ご飯の炊き方


 

食堂が休みのときは,お釜が活躍します


理屈をこねて,ご飯を炊く. 
  1. ご飯を炊くときに,考慮する項目

  2. 水素結合の切断

     でんぷん(アミロース)は,ブドウ糖の重合体である.でんぷんの高分子鎖は,らせ ん構造になっている.らせん構造を構成するのに寄与しているのが,水素結合であ る.水を十分加えたうえで,加熱調理すると,水素結合が切れ,その間に水が入り, でんぷんのらせん構造がこわれる.さめたご飯が,しばらくするとおいしくなくなるのは,再び,水素結合により,でんぷんのらせん構造が形成されるからである.
     ご飯を炊くことは,お米の粒に,十分,水を供給し,加熱し,分子振動を大きくして,水素結合を切断するということが1つのポイントである.

  3. 酵素による糖化

     お米をはじめとして,種子には,発芽のときにでんぷんをブドウ糖に分解するため に,でんぷん分解酵素(アミラーゼ)が含まれる.お米に含まれるでんぷん分解酵素は,働きと,活性温度で,3種類あることを知っておくとよい.

    aアミラーゼは,ごはんを柔らかくする働きがあり,bアミラーゼは,ごはんをおいしくする働きがある.ご飯が炊きあがっても,しばらく,蒸らしの時間をおくのは,bアミラーゼによる,でんぷんの糖化を待っているのである.

    参考, 日本化学会編,身近な現象の化学 2,培風館,1989.

  4. 水加減

     まずは,水加減が重要である.山でご飯を炊くときは,すこし多めにする.(1000 m ごとに,約2度沸点が下がる) 仲講師の場合は,お米の量の2倍にしている.鍋にお米を入れ,その高さの2倍のところまで,水を入れる.水に浸した状態で,30分はそのままにしておく.
     山登りに時に,時間を節約するために,プラスチックボトルを使って,あらかじめお米を水に浸すことをする.2合のお米の場合,500 mL のプラスチックボトルに,3分の2のところまで,お米を入れる.水は,プラスチックボトルにいっぱいまで加える.歩いている途中の適当な時に,このように準備しておくと,テント場について,すぐにごはんを炊くことができる.ごはを炊くときは,コッフェルに移してから,ポリタンに3分の1の量の水をさらに加える.

          
          図 1合分の場合の水加減
  5. 始め,ちょろちょろ,中,ぱっぱ.

     ご飯を,柔らかく,おいしく炊くためには,ゆっくり加熱していき,途中から少し火力を強め,少し吹き出すようにする.なんのことはない,昔から言われているとうりである.あとは,赤子ないてもふたとるなである.

  6. 終点の判定

     電気式自動炊飯器出ない場合は,炊きあがりは,自分で見極めなければならない.ふたを開けると,蒸らしがうまくいかないので,当然,ふたを開けずに判断しなければならない.

     水が十分ある時は,沸騰すると,勢いよく水蒸気がでる.時には,吹きこぼれる.沸騰していると,鍋が振動するのが伝わってくる.ごはんが炊きあがってくると,水が少なくなり,水蒸気の量が減ってくる.湯気が少なくなり,振動がおさまると火を止める.

  7. むらし

     火を止めても,すぐにふたを開けたりしてはいけない.酵素が働いているのを想像しながら,20分ほど待つ.


チタン製コッフェルを使うときは,少し距離をあけて,均一に加熱すること.さもないと,こげつきます.金網を使ったときは,金網からの輻射熱で下が熱くなるので,テント内で調理するときは,断熱材をテントに敷くこと.特に,ポリエステル製のテントは,注意してください. 炭でご飯を炊くことには,あんまり意味は,ありませんが,火力が適当で,蒸らしのときも保温が利きます.炭の燃焼ガスは,他の燃料と異なり,水蒸気が含まれないので,焼き物では,水分がとれ,より香ばしくなりやすいです.
秋は,いろんな炊き込みご飯の季節です.だし,みりん,酒,醤油,その他適当に入れます. パエリア風炊き込みご飯
だしが入ると,気持ち,沸点が上昇します.気圧の下がる,山の上では,ご飯がおいしくたけます....のハズです.

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Last updated, Aug. 24, 2001