化学実験室
現像液の処理
現像液には,還元剤と安定剤が含まれる.このうち,還元剤を処理する必要がある.
基本的な,処理方法は,有機物の酸化である.時間をかけてよいなら,まず,空気酸化を行う.現像液を入れてある容器のふたを開けておく.時間が経てば,溶液が空気により酸化され,褐色の溶液に変わる.つぎに,酸化剤(さらし粉など)による有機物の分解を行う.一般家庭で実施する場合,洗濯用の漂白剤が利用できる.(ただし,大量につかわなければならない)
別の方法として,溶液を煮詰めて,紙に吸収し,一般ゴミとして廃棄する方法がある.一般家庭で実施する場合,こちらの方が無難である.
保存剤は無機系の薬品であり,環境中に放出しても問題のない成分である
定着液の処理
定着液は,保存性がいいので,できるだけ最後まで使用する.
定着液の廃液には,銀の錯体と安定剤が含まれる.このうち,銀の錯体から銀を分離する必要がある.銀の分離方法には,いくつかの方法がある.
還元剤を利用する方法
手軽な方法としては,スチールウール(ステンレスウールではない)を還元剤を利用する方法がよい.使用済みの定着液に,スチールウールを入れ,放置しておく.1日程度で,鉄が犠牲的に酸化され,金属銀が沈殿する.さらに,1日程度放置し,沈殿をまき上げないように静かに上澄みを廃棄する.
実験室的方法としては,使用済みの定着液を,まず,アルカリ性にする.水素化ホウ素ナトリウムにより還元し,金属銀を沈殿させる.
電気的に還元する方法
電気的に還元する方法は,工業的に実施されている.家庭で銀の電気メッキをする場合には,応用できる.
光により還元する方法
この方法は,時間がかかるが,特別な薬品や設備を必要としない.まず,使用済み定着液を,水で10倍程度に希釈する.(銀の錯体の安定性を低下させる).透明な容器に移し,食塩を加え,太陽光の当たるところに放置する.(塩素イオンの存在で,塩化銀として沈殿し,光により,還元される).
図 A.定着液の光による処理.黒く沈殿しているのは,銀.
定着液の主成分は,チオ硫酸ナトリウム(ハイポ)であり,環境中に放出すると,緩やかに分解し,ナトリウムイオンと硫酸イオン(ともに海水の成分)となる.
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