脚注 16


温度

 温度は,熱とエントロピーの回に扱うが,少しのべておく.
 物質は,振動や回転などの運動によって,エネルギーを蓄えることができる.エネルギーの分布の仕方が,温度である.もちろん,温度が高いときには,蓄えられている,エネルギーの総量は大きい.しかし,総量よりも,異なった状態でいる分子の種類が多いほうが重要である.異なったエネルギー値をもった分子の分布が広いほど,温度が高い.存在する分子が,同じエネルギーを持てば,温度は極めて低い.


van der Waals の式の補正項

補正項の a, b は,臨界点における,臨界圧力 (Pc) と臨界温度 (Tc) から求めることができる.

  a = 27 R2 Tc2 / 64 Pc

  b = R Tc / 8 Pc

参考 日本化学会 ( 編),化学便覧 4版,丸善,1993.


水の特異性

 水は,圧力が高くなると,融点か低下する(約2000気圧以下).つまり,解ける.ふつうの物質は,融点は,上昇する.

 表 種々の物質における,圧力と融点.水だけが異なる.

名前

0.1 MPa (1気圧)
100 MPa (1000 気圧)

0.0

-9.0

エタノール

-114.1

-108

1-ブタノール

-89.8

-77.2

シクロヘキサン

6.6

32.5

ベンゼン

5.5

33.4

ナフタレン

78.2

115.7

四塩化炭素

-23.0

14.2

ナトリウム

97.8

106

カリウム

63.7

78

参考 CRC Handbook of chemistry and physics, 80版,CRC Press,1999.


濃度に関連する用語

 濃度は,注目する物質の割合である.化学では,単位体積中もしくは単位質量中の物質の量である.目的に応じて,体積ベースと質量ベースの2種類が,使い分けられる.体積ベースの濃度は,実験などで操作が簡単になるが,体積は,温度や圧力で変化するので,うっかりすると不正確になる.体積ベースの濃度は,溶媒の物質量がわからない.質量ベースは,操作はやりにくなるが,溶質と溶媒が共に,常に正確な値になる.


表 r16.2 水-エタノール溶液の濃度

エタノール濃度 水濃度 エタノール濃度 比重 エタノール濃度 水のモル分率
vol % vol % wt %      mol / kg
0100.000.001.0000
1586.2012.150.9812
2081.7416.280.9763
4063.4433.380.9523
6043.7352.160.9141
8022.8773.540.8645
1000.00100.000.7947

参考 アルコールハンドブック,9版,技報堂,1997.

注 この表での比重は,15℃の水の単位体積の質量に対する,同じ体積の溶液の質量の比

 体積パーセントでは,エタノールのvol %と水のvol %をたしても,100%にならないことに注意すること.質量パーセントでは,足したら,100 % になる.


湿度

  相対湿度は,飽和水蒸気圧に対する割合である. (いわゆる湿度は,相対湿度である. )

  絶対湿度は,大気圧に対する,水の蒸気圧 である.

 例えば,20℃における,水の飽和水蒸気圧は,0.023気圧であるが,湿度70%ときには,

 0.023 x 0.7= 0.016

 空気には,0.016気圧に相当する水蒸気が含まれるのである.


塩化カルシウムの溶解度

表 r16 塩化カルシウムの溶解度と除湿剤としての限界

温度 溶解度 質量モル濃度 水の質量モル濃度 水のモル分率 水の蒸気圧
g/sat 100g mol/kg mol/kg  % atm
037.33.3634.80.780.006
1039.33.5433.70.760.012
2042.73.8531.80.730.023
3050.04.5027.80.670.042
4053.44.8125.90.640.073
6057.85.2123.40.600.197
8059.55.3622.50.580.467
10061.45.5321.40.561.000

注 空気の湿度がこの値より大きい時には,除湿剤として働く.塩化カルシウムは,イオン化して,3つのイオンになるので,イオンのモル数は3倍になる.


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