が起こる前だったらしいのよ、それが。……変でしょう?」
汐子 「(ぽかんとして)……ワケ分かんない。何よ、それ?」
菜摘 「さあ? あたしにもさっぱり。――だけどそれからすぐだったんだよね。宇月には予知
    能力がある、なんて噂が立ったのは。でもこのときにはもう、あいつら仲違いしちゃって
    たから、卵が先か鶏が先か状態でさ。……で、まあ、今にいたるワケよ」
汐子 「ね、ちょっと待ってよ。予知能力? 冗談止めてよ、子どもじゃあるまいし」
菜摘 「だってあたしら、子どもだったんだもん。 ……それにほら、覚えてない? 交差点の
    手前であたしら、宇月に呼び止められたことがあったじゃん。あん時もほら、すぐ目の
    前を暴走車が通り抜けていってさ。あたしら紙一重で危ういのを免れたことが」
 
 汐子の冷ややかな視線に気づいて、菜摘が途中で声を失う。

汐子 「ふーん、なるほど。そういう偶然を集めて、サルを予知能力者に仕立て上げた
    わけね。それで宮っち、サルをいじめてるんだ? そんなの、バカじゃないの!?」

 肩を怒らせて汐子は一人で歩いて行く。

菜摘 「ちょっと汐! 待ってよ! あたしはただ、事実を説明しただけなのにぃ!」

 慌てて汐子の背中を追いかける。

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By Tacni Ririko copyright (C) All rights reserved since June 2006.