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緒論
【著者】 【執筆年代】 【執筆場所】 【執筆事情】 【特色】 【主題】 

【著者】
 この福音書の著者は、この書においては「イエスが愛された弟子」(21:2021:24)といわれているだけで、だれであったか具体的には明らかにされていない。しかし、著者はパレスチナのユダヤ人であり、イエスの生涯の目撃者であったことは明らかである。彼はユダヤ人の習慣について知っており(7:37-39、18:28)、パレスチナのことについても知っていた(1:441:465:2)。また目撃者として詳細な点についても記述している(2:613:2621:821:11)。イエスが愛された弟子としては、ペテロ、ヨハネ、ヤコブの三人が考えられるが、ペテロは名前が明示され、愛された弟子と区別されているので(13:23-24、20:2-10)除外される。ヤコブもこの書が書かれた時点より前に殉教しているので(使12:1-5)除外される。結局残るのはヨハネであり、教父たちの証言もヨハネを著者と認めている(このヨハネが使徒ヨハネであったか、長老ヨハネであったかという問題については、ヨハネの手紙第一の緒論の「著者」の項を参照)。使徒ヨハネはゼベダイの子であり、ヤコブの兄弟であった。彼の家はガリラヤのかなり富裕な漁師であった(マコ1:19-20)。「雷の子」と呼ばれた(マコ3:17)ことから、激しい気性の持ち主であったように思われる。キリストの昇天の後、彼はペテロとともにエルサレム教会の指導者となった(使3:1、使8:14、ガラ2:9)。晩年にはエペソにいたが、迫害により捕らえられてパトモス島に島流しにされた。しかし、後に釈放され、エペソで死んだと伝えられている。

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【執筆年代】
 極端な学者はこの福音書は2世紀の中ごろに書かれたと言うが、ジョン・ライランズ・パピリという、この福音書の写本の断片(18章の数節を含むもので135年ごろのもの)が発見されることにより、執筆年代はもっと早いものと考えられるようになった。なぜなら、この写本が発見されたエジプトの内陸部まで写本が伝わるためには、少なくとも数十年はかかると考えられるからである。この福音書は共観福音書よりも後に書かれ、またヨハネの手紙やヨハネの黙示録よりも前に書かれたと考えられるので、85年から90年の間に書かれたと考えてよいであろう。

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【執筆場所】
 明確な証拠はないが、エペソと思われる。

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【執筆事情】
 ヨハネは共観福音書を補うものとして、この福音書を書く必要を感じたと思われる。また、伝承によれば仲間の弟子たちも、彼に福音書を書くよう勧めたと言われる。

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【特色】
 この福音書の目的は「イエスが神の子キリストであること」(20:31)を読者に信じさせるためであった。したがって、イエスの神性が強調されている(1:11:291:4920:28)。イエスが「わたしは……です」と言ったことば(6:358:1210:710:910:1110:1411:2514:615:15)は、神性を主張する表現である。また、この福音書は構成においても他の福音書と異なり、たとえはなく、奇蹟の記事も八つのうち五つは他の福音書に見いだされないものである。さらに、この福音書にはニコデモ、サマリヤの女などとの個人的対話の記事が多くあり、イエスの疲れ(4:6)、渇き(4:7)、悲しみ(11:35)など人間的な面も強調されている。

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【主題】
 「しかし、これらのことが書かれたのは、イエスが神の子キリストであることを、あなたがたが信じるため、また、あなたがたが信じて、イエスの御名によっていのちを得るためである」(20:31)

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