ボビー・ファレリー


ボビー・ファレリー(脚本・製作・監督)




ボビー・ファレリーはこの世で最もラッキーな人間のひとりだ。兄のピーターと一緒に誰も作らなかった下品だけど可
笑しいスウィートな映画で独自のフィールドを開拓してきた。『ジム・キャリーはMr.ダマー』『キングピン/ストライクへの
道』『メリーに首ったけ』はすべてヒットし、今は最新作『ふたりにクギづけ』の公開を控えている。この映画はグレッ
グ・キニアとマット・デイモンがハンバーガー店を経営する生まれつき体のつながった双子の兄弟のひとり(グレッグ・
キニア)が俳優業を目指したことから、二人でハリウッドへ行き、有名な女性歌手シェールの主演ドラマの相手役を手
に入れる物語である。

Q:喜劇俳優を主役に据えないでコメディ映画を撮っていますが、それは意識してやってることなのですか?

BF:その通り。『ジム・キャリーはMr.ダマー』では喜劇俳優のジム・キャリーを主役にしたけど、もう一人は誰にしよう
かと考えてた。映画会社のリストにあったのはみんな喜劇俳優だったけど、兄のピーターがジェフ・ダニエルズを思い
ついたんだ。会社側はジェフはシリアスな演技をする役者だって反対したけど、ピーターはジェフしかいないって説得
した。それであの映画がうまくいったからもう僕らは俳優については喜劇俳優に限定しないようになったんだ。僕らは
自分達の映画にはいい役者を使いたい。だから今回もマット・デイモンをキャスティングして、双子の一人をうまく演じ
てもらった。

Q:シェールの役は、はじめ自分自身ではなかったそうですが誰が変更したのですか?

BF:脚本ではハスッパな女性歌手を想定して書いたけど、僕らはキャスティングする前に、映画『Larry Sanders』のよ
うに実在の人物に演じてもらったほうがいいんじゃないかって考えた。シェールの名前が最初に浮かんだけど、彼女
はやってくれないだろうって思ってた。自分自身の役をやってもらうように依頼してもわかってくれないのは明らかだっ
たしね。だから彼女は自分ではない役を演じるつもりだったんだ。撮影の前の日に自分自身の役として演じるようお
願いしたけど、納得してくれなかった。だから僕らは必死になって説得した。彼女は自分がこんな風だとみんなに思
われるのを恐れてたけど、実際はとてもスウィートな人間なんだよ。


シェール、マット・デイモン、グレッグ・キニア

Q:お兄さんはとても暗い2冊の小説『Outside Providence』と『The Comedy Writer』を書いてますが、
あなたの中にもああいった暗い部分はあるのでしょうか?

BF:僕らは二人とも暗い部分を持っている。でも二人で一緒にやるときは、明るいものを作るように心掛けてる。僕は
怠惰だから兄のように小説は書けないなあ。

Q:お二人はそれぞれどうやって役割を分担しているのですか?

BF:生まれつきの性分もあって、一緒に仕事をしてるだけなんだ。ただ一緒にしないように心掛けてることがひとつだ
けある。それは二人一緒に俳優の前で演技指導をしないこと。いつも二人の意見が一致するとは限らない。後で僕ら
二人だけで話はするけど、現場で意見が分かれて優柔不断なことは言えないから、俳優に対してはどちらか一人だ
けが演技指導するようにしてるんだ。

Q:この映画でマット・デイモンの相手役にベン・アフレックを起用するという考えはなかったのですか?

BF:キャスティングの段階で候補にあがったけど、実現はしなかった。二人がぴったりな配役とは思えなかったから
ね。

Q:どうやってメリル・ストリープを引っ張り込んだんですか?

