目からウロコが落ちた本 (その2)
子供の頃から、日本・外国を問わず「昔話」ものが大好きだった。
最初にはまったのは、「東海道中膝栗毛」これを読んだ時は、感動して
「ヤジさん。キタさん」に会いに行きたいと、マジメに思った可愛い児童だった。
目からウロコの落ちた本はたくさんある。
前ページに挙げられているものは、ほぼ全て私もウロコが落ちている。
特に高橋和巳は、小説集を全巻集めている途中で、
河出書房が出版やめちゃった。ガッカリ。
Fiction | |
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滝沢馬琴 「南総里見八犬伝」 小学生の頃、NHKの人形劇で、「八犬伝」をやっていた。 とにかく面白くて、毎日欠かさず見て、友達との話題は常にこれだった。 伏姫様がなぜか犬との間に子を妊娠。自らの潔白を証明するために、自ら割いたお腹から気が生まれ、8つの数珠の玉となって散らばった。それが後の八犬士である。 仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌・・・・♪いざとなったら玉を出せ〜〜♪(NHKの人形劇より) 私もイザというときの玉が欲しい。 簡単にいうと、バラバラに育った八犬士達がやがて巡り合い、ともに戦う物語であるが、その間に、人間関係のいざこざ、恋愛問題、怨霊事件など、様々な出来事が起こる。軽快なストーリー展開は、滝沢馬琴の天才っぷりが今でも感じ取れる。 武士道など、今の私達には理解できない部分もたくさんあるのだけれど、人というのは、いつの時代も(良くも悪くも)同じようなことを考え、やっているものだと、つくづく思い知らせれる。 それに物語中、結構中心人物でも意外なほどあっさりと死んでしまったり、別れのシーンも実にサッパリしているのが良い。 いや、これは素晴らしい小説です。 今となっては、読みたくても入手すらできない。 |
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太宰治 「お伽草紙」 この本には、他に「新釈諸国噺」など、日本や中国の古典にヒントを得た短編作品が収められている。 太宰というと、「人間失格」で自殺した人。と思っている人が多いと思います。少し興味を持った人でも、あまりの同じテーマの連発に飽き飽きしてしまったか・・・。 この作品では、浦島太郎やカチカチ山などの、日本で育った人なら誰でも聞いて知っているような話を、太宰流に書き替えていて、そこに流れる太宰の思想が主人公の会話を通してよく分かります。 彼は面白い人です。 文体も簡潔かつ分かりやすく、芥川龍之介に通じるものが充分にあります。 太宰の文庫本になったものは、ほぼ全部読みましたが、これが最高傑作ではないかと(いや、私の中では間違いなく最高傑作)思っています。 あとは、「新ハムレット」とか「ろまん燈篭」、「パンドラの匣」が好き。 |
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猪瀬直樹 「ピカレスク」 その太宰治の自殺の原因を追求するドキュメンタリー・ミステリー小説。 猪瀬さんはどんなことでもよく勉強・研究し、文章にされているので、読むととても分かりやすく、正しくウロコが落ちる思いがします。 この小説でも、太宰の近くで生きていたのでは無いか?と思えるほど見事に太宰の姿を描写しています。もう生き返ったかのよう。そして、太宰の深層心理にも深く切り込んでいます。 実際は、本人じゃないから、どこまで真実かは知りませんが、とにかく「あーそうかもなぁ」と思える小説なのです。 実は、この小説を読んで、10年くらい忘れていた太宰を再読しようという気になった。 ついでに付け加えておくと、この小説は映画にもなってるそうです。もちろん見ていない。 |
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アラン・シリトー/Alan Sillitoe 「長距離走者の孤独」/
The Lonliness of the Long Distance Runner 主人公の Smith は盗難事件で捕まり、感化院に入れられている若者。 そこで、長距離走者としての素質を見抜かれ、日々大会優勝を目指して練習に明け暮れる毎日となる。 彼は一見、監視員や院長に従順そうに振舞いながら、心の中で最後に裏切ってやることを考えていた。彼の大会での優勝は所詮いいかっこしたいだけの院長の勲章にすぎないのだから。 彼にとっては、院内の誰とも交わらず、黙々と「何かを考え」走り続けることは、一つの楽しみであったのだ。 この小説を読んだ時、私は全く同じ心境にいたのだろうか?? あーー分かると心の中で叫び続けてた。 |
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夢枕獏 「陰陽師」 今や大ベストセラーのこのシリーズ。 しかし、本当に面白い。 平安文学さながらの、単調で、うるさすぎる描写の無い文章が心地よく、本当に琴・笛の音が聞こえてきそう。 陰陽師には、魑魅魍魎が見えそれを退治する能力があるんだけれど、魑魅魍魎と言えど元は人間、鬼と化す理由が存在する。 時には人の心の浅ましさを感じ、また時には悲しさを知ることができる。 各話が、それぞれに違った趣がある。 安部晴明は、美男子風に描かれてるけど、本当はそうでもないんでしょ。 だから漫画では楽しめない。 |
Non-Fiction | |
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松田道雄 「恋愛なんかやめておけ」 筆者のあとがきによると、この本は「禁欲」のすすめでもあるらしい。 気軽に「恋愛」をすることによって、世の中変になったんじゃないの?ということである。 人を好きになるのはいいことだけど、人を妄念で縛りつけるのは違うよね。 常に「彼氏」「彼女」がいる状態にあることを望み、相手が自分にとって貴重な人間であるかどうかなんて関係ない。要するに性対象としての異性の友達が欲しいだけ。それを「恋愛」という言葉を使って、素晴らしいものと幻想を抱かせているような恋愛至上主義の風潮を筆者は嘆いておられる。 恋愛問題とかで、やたらワーワー騒ぐ人たちの心理が、どうしても理解できなかった私のウロコが落ちた本。 とにかく、「恋愛」とも縁遠くなった人が読んでも楽しめると思います。 |