めだかレポート

◇こんな本を見つけて読んだ。私が子どもの頃の田んぼにはメダカもゲンゴロウもタニシもイナゴも蛙もたくさんいた。おからの中に入ったタニシは忘れられない味だ。イナゴはあまり食べなかったが鶏の餌にはよく取った。殿様蛙は皮を剥がれて蟹釣りの餌になった。釣った蟹の味噌汁も今では味わえない懐かしい味だ。
 そんな田んぼの動物達がが消えたのは本来は人殺し用に開発されたという殺虫剤のせいである。それでもメダカやドジョウは用水路で生きていた。だが三面コンクリート張りの用水路ができ必要な時だけしか水を流さなくなると彼らも姿を消さざるをえなくなった。そんな小動物も住めないような田んぼでできる米が私達にいい米であるわけがない。効率と利益一点張りの米つくりもやっと見直されるようになってきた。
 この本はそんな農業の実践例である。「自然農法」といえば伊予市の福岡正信さんの方法が究極のものだと思う。私も見学に行ったことがある。彼は世界的に有名だが独特の哲学のせいもあり、国内ではなかなか普及していない。でもそれに近い実践をしている人は全国各地にいる。この本に登場する岩沢信夫さん、藤崎芳秀さん、山本太一さんなどの「不耕起栽培」もまたすばらい実践である。「めだかが増える田んぼ」ということは農薬など使われていないということである。それでも収量は落ちるどころか普通より多いくらいだし、東北地方でよく起こる冷害にも強いという。耕さないで前年の稲の切り株の間に新しい苗を植えるのだとういう。耕さない分、労力的にも楽である。福岡さんのは泥団子の中に籾を入れてばら撒くのだからそもそも田植えをする必要はないのだが、普通はそういうわけにはいかない。しかし今の時代に手植えをしなければならないのでは普及できない。その点、この「不耕起栽培」はそれ用の田植え機も開発されているという。これなら機械代はかかるが昔のように多くの人手は要らない。従来どおりの米つくりをしている農家の人々にぜひ読んでもらいたいと思った。

◇「こんな本が出ているよ」と中村滝男さん(高知県生態系保護協会長・めだかトラスト事務局長)にメールを出したら、「この農法も見学に行ったことがある。福岡正信さんの田んぼを見た目では何とも中途半端だ。日高村(私の故郷)の渋谷剛男さんの田んぼの方がもっと単純でいい」という返事が帰って来た。その田んぼはこの間の帰省の時に教えてもらって見ていた。残念ながら渋谷さんにはまだ会っていない。しかし彼がその田んぼでつくった米は「メダカ米」として販売もされていて私ももらったことがあった。
 「渋谷さんは近くの川で大きなコイをつかまえてそれを飼うために水田の一部に小さな溜池をつくった。その翌年、田に水を張って苗を植え農薬を蒔こうとしたとき、メダカがびっしりと泳いでいるのに気付いた。そこでメダカを殺すような農薬の散布を止めることにした。それからというもの、渋谷さんは田に水を張る前後に除草剤は散布するが農薬は一度も散布していない」のだそうだ。
 
渋谷さんのメダカ米のパンフレットに次のように書かれいる。
(1)田植えの前後に2回除草剤をまくだけで、その他の農薬は一切使っていません。
(2)田植えの後、2週間ほどして溜池の仕切りを開けると、メダカが水田いっぱいに広がって増えます。
(3)収穫のときはゆっくりと溜池を通して排水するのでメダカは水田でなく溜池に残ります。
(5)渋谷さんはこれまで5年以上もこの方法でおいしいお米をつくっています。
(上の写真が渋谷さんの田んぼ。手前が溜池。右の写真はその田んぼの稲。2002年6月2日撮影)


 渋谷さんの田んぼはもう刈り取られている。めだかは池の中にもどされている。まもなく「メダカ米」が届くことだろう。「メダカ米」は5kg入りの白米で2500円。20kgの玄米で10000円。(送料別) (2002年8月31日)



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