ベン・スティラー




『メリーに首ったけ』はひと休みにぴったりの映画だった





1998年で最も評判になったコメディ映画のシーンとして一番に思い浮かぶのは、『メリーに首ったけ』の中でベン・ス
ティラーが左の耳たぶから白いドロっとしたものをぶら下げる間抜けなシーンだ。

このシーンでは大笑いが起こって、次に続くキャメロン・ディアスがそのドロっとしたものを掴んでヘア・ジェルとして髪
の毛に塗るシーンでは「うそー、やだーっ!」という悲鳴。

コメディチームのジェリー・スティラーとアン・メーラの息子であるベン・スティラーはこのシーンを演じるために自尊心を
捨てなければいけなかった。

「確かに僕は自尊心の強い人間だけど」インタビューの席で椅子に深々と座り、おどけて哀れみをさそうような感じで
肩をすくめてベンは話す。「このシーンをそれほど気にしてないよ」と自虐的に笑いながら続ける。

「実際、僕は脚本の耳から(ちょっと間をおいて)…をぶら下げるあのシーンを読んだ時にこの映画に出てみたいって
思ったんだ」



「ロマンティックでスウィートな物語とそういった下品なギャグを1本の映画の中でうまくまとめあげることができたら、と
ってもユニークな映画になるって考えたからね」

昨日公開された『メリーに首ったけ』には下半身ネタが満載だが、この作品は『ジム・キャリーはMr.ダマー』を作った
ピーターとボビーのファレリー兄弟が二人で脚本を書いて監督した映画だから驚くことではない。

ベンは高校時代にトラウマを負いながらもずっとキャメロン・ディアス演じるメリーに片思いしている若い男を演じてい
る。この男は大人になってから彼女の現在を詳しく調査する。




「こんな映画これまで見たことないよね」ベンは真剣な表情でこの映画のテイストが不適切だと言われていることにつ
いてはっきりと答えてくれた。「正直言って、僕にはこのことが重要なことなのかわからない。下品か上品かなんて、
個人的な感覚だしね。でも人を笑わせてそれが自分の感情を傷つけないものだったらいいんじゃないかな。」

過去にジェネレーションXの先鋭的なコメディ映画『リアリティ・バイツ』やジム・キャリーと組んで興行的に失敗に終わ
った『ケーブル・ガイ』を監督したこともあるベンだが、『メリーに首ったけ』を監督することはまったく想像もできなかっ
たらしい。

「僕にはあんなギャグ映画は作れない。だってどうやったらうまくいくのかわからないからね。ああいう映画を監督する
のは僕の役目じゃないけど、あの映画には出たかった。ファレリー兄弟がやっていることに関わりたかったんだ。」



映画のタイミングはパーフェクトだった。「ちょうど3本連続でまったく違う映画をやったばかりだったんだ」その3本の映
画のテーマはどれも強烈で難解なものばかりだった。

ベンはまずはじめに年初に公開された『Zero Effect』に出演し、ヘロインやクラックで薬物中毒になったハリウッドの
脚本家ジェリー・スタルをモデルにしたブラックコメディ『Permanent Record』の撮影に入った。そして最後に、親友の
妻と寝てしまう不埒な教授役で『Your Friend And Neighbors』に出演している。

「あの作品はかなり物議を醸し出したよ。性と恋愛関係の問題を扱ってて、暗いけど誠実な映画だ」

このように3本連続で難しい映画に出た後だったこともあり、ベンは『メリーに首ったけ』のようなちょっと馬鹿げた面白
いことをしたがっていた。

テッド役の唯一の落とし穴はこれがベンのキャリアの汚点になるのではないかということだ。「耳からなにかぶら下げ
てるテッドのような男が僕のハマリ役だってずっと思われたくはないよ!」







トップへ
トップへ
戻る
戻る