BF:彼女に会った時、二人して連れ出されて僕らの映画に出たいって言われたんだ。その時僕らは彼女にからかわ
れてると思った。でもシェールがこの映画に出てくれることになったから、ひっとしたらメリル・ストリープも出てくれるか
もしれないって考えたんだ。


シェール、メリル・ストリープ

Q:この映画はあなたがたの映画の中でははじめてメインのキャラクターが映画を通してずっといい人になっ
ています。二人は軽薄でも馬鹿でもないし、ストーカーでもありません。

BF:本当、これは何かの間違いだよね(笑)。この映画は僕らが書いた脚本とは違ったものに仕上がってしまったん
だ。僕らが思ってたよりもずっとハートのあるキャラクターになった。マット・デイモンとグレッグ・キニアが演じてるうち
にこういうキャラクターになっていった。二人は体がつながってるから自分のことを考えながらもう片方のことも考えな
ければならない。何をするにも我儘なことはできない。だから全体的にそういう風にシフトしていった。これはキャステ
ィングと二人の相性の良さによるとことが大きいと思う。

Q:現在作っている『Three Stooges』について教えて下さい。

BF:来年の秋には完成させるつもりで作っている。でもこれは昔の『Three Stooges』をそのままなぞったものにする
つもりはないよ。まったく新しい三馬鹿になるだろう。この話はStoogesの映画の権利を持ってる人達が僕らに依頼し
てきたことから始まった。もちろんモエ、ラリー、カーリーの三人の名前はそのままさ。今丁度ベニチオ・デル・トロにモ
エ役をオファーしているところ。たぶん彼はやってくれると思う。(註:ベニチオはスケジュールがあわずキャンセルとな
った)

Q:どうして『Three Stooges』の話を受けたのですか?

BF:僕らはStoogesが大好きなんだ。でも今の子供達はStoogesのことを知らない。みんな父親の時代のコメディだと
思っている。だから僕らはそんな新しい世代にStoogesのことを紹介したいんだ。


オリジナル版 『Three Stooges』

Q:あなたは周りの雰囲気をなごませるために性器を露出することがあるそうですね。

BF:それは兄のピーターのことだと思う。僕はお尻を出すほうだ。

Q:『Dumb & Dumberer』(2003年に公開された『ジム・キャリーはMr.ダマー』の続編。ファレリー兄弟は直
接関わっていない)は見られましたか?

BF:いや、見てない。僕らは『ジム・キャリーはMr.ダマー』の内容的に遡るエピソードの映画を作るように言われた。
でもあの映画の登場人物達は30代半ばで馬鹿をやってるからいいけど、それをハイスクール時代に置き換えたっ
て、子供なら馬鹿なことも普通にやるから面白くないよね。それにハイスクール時代に馬鹿なことばかりやってたら、
大人になった時はもっと思慮深くなってるかもしれないし。僕らは続編をやるとしてもジムとジェフにやって欲しかっ
た。映画会社からはジムは続編には出ないって言ってると聞かされたから、僕らは直接ジムとこの話をした。そして
ジムは出演を受けてくれたけど彼は来年までスケジュールが一杯だった。製作会社のニューラインシネマは来年ま
で待てないってことで、僕らが関わることなく、あの映画が作られたんだ。

Q:ウディ・アレンとジム・キャリーが双子の兄弟を演じるという話もありましたよね?

BF:うん。僕らはニューヨークでウディ・アレンに会って、彼から「ジムよりも年上なのにどうして僕なんだい?」って言
われた。僕らはジムは肝臓を全部持ってるから、肝臓のないあなたの方が歳をとるのが早いんだって説明した。彼は
この役をやりたがったけど、ただひとつトイレもジムと一緒に行かなければならないってことに同意してくれなかったん
だ。僕らはなんとか同意にこぎつけるために弁護士やエージェントとも話をしたけどうまくいかなかった。あとウィル・ス
ミスとサミュエル・L・ジャクソンという組み合わせも考えていたけどこれもうまくいかなかった。


マット・デイモン、グレッグキニア

Q:双子の兄弟喧嘩のシーンは映画『フライング・ハイ』を意識して作ったのですか?あの映画にもたくさん
そういうシーンがありました。

BF:いや、 考えてなかった。杜撰な映画作りをしてるからね。

Q:あなたの映画はすべて社会から孤立した人たちを扱っています?これらの人物達の比重は今後も大きく
なっていくのでしょうか?

BF:僕らはこれまでうまくやってきた。それは奇妙で変わった人達を描いてきたからなんだ。そういう人たちが生きて
いる人生は他の人たちのものとは違うんだよ。

Q:持ちたいと思っている特別な力は何ですか?

BF:X線機能を持った視力だね。

Q:その目的ってやっぱり?

BF:うん。君の思ってる通りだよ。



ボビー・ファレリー夫妻、ピーター・ファレリー夫妻




トップへ
トップへ
戻る
戻